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第4章 リューべルへの道
高級品!?
しおりを挟む「なぁなぁ、ディーの故郷ってどんなとこ?」
「テオランっつぅ国のリューべルっつぅ街が近い」
「っへぇ!テオラン!俺外国初めて!」
風が夏の匂いを運ぶ中、俺達はディーの故郷に向けて旅立っていた。
ディーに届いてた手紙は「たまには帰ってこい」っていう親や故郷の人たちからの手紙だった。
それを「今見てる見習いのやつがいるから無理」って断り続けたせいで、何故か「見習いが終わったらその子を連れて帰ってくる」と思い込んでしまったらしい。
それで、「一緒に来てくれないか?」とディーが言ったんだ。
俺としてはディーとサヨナラだと思って、一人で生きていく覚悟をしていたから、ちょっと、いやかなり安心した。だってディーは頼りになるし、色々なことを教えてくれる。言葉で、ではなくて見て覚えろタイプだけど。
因みにアレクは今、元の姿で俺の鞄の中にいる。
ノルデンを出てしばらくは人型でいたんだけど、まだ慣れなくて疲れるからってそうそうに俺の鞄に引っ込んだ。動かないから多分寝てる。
アレクはほんと自由だ。結局人型で依頼に付き合ってくれることは数える程しかなくて、宿でダラダラしてた。
……そのくせ、朝晩の俺の魔力はかなり食うようになったし。
「テオランまでどれくらいかかる?」
「順調に行けば徒歩で3ヶ月」
「なっが!でも途中で依頼とか受けるんだよね?」
冒険者だし、真っ直ぐ向かうなんてつまんない!と俺は嬉々として聞いた。
「当たり前だ。そんな資金もねぇし、途中で荷物警護の仕事とかあれば楽なんだがな」
「警護!かっけぇ!」
「はぁ、そんなもんでもねぇぞ」
ディーはため息混じりに言うが、俺はワクワクが止まらなかった。
だって、初めての旅、初めての外国!ディーとアレクも一緒だし、言うことなし!
「先ずはノアラに向かう。おい、地図を出せ」
「りょーかい!」
俺はノルデンで買った地図を大きく広げた。元々大きな街、王都、川しか書かれていなかったこの国の地図を、ディーの地図を参考に自分なりに書き足した、まだまだ余白の多い地図。
これが、これから自分で書き足して自分なりの地図が出来上がっていくのを考えるだけでさらに気持ちがワクワクしてくる。
「おい、そんなに広げるな。ノアラはここら辺だ」
ディーが指差したのは、ノルデンからちょっと離れた草原。ここに村があるらしい。地図上ではただの草原。……要するに余白。
一般的に売られている地図なんて本当に最低限しか書かれていない。
「ノアラまでどれくらい?」
「徒歩で2、3日。ただ途中で狩りをしていくからもう少しかかる予定だ」
「わかった!」
旅の飯は基本的に硬いパンと干し肉。だけど大食らいの冒険者はそんなんじゃ足りない。だから途中で狩りをして飯を食う。これが冒険者の旅だ。
今日の分は、宿屋の女将さんがお弁当を作ってくれたから、出来るだけ距離を稼ぐのが狙い。
王都に続く道じゃない。長年踏み固められてできた、道。荷馬車も通るからそれなりに幅はある。
けれど、前に見た街道とは雲泥の差だった。
整備のされていない道なので、少し外れると草の丈が途端に高くなる。小動物が飛び出してくることも少なくないらしい。小動物だけならいいが、魔物や魔獣も当然出てくる。
「あ、フロステアが生えてるよ!少し採っていく?」
「そうだな、あると助かる」
フロステアーー寒冷地でも凍らず育つ、不思議な葉。葉の裏側に薄い樹脂膜があって、菌の繁殖を防ぐ役割がある。茎にほんのり青白く光る繊維が生えていて、寒れば寒いほど光る。雪の中に埋もれていても見つけやすく、ノルデンでもよく依頼採取で摘んでいた葉っぱだ。
加熱すると樹脂が溶けて爽やかな香りが立ちのぼる。臭み取りにも使えるらしい。
集団で生えているところから葉っぱだけを数枚頂いて、鞄に引っ掛ける。
全部採っちゃうと、次生えるものが無くなってしまう。
鞄に引っ掛けたのは乾燥させるため。乾燥させた方が長持ちするからだ。
手元にいっぱい貯まった時は煮出してお茶にしても良いらしい。
ただこれ、スースーするからお茶として飲むのは苦手。俺からしたらなんか変な味がする。
苦手でも残そうものなら「勿体ねぇことすんな」ってディーが怒るから、頑張って全部飲む。俺、偉い。
1日目はこんな感じで、時々野草を採取しつつ、なるべく距離を稼いだ。
夜の見張りは2人と1匹で順番にする事にした。はじめ、アレクをどうすか悩んだけど本人が「夜の見張りくらい余裕だし」って言うから任せることにした。なるべく寝て、疲れを残さないようにするのも旅では重要だ。
いざと言う時に動けるようにしておかないとだからだ。
次の日、朝早くから俺たちは罠を仕掛ける。
いつも通り、それぞれ5個ずつ。ノルデンでも森に出たらほぼ毎回仕掛けてたから、速さも獲物がかかる確率もかなり上がった。
「飯?じゃあ俺もなにか獲ってくる」
突然そう言って、アレクがぴゃーっと空へ飛んで行ってしまった。
「え、アレク?……ほんと自由すぎる」
戻ってきた時、アレクは人型だった。
俺たちが、罠にかかった獲物を捌いてる時のふらっと現れたのだ。
「なぁこれって食う?」
「なっ、」
「え?」
アレクが手に持っていたのは、まだ息のある、真っ白な羽毛に覆われたアヒルのような鳥。
「食えないなら、逃がすけど?」
「ま、待て待て待て!逃がすな、締めろ!」
ディーが慌ててアレクに指示を出す。
そんなに慌てるような獲物なのかな。
とりあえず、締め方が分からないアレクの代わりにナイフで首を落として血抜きをした。
「そんなに慌てるような獲物なの?」
「スノーダックだぞ?高級品もいい所じゃねぇか」
「え!?高級品!?」
「羽も嘴も、もちろん肉もだ。中々捕まえられない、そもそも出会えること自体が稀だ。手に入らない、だから高級」
「う、美味い?」
「美味い」
言い切った!ディーが言い切ったなら外れるわけが無い!
俺たちは罠で捕まえた獲物を捌くのもそこそこに、スノーダックを捌くことに注力した。
「うっっっっまっ!!!!」
思わず声が出た。ただ塩を振って焼いただけなのに、かぶりつくいた途端にじゅわっと肉汁が溢れ出て、身はぷりぷりしてて、最高に美味い!
ディーなんか滴り落ちる脂を見て「勿体ねぇ」って呟いてたし。
今はなんかもうすごい勢いで食ってる。
なんてったって高級品だもんな。俺も感動してないで食えるだけ食っておこう。
いつもは食べないアレクも高級品と聞いて食べていた。……そもそも魔物らしいけど、食べ物の美味しさなんて分かるのかな?と思ったら「魔力が少ねぇ」ってボヤいてた。美味しい=魔力量なのかな?
アレクが獲物を獲ってきたのはこの1回だけで、あとは「近くに居ねぇ」と言って獲って来てくれなかった。
そんな感じで旅を続けて4日目の夕方、ようやくノアラに辿り着いた!
宿屋で、ベッドで寝れるぞやったぁ!
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