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エピローグ
エピローグもしくはプロローグ
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エルベルトの突然の申し出に、クラウディアは固まって自分を樽抱きしているエルベルトを見つめていた。
金色の瞳は怜悧であり、冗談でも嘘でもないように思える。
一方、エルベルトを平手打ちしようとしてひっくり返ったクリスティナは、彼の申し出をひと通り頭で咀嚼してから、ようやく起き上がった。
「お姉様は物じゃありません」
「知っている」
「ですけど、あなたはお姉様と私の区別が付いていらっしゃいますね」
「お前たちは全然似ていないだろ」
その言葉に、少しだけクラウディアの胸が跳ねた。
(私たち……互いやお父様お母様以外……本当に誰も区別が付かないって思ってたのに)
クラウディアは頬がだんだん熱を持っていくことに気付いたが、それを必死で首を振って冷ました。
「家督をどうするのよ。それに、私があなたの物になったら、そもそも誰がクリスを……」
「もうクリスの相手はいるだろ。家督を継ぐのは、クリスが大学部を出てからでも充分間に合うのだろう?」
「え……っ」
クラウディアは驚いた顔で、クリスティナを見つめた。情緒の全く育っていなかったクラウディアは、本気でクリスティナの恋に気付かなかったようだ。
一方クリスティナは顔を真っ赤にして、本当に珍しく怒りを露わにしている。
「私の気持ちを勝手に決めないでください……! ……そもそも、お姉様は……?」
そう上目遣いにクラウディアを見つめるクリスティナに、彼女はエルベルトに言った。
「降ろして」
「逃げないか?」
「……私、あなたから逃げたことは一度だってないわ」
「そうか」
彼女はエルベルトにひょいと腰を屈めて下ろされ、そろそろとクリスティアの元に寄る。
「……私、クリスの恋のこと、ちっとも気付かなかったわ。その人のこと、好きなの?」
「……お姉様。申し訳ありません」
クリスティアは顔を真っ赤にして、目を潤ませて頭を下げる。それにクラウディアは本気でわからないという顔をした。
「クリス?」
「……私、お姉様の婚約者をお慕いしておりました……お姉様がよろしかったら、その方を……私にくれませんか?」
そこでようやく、今までの出来事が、パズルのようにピタリとハマっていくことに気付いた。
クラウディアはエルベルトと結婚して辺境伯領に行く。
クリスティナは大学部に進学し、大学部を卒業し次第セシリオと結婚して子爵領を継ぐ。
それで全てが治まることに、彼女自身やっと気付いた。
……互いに全く向いてないことをしようとして、無理をしていたことにも、ようやく気付くことができた。
直情的でよくも悪くも裏表がない人間ならば、紛争地帯で周りが不安にさいなまれても強くやっていける。
勉強が好きで薬草学をよく学んでいる人間ならば、薬草で生計を立てる子爵領をよりよく豊かにすることができる。
もっと早くに、逆にすればいいと気付けばよかったのだ。
「セシリオには、私が言っておくわ。これで、もう大丈夫?」
「……お姉様。私、ちゃんとセシリオ様にお伝えしてきます。お姉様のことも、私のことも……!」
「ええ、わかったわ……私たち、だいたいのことはしゃべらなくても通じてしまうのに、肝心なことは駄目ね、しゃべらないとちっとも通じないのに」
「そうですわね」
ふたりはコツンと額を押し当てる。
いつも一緒にいたが、卒業と同時にそれぞれ違う道を歩む。互いのいない生活なんて、今まで考えたこともなかったが、それが大人になるということなのだから。
パニアグア姉妹がやっとのことで決着をつけた中。
それを見守っていたエルベルトの隣に、ひょっこりとセシリオがやってきていた。
「なんだ、覗き見か」
エルベルトからしてみれば、元婚約者が入れ込んでいる王都然とした彼がどうにも苦手だったが、彼はそうではない。
「うん、やっと丸く治まったみたいだね。よかったよかった」
「……お前、まさかふたりの見分けが付いていたのか?」
「だってクラウは僕に対して優しくなったけれど、クリスはいつだって優しかったからね。あれだけ態度が違うのに、周りはちっとも気付かないからおかしくってねえ」
「お前もか……」
嘆息してから、エルベルトは再びパニアグア姉妹を見守った。
双子というだけで、弄ばれて人間不信になった不遇の姉妹。
しかし双子であるということで、決して孤独になることはなかった。
結局のところ、見た目でしか判断できない人間は軒並み周りからいなくなり、ふたりをそれぞれ別の女性であると見分けることのできる者しか、傍にいることを許さなかったのだから。
卒業しても、遠方に嫁いでも、同じ空の下に、ふたりはいる。
<了>
金色の瞳は怜悧であり、冗談でも嘘でもないように思える。
一方、エルベルトを平手打ちしようとしてひっくり返ったクリスティナは、彼の申し出をひと通り頭で咀嚼してから、ようやく起き上がった。
「お姉様は物じゃありません」
「知っている」
「ですけど、あなたはお姉様と私の区別が付いていらっしゃいますね」
「お前たちは全然似ていないだろ」
その言葉に、少しだけクラウディアの胸が跳ねた。
(私たち……互いやお父様お母様以外……本当に誰も区別が付かないって思ってたのに)
クラウディアは頬がだんだん熱を持っていくことに気付いたが、それを必死で首を振って冷ました。
「家督をどうするのよ。それに、私があなたの物になったら、そもそも誰がクリスを……」
「もうクリスの相手はいるだろ。家督を継ぐのは、クリスが大学部を出てからでも充分間に合うのだろう?」
「え……っ」
クラウディアは驚いた顔で、クリスティナを見つめた。情緒の全く育っていなかったクラウディアは、本気でクリスティナの恋に気付かなかったようだ。
一方クリスティナは顔を真っ赤にして、本当に珍しく怒りを露わにしている。
「私の気持ちを勝手に決めないでください……! ……そもそも、お姉様は……?」
そう上目遣いにクラウディアを見つめるクリスティナに、彼女はエルベルトに言った。
「降ろして」
「逃げないか?」
「……私、あなたから逃げたことは一度だってないわ」
「そうか」
彼女はエルベルトにひょいと腰を屈めて下ろされ、そろそろとクリスティアの元に寄る。
「……私、クリスの恋のこと、ちっとも気付かなかったわ。その人のこと、好きなの?」
「……お姉様。申し訳ありません」
クリスティアは顔を真っ赤にして、目を潤ませて頭を下げる。それにクラウディアは本気でわからないという顔をした。
「クリス?」
「……私、お姉様の婚約者をお慕いしておりました……お姉様がよろしかったら、その方を……私にくれませんか?」
そこでようやく、今までの出来事が、パズルのようにピタリとハマっていくことに気付いた。
クラウディアはエルベルトと結婚して辺境伯領に行く。
クリスティナは大学部に進学し、大学部を卒業し次第セシリオと結婚して子爵領を継ぐ。
それで全てが治まることに、彼女自身やっと気付いた。
……互いに全く向いてないことをしようとして、無理をしていたことにも、ようやく気付くことができた。
直情的でよくも悪くも裏表がない人間ならば、紛争地帯で周りが不安にさいなまれても強くやっていける。
勉強が好きで薬草学をよく学んでいる人間ならば、薬草で生計を立てる子爵領をよりよく豊かにすることができる。
もっと早くに、逆にすればいいと気付けばよかったのだ。
「セシリオには、私が言っておくわ。これで、もう大丈夫?」
「……お姉様。私、ちゃんとセシリオ様にお伝えしてきます。お姉様のことも、私のことも……!」
「ええ、わかったわ……私たち、だいたいのことはしゃべらなくても通じてしまうのに、肝心なことは駄目ね、しゃべらないとちっとも通じないのに」
「そうですわね」
ふたりはコツンと額を押し当てる。
いつも一緒にいたが、卒業と同時にそれぞれ違う道を歩む。互いのいない生活なんて、今まで考えたこともなかったが、それが大人になるということなのだから。
パニアグア姉妹がやっとのことで決着をつけた中。
それを見守っていたエルベルトの隣に、ひょっこりとセシリオがやってきていた。
「なんだ、覗き見か」
エルベルトからしてみれば、元婚約者が入れ込んでいる王都然とした彼がどうにも苦手だったが、彼はそうではない。
「うん、やっと丸く治まったみたいだね。よかったよかった」
「……お前、まさかふたりの見分けが付いていたのか?」
「だってクラウは僕に対して優しくなったけれど、クリスはいつだって優しかったからね。あれだけ態度が違うのに、周りはちっとも気付かないからおかしくってねえ」
「お前もか……」
嘆息してから、エルベルトは再びパニアグア姉妹を見守った。
双子というだけで、弄ばれて人間不信になった不遇の姉妹。
しかし双子であるということで、決して孤独になることはなかった。
結局のところ、見た目でしか判断できない人間は軒並み周りからいなくなり、ふたりをそれぞれ別の女性であると見分けることのできる者しか、傍にいることを許さなかったのだから。
卒業しても、遠方に嫁いでも、同じ空の下に、ふたりはいる。
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