役立たずの女に用はないと言われて追放されましたが、その後王国は大変なことになっているようです

睡蓮

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第3話

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――教会での会話――

「やれやれ、ローレント様がまさかそんなことを…」
「私は別に婚約破棄でも構わないのですが、なんだかレンティウス教皇様の事を悪く言われてしまったみたいに感じて…。その方が腹立たしかったです」
「はぁ…。普通王子様から婚約破棄されたら、そんな落ち着いたことは言えないだろうに…。君も君で肝が据わっているというか、なんというか…」

教会の中で会話を行う二人の人物は、ローレントから婚約破棄を宣告されたアリエス、並びに彼女の事を聖女の血を引く存在であると宣言したレンティウス教皇だ。
実は二人は年齢が近しく、以前から非常に親しい関係にあった。

「アリエスが聖女であることに違いはないというのに、一体何が不満だったというのか…」
「私には聖女の力はない、偽りの聖女だと言われていましたよ?だからこれは、自分に対する裏切りだとも…」
「裏切り??自分の方から婚約関係を築いておきながら?」

少しずつ今回の婚約破棄の実態を理解していくレンティウスは、だんだんとローレントの一方的な振舞い方に違和感を感じていく。

「…ローレント様、もしかしてほかに気になっている女性でもいるのだろうか…?」

教会の教皇と言うのは、いろいろな人から相談を受けることがよくある。
それらの相談に乗り、人間の性質や性格について詳しくなっていくうちに、自分でも気づかないほどにその分析力は正確なものになっていく。
この時レンティウスはまさに、ローレントの後ろにいる人物の存在に勘づいていた。

「あぁ、それは私もそうなんじゃないかと思っています。…ローレント様、まるで誰かの事を過剰なまでに気にしている様子でしたし…」
「(…なるほど、それでアリエスの力を利用しようと考えたわけか…)」

察しの良いレンティウスは瞬時にローレントの狙いを理解した。
そしてその野望が果たされずに終わった理由にも、心当たりがあった。

「聖女の力を呼び起こすには、ある条件が必要だ。それを無視して強引にその力を引き出そうとしても、徒労に終わるだけ。ローレント様はその事に気づかなかったのだろうな」
「条件?」
「簡単な話だとも。普通、婚約関係を築くような相手同士であるならば、勝手に満たされる条件だ。しかし今回はそれが満たされずに終わった」
「…なんだろう?」

レンティウスから告げられる言葉をヒントに、いろいろな可能性を頭の中で考えてみるアリエス。
しかし、これというアイディアがなかなか出てこない。

「力が強い事とか?…いやでも、別に婚約には関係ないし…。それじゃあ容姿がすっごくきれいである事とか…?うーん、これっていうものが出てこないなぁ…」
「簡単な話だとも。普通婚約関係であれば問答無用で満たされる条件、それは…」
「た、大変ですレンティウス様!!!!!」

その時、大きな声を上げながら一人の男が二人の元に駆け寄っていく。

「なんだドルアー、そんな大声を出して…」
「それが、大変なのです!!!」

ドルアーと言うのは、レンティウスに仕える祭司の一人である。
そのドルアーが、その顔を真っ青にしながら震えるような口調で言葉を続けていく。

「ローレント様が、アリエス様の事を反逆罪で訴えるとおっしゃっておられるのです!偽りの聖女を語って自分の元まで近づき、王宮を大混乱に陥れた張本人であると…!ゆえにその罪は非常に大きく、許されるものではないと…!!」
「「っ!?」」

…普段から察しの良いレンティウスとはいえ、さすがにここまで事態が大きくなることは予想していなかった。
そしてそれは当のアリエスも同じであり、二人は互いに困惑の中で顔を見合わせる…。

「…ローレント様、まさかここまで大胆な手を使ってくるとはね…」
「な、なんだか想像よりもすごいことになってるみたい…」

しかし、これほどの状況にあっても思いのほか二人は冷静なままだった。

「よし、アリエス、ひとまず君の事は僕に任せてくれ。僕には教皇としての立場があるから、ローレント様とて最初から過激な事は出いないはずだ」
「なんだか申し訳ないです、レンティウス様…。以前からお世話になってしまってばかりで…」

文字通り申し訳なさそうな表情を浮かべるアリエスだったものの、その心の中はどこかうれしそうだった。
それもそのはず、彼女は以前からレンティウス教皇の事を特別な目で見ていたのだから。

「(きょ、今日は相談に来るだけのつもりだったけれど、ローレント様がこんなことをしてくれたおかげでしばらくレンティウス様と一緒にいられそうかも!!こんな思わぬ展開、もしかして恋愛の神様が私に味方をしてくれているのかも!!)」

…ローレントから反逆罪の濡れ衣を着せられているというのに、自分の恋愛に対して非常にマイペースなアリエス。
そんな彼女の性格こそ、この後聖女としての大きな変化をもたらすことになるのだが、その事はまだ彼女を含めて誰も気づいてはいないのだった…。
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