いなくなれと言った本当に私がいなくなって今どんなお気持ちですか、元旦那様?

睡蓮

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第2話

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――カサル視点――

「まったく…。まさかセレスティンがあそこまで生意気な女だったとは…」

自分にとって都合のいい存在とすることが出来ると思い、こうして婚約関係を結んだというのに、まさかこんな形で歯向かってくるなど想定外…。

「しかし、うろたえる必要はない…。別にセレスティン一人がここからいなくなろうとも、僕には何の影響もない…。王室での仕事にだって何の影響もないことだろう…」

僕がなにより恐れているのは、今回の一件が原因で王宮における自分の立場を失ってしまう事だ。
…まぁ、セレスティン自身にそこまで権力などあろうはずがないため、この点は心配しなくても大丈夫であろうが…。

「次に気になるのが、今後の婚約者の選定だな…。こちらの方が問題だ…」

あれほど堂々とセレスティンの前で婚約者には困らないと言ってしまったため、このまま何もなく終わってしまっては非常にまずい。
というのも、このまま誰とも新しい婚約関係を結べなかったなら、僕の言っていた事は間違いだったとセレスティンは笑う事だろう。
しかしかといって、貴族令嬢や王宮の女性のような地位の高い女性以外との婚約を取り付けたところで、やはり僕の言っていたことはでまかせだったと笑われてしまう…。
ゆえに僕は早急に、そのあたりの女性との関係を現実のものとしなければならないわけだが…。

「…しかし、現実に一体どうすればいいのか…。確かに僕は王宮に出入りできる立場ではあるが、階級は使用人のようなもの…。僕が本気で向こうにアプローチをかけたところで、振り向いてもらえる可能性はかなり低い…。いったいどうすればいいものか…」

…現実には実現の可能性の低い僕の思惑。
しかし、これを実現できないままで終わることは絶対に許されない。
セレスティンにほら見たことかと指をさされて笑われることだけは、婚約破棄を宣告した僕のプライドが許さない。

「僕はむしろ、セレスティンの方を後悔させるほどの婚約を現実にしなければならないのだ…。生意気にも僕に歯向かったあの女が、後悔してもしきれないほどの大きな存在に僕はならなければならない…。そしてそれを分かりやすく表現できるのが、高位な女性との婚約関係…」

…僕はそっと机の中からある冊子を取り出すと、それを机の上に広げてパラパラとページをめくっていく。
そこには様々な貴族令嬢たる女性の姿が描かれており、世間でいうところのお見合いリストのようなものであった。

「この中から誰かとの関係を僕の手に…」

王室のごみ箱に捨ててあったこのリスト、持ち帰ったのは正解だったかもしれない。
僕程度の立場の人間には、こんなリストは当然回ってはこない。
おそらく王本人、あるいはその側近たちに回されたリストであり、将来の事もみすえた関係を築くために参考とするべく用意されたものだったのだろう。

「伯爵令嬢…。男爵令嬢…。男爵位ではセレスティンは納得しないかもしれないな…。であるなら、僕が相手にしなければならないのはそれよりも上の位を持つ令嬢…」

一枚一枚必死にそこに書かれている内容をチェックしていき、どこか自分が取り入れるチャンスはないかと吟味《ぎんみ》していく。
大丈夫、僕ならば絶対にやれる。
このままセレスティンから笑われるだけの結果になど絶対になってたまるものか。

「…よし、まずは侯爵第二令嬢のエリステーナ様からお声をかけてみるか…。手紙で挨拶を行ったのち、そのままスムーズに本人の元まで会いに行く。こういうタイプの令嬢は奥手そうだし、押しに弱いことだろう。僕が本気になって彼女の事を落としにかかれば、向こうだって間違いなく僕になびいてくれるはず」

僕はすでに、心の中で大きな自信を沸き上がらせていた。
考えれば考えるほど、将来設計が楽しく思えてきて仕方がないためだ。
僕はこれから、この中に描かれている一人の女性と婚約を果たす。
そして、誰からもうらやまれる関係を実現する。
子どもの名前はなんとするべきだろうか、男の子か女の子だったらどちらが良いだろうか?
彼女が愛していると言ってくれたら、僕は何と返すべきだろうか?
そこで愛しているって返したら、向こうを調子乗らせてしまうかもしれないな…。
だからそこは、少し変わったことを言ってみてもいいかもしれない。

…などとこれからの事を考えていたら、楽しくないはずがない。
僕は胸に沸き上がる熱い思いをそのまま手紙にしたため上げていき、勢いのままにエリステーナ様のもとにお送りする準備を整える。

…これを受け取った時、一体彼女はどんな表情を浮かべてくれるのだろうか?
そして、僕が理想を実現させたと知った時、セレスティンはどれほど悔しそうな表情を浮かべてくれるのか。
もう今から、将来の事が楽しみで仕方がない。

「さぁ、運命の時間を動かすときがきた」
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