いなくなれと言った本当に私がいなくなって今どんなお気持ちですか、元旦那様?

睡蓮

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第3話

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――王宮内での会話――

…カサルがセレスティンの事を婚約破棄してから、1週間ほどの時間が経過した。
カサルは自身が手に入れたリストをもとにして、かたっぱしから自分のしたためた手紙を送りつけて回っていた。
本人はそれこそが自分の運命を切り開き、セレスティンのことを後悔させることが出来るに違いない計画だと信じて疑っていなかったものの、現実に起こっていることは彼の想定とは正反対のものであった…。

「…なぁ、最近気持ち悪い手紙が出回ってるって話、知ってるか?」
「あぁ、俺も聞いたよ。なんでも、位の高い貴族令嬢の所に届いてるって話じゃないか」
「嫌がらせのつもりなのかねぇ…」
「でも、手紙の中には自分と婚約を前提にした付き合いをしてくれって内容が書かれてるんだろ?嫌がらせにしたらまじめすぎるというか、だからかえって気持ちがわるいというか…」

王宮内部ではいろいろな人々が集まって噂話をはじめる。
そんな噂話の中心となっていたのが、カサルがいろいろな女性のもとに送り付けていた例の手紙だった。

「そもそも、誰が出したかもわかってないんだって?」
「そうなんだよ。差出人の名前が書かれていないらしい。だから最初は嫌がらを疑われたんだろうけれど…」
「そもそも、名前も書かないでなんで婚約ができるって思ってるんだ?馬鹿なのか?」
「手紙の内容曰く、本当に自分との婚約を結びたいと思ってくれている人は、約束の場所まで来てほしいと書かれているらしい。そこで初めて落ち合って、関係を始めるって算段なんじゃないのか?」
「なんか裏がありそうだなぁ…。ていうか、そんなんで本当に誰かと婚約ができると思っているのかねぇ…」

彼らのいぶかしげな表情はもっともだった。
そもそも、カサルは貴族令嬢たちの事を下に見すぎていたのだ。
位の高い家に生まれた貴族令嬢ならば、きっと箱入り娘に違いない。
過去に恋愛などしたことはないに違いない。
そんなところに、突然自分の将来の婚約者を名乗る男から手紙が届けられたなら、ときめかないはずがない。

カサルはそのような旧時代的な考えに支配され、それをそのまま行動に移してしまっていたのだった。
…それがかえって、自分の立場を苦しくすることになるとも知らず…。

――ある貴族令嬢の会話――

「お父様!!この手紙の送り主を突き止めて罰を与えて!!気分を害されて仕方がないわ!!」

一部からは悪役令嬢という分類をされている彼女。
その理由は、彼女の振る舞いは自分勝手極まりないものであるからだ。
…しかし、今回においては彼女の言葉にこそ利があった。

「いきなり気持ちの悪い言葉をささやきかけてくるだなんて、気持ち悪い以外の感想が出てきませんわ!!」
「や、やはりこの手紙か…。噂は王宮で何度か耳にしたことがあるが、現実にあるんだな…」
「お父様、これって完全に私たちの事を下に見ている証拠です!!だからこんななめ腐った言葉で私たちの事を手にできると思っているんです!!そんな不埒な人間には、しかるべき天罰を与えなければならないでしょう!!貴族家とはそういうものではありませんか!!」

荒々しい口調でそう言葉を発する彼女。
そこには、大げさな思いなど一切なく心の底からその手紙の内容を嫌悪している気持ちが見て取れた。

「分かった、なんとか手紙の送り主を特定して罰してやろうじゃないか。私とて、娘の事をこんな軽い思いで見てくる男の存在は受け入れがたい。…それに、他の貴族家たちも被害に遭っているというのなら、その点から貴族たちを束ねることができるかもしれないな…」
「お父様?何の話ですか?」
「いやいや、こっちの話だとも」

カサルの手紙から始まった一件が、日に日に大きな事態を招いていってしまっていることはもはや明白だった。
もっとも、本人がその事を危機感に思えるかどうかは別の話であるが…。

「…それにしても、本当にこんな内容でこちらの気が引けると思っているのかしら?本気でそう思っているのなら、今までどんなむなしい人生を歩んできたのかしら?きっと誰からも愛されることはなくって、勘違いしてきただけの人生なのでしょうねぇ…。そう思ったらいっそのこと哀れに思えてきたわ…」
「まぁ心配はいらないとも。この件はかならず君に代わってこの私が決着をつけよう」
「あぁお父様、正体がわかったらどこの誰だったかを一番に私に知らせてくださいね?私からも文句の一つ言っておかないと気が済まないので」
「よしよし、分かった。君がそう言うのならそうしよう」

この会話はこの貴族家だけのものではあるが、似たような内容の会話が繰り広げられていた。
…そしてこの事に関しても、カサルは自分の影響力が大きくなっているのだと喜んでいるものの、現実は正反対であるという事を受け入れずにいるのだった…。
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