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第4話
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「セレスティン、君もなかなか癖の強い相手の所にずっといたんだなぁ…」
私の顔をやや同情的な目で見つめながら、カサル様の事を聞きに来た男の人がそう言葉を発する。
「調べれば調べるほど、そのカサルなる人物の不気味さは増していくばかり…。最近になっていろいろな話が出てきていますが、そのどれもカサルなる人物が非常に気持ちの悪い人物であるという事を示すものばかり。セレスティン様、あなたのお話はカサルのすべてを明らかにするうえで非常に貴重なものとなるでしょう」
「そ、そんな大げさな…。私は短い時間だけ彼に婚約者として隣に置かれていただけで、特別な関係はなにもないのですよ?」
「それでもですよ。仮にも王宮に仕えるものがこのような下品な行いをしていたなど、到底許されるものではありませんから」
先ほどから怪訝そうな顔を浮かべるこの人は、王宮内で起こった問題の調査に当たる王宮調査官だ。
もはやカサル様の行いは彼らの見逃せるものではなくなってしまっているほどに大きな問題になってしまっているらしく、その行いを罰するべくこうして本格的に王宮が動き出しているのだという。
「それにしても、どうしてカサル様があの手紙を送ったってわかったんですか?確か手紙の中には、送り主の名前は書かれていなかったそうですが?」
私も手紙そのものを見たことがあるわけじゃないから確かな事は言えないけれど、うわさに聞く限りそこにはカサル様の名前は書かれていないという話だった。
にもかかわらず、私が気付いた時にはすでにその嫌がらせ的な手紙の送り主はカサル様のものであるという話が広まっており、誰の口からもその名前が発せられる状態になっていた。
「あぁ、それなら単純な話ですよ。おそらくカサルは、王宮内で手に入れた貴族令嬢のリストをもとに手紙を送る相手を絞ったものと思われます。なので、手紙が届けられた女性たちにはあのリストに載っていたという共通点があり、不当にそれを入手できたものとしてカサルの名前が暴かれたというわけです。まぁそれがなかったとしても、あんな気色の悪いことをすると思われる人間が他にいるとも思えませんし、特定に至る時間はそこまでかからずに済んだかもしれませんけどね」
「確かに、それはそうですね。彼、本当に気持ち悪いですから…」
カサル様、今ごろどんな表情を浮かべているのだろうか?
婚約破棄した時には、後から悔しがる私の顔を見たくて仕方がないって言ってたけれど、それが現実になるどころかむしろ反対の方向に進んでいるように思えるのだけれど…。
「カサル様はいまどうされているのですか?」
「たぶん、何のけなしに普段通りの生活を送られているのではないですかね?まぁそれも残り短い時間になっていることは確定的なわけですけど」
これだけ大きな事件にしてしまったのだから、きっと何事もなく終わるという事にはならないでしょう。
…だから最初から、私の言っていたことを聞き入れてくれていればよかったのに…。
「カサルは婚約破棄の時、何か言っていましたか?覚えていることがあったら教えていただきたいのですが」
「えぇ、それはもう早口で多くの事を言っていましたよ。自分は大貴族のご令嬢と結ばれるだとか、自分が本気になれば今以上に条件のいい相手と結ばれることができるだとか、婚約相手なんてひとたび自分が声を上げれば引く手あまただとか…」
「…ずいぶんと調子に乗っているようだが、果たして本当にそれだけの魅力があの男にあるのか?」
心の底から疑問に思ったような口調で、彼は私にそう言葉を発する。
…きっとそれは、普通の感性を持つ人だったら絶対に同じことを疑問に思うことだろう。
「えっと…。元婚約者の私から見ても、そんな要素があるとは一度も思ったことがないですね…。そもそも私も強引に婚約関係を結ばれた立場でしたし、彼の事を好きになった事は一度もなかったので…」
私はつとめて正直に、自分の思ったことをそのまま言葉にして彼に伝える。
「…それじゃあカサルは、ありもしない自分の魅力にすがってそんな派手な事を言っているのか??さ、さすがにそこまで愚かな男がいるとは考えにくいのだが…」
「疑うお気持ちはよくわかるのですが…。でも、よく考えてみてください。だって国中の貴族令嬢にかたっぱしから一方的な手紙を送りつけるような人ですよ?普通の人なら絶対しないような恥ずかしい事を平気でやっちゃうようなひとですよ??そこに常識なんてないと考える方が自然ではありませんか?」
「…なるほどな」
私の言葉に納得してくれたのか、腕を組んでふむふむという表情を浮かべる彼。
…カサル様の非常識な行いが、自分の非常識さを勝手に証明することになっただなんて、なんて皮肉なことだろう…。
「話は分かった。この後まもなく、カサルはその立場をすべて追われて自分のしでかしたことを後悔することになるだろう。それを見るも見ないも君の自由だが…」
「見ますよ、もちろん。だってそれは彼の方から言ってきたことなのですから」
さて、どちらの言っていたことが正しかったのか、はっきりとこの目で見させてもらう事にしましょうか♪
私の顔をやや同情的な目で見つめながら、カサル様の事を聞きに来た男の人がそう言葉を発する。
「調べれば調べるほど、そのカサルなる人物の不気味さは増していくばかり…。最近になっていろいろな話が出てきていますが、そのどれもカサルなる人物が非常に気持ちの悪い人物であるという事を示すものばかり。セレスティン様、あなたのお話はカサルのすべてを明らかにするうえで非常に貴重なものとなるでしょう」
「そ、そんな大げさな…。私は短い時間だけ彼に婚約者として隣に置かれていただけで、特別な関係はなにもないのですよ?」
「それでもですよ。仮にも王宮に仕えるものがこのような下品な行いをしていたなど、到底許されるものではありませんから」
先ほどから怪訝そうな顔を浮かべるこの人は、王宮内で起こった問題の調査に当たる王宮調査官だ。
もはやカサル様の行いは彼らの見逃せるものではなくなってしまっているほどに大きな問題になってしまっているらしく、その行いを罰するべくこうして本格的に王宮が動き出しているのだという。
「それにしても、どうしてカサル様があの手紙を送ったってわかったんですか?確か手紙の中には、送り主の名前は書かれていなかったそうですが?」
私も手紙そのものを見たことがあるわけじゃないから確かな事は言えないけれど、うわさに聞く限りそこにはカサル様の名前は書かれていないという話だった。
にもかかわらず、私が気付いた時にはすでにその嫌がらせ的な手紙の送り主はカサル様のものであるという話が広まっており、誰の口からもその名前が発せられる状態になっていた。
「あぁ、それなら単純な話ですよ。おそらくカサルは、王宮内で手に入れた貴族令嬢のリストをもとに手紙を送る相手を絞ったものと思われます。なので、手紙が届けられた女性たちにはあのリストに載っていたという共通点があり、不当にそれを入手できたものとしてカサルの名前が暴かれたというわけです。まぁそれがなかったとしても、あんな気色の悪いことをすると思われる人間が他にいるとも思えませんし、特定に至る時間はそこまでかからずに済んだかもしれませんけどね」
「確かに、それはそうですね。彼、本当に気持ち悪いですから…」
カサル様、今ごろどんな表情を浮かべているのだろうか?
婚約破棄した時には、後から悔しがる私の顔を見たくて仕方がないって言ってたけれど、それが現実になるどころかむしろ反対の方向に進んでいるように思えるのだけれど…。
「カサル様はいまどうされているのですか?」
「たぶん、何のけなしに普段通りの生活を送られているのではないですかね?まぁそれも残り短い時間になっていることは確定的なわけですけど」
これだけ大きな事件にしてしまったのだから、きっと何事もなく終わるという事にはならないでしょう。
…だから最初から、私の言っていたことを聞き入れてくれていればよかったのに…。
「カサルは婚約破棄の時、何か言っていましたか?覚えていることがあったら教えていただきたいのですが」
「えぇ、それはもう早口で多くの事を言っていましたよ。自分は大貴族のご令嬢と結ばれるだとか、自分が本気になれば今以上に条件のいい相手と結ばれることができるだとか、婚約相手なんてひとたび自分が声を上げれば引く手あまただとか…」
「…ずいぶんと調子に乗っているようだが、果たして本当にそれだけの魅力があの男にあるのか?」
心の底から疑問に思ったような口調で、彼は私にそう言葉を発する。
…きっとそれは、普通の感性を持つ人だったら絶対に同じことを疑問に思うことだろう。
「えっと…。元婚約者の私から見ても、そんな要素があるとは一度も思ったことがないですね…。そもそも私も強引に婚約関係を結ばれた立場でしたし、彼の事を好きになった事は一度もなかったので…」
私はつとめて正直に、自分の思ったことをそのまま言葉にして彼に伝える。
「…それじゃあカサルは、ありもしない自分の魅力にすがってそんな派手な事を言っているのか??さ、さすがにそこまで愚かな男がいるとは考えにくいのだが…」
「疑うお気持ちはよくわかるのですが…。でも、よく考えてみてください。だって国中の貴族令嬢にかたっぱしから一方的な手紙を送りつけるような人ですよ?普通の人なら絶対しないような恥ずかしい事を平気でやっちゃうようなひとですよ??そこに常識なんてないと考える方が自然ではありませんか?」
「…なるほどな」
私の言葉に納得してくれたのか、腕を組んでふむふむという表情を浮かべる彼。
…カサル様の非常識な行いが、自分の非常識さを勝手に証明することになっただなんて、なんて皮肉なことだろう…。
「話は分かった。この後まもなく、カサルはその立場をすべて追われて自分のしでかしたことを後悔することになるだろう。それを見るも見ないも君の自由だが…」
「見ますよ、もちろん。だってそれは彼の方から言ってきたことなのですから」
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