後宮に咲く美しき寵后

不来方しい

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第一章

018 蕾の開き─⑤

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 ネックレスに毒が仕組まれていた件は、瞬く間に広がった。
 製造元が判らず、外廷に住む職人へ聞いたところ、留め具に毒が練り込まれていたわけではないということが判った。あくまで表面に塗られたものだった。
 のちにスィルから届いた手紙によると、ハラの体調はすこぶる良くなったとのこと。
「手紙には他になんと書いてあったんだ?」
「ネックレスを売った男はフードを被っていて、顔が良く見えなかったようだ。それと、ハラと一緒に買い付けた侍従は減給だけで済んだと」
「お前が裁判所へ一筆書いてくれたおかげだ。もし手紙がなければ、侍従は責任を取るために鞭打ちの刑に処されていた」
 フィリは頷いた。
「フードを被った男が気になる。前に薬草と海藻の組み合わせで毒になることもあると話しただろう? ヴァシリスが倒れたときだ。あのときもフードを被った男が売っていた」
「お前はどう思う? 関係があるかどうか」
「ない……とは言えない。こんな暑い中、わざわざ顔を見えなくする理由がない。砂埃を回避するためでも、二回も間接的に毒を盛ったんだ。被害に合ったのは王の血筋がある者だ」
「秘密裏に動いた方がいいな」
 王族の中に犯人がいる、とは言わなかったが、ヴァシリスは何か感づくものがあったようだ。
 ヴァシリスはふと笑うので、フィリは首を傾げた。
「后とこのような話をできるのは、お前だけだ」
「それは……そうだろう。血生臭い話だ。たいていの后は嫌がる。死と隣り合わせの生活をしてきた僕だからできるんだ」
「そうとも。我が后は頼もしい」
「……こんな場面で、する話ではないな」
 暗闇の中、小さな明かりだけがふたりの肢体を照らす。
 なんとなくお互いの服を脱がし合い、身体に触れ、唇をつけていると、手紙の内容の話になっていた。
 肢体の中心はお互いに高まり、先端は濡れそぼっていた。
 お互いを手で擦り、時折口づけを何度も交わし、先にフィリが果てた。
 手を動かさないでいると、ヴァシリスは早く早くと唇を甘噛みしてくる。
「入れないのか?」
 花盛りの儀を終えて一か月が経つ。最近はずっと頭をゆらゆら蠢いていた。
「まだ中が傷ついているんじゃないか?」
「あれから一か月だぞ。薬も毎日塗ったし、歩いても痛みはない」
「……無理をさせてしまい、」
「何度謝れば気が済むんだ。僕が大丈夫と言っているんだから問題ない」
 ヴァシリスは身を起こすと、棚から箱を出した。小さな瓶に入った香油だ。中身を確認して入れ替えるアイラは、日々表情を曇らせていた。
 ヴァシリスと共に寝るようになってから一滴も減らなかった小瓶の蓋が、ついに開く。
「背中を向けてくれ」
 言われた通りに四つん這いになる。
 ヴァシリスは手に香油を垂らし、温めてからそっと双丘の割れ目に触れた。
 痛みは、ない。くすぐったくて、つい力を込めてしまう。
「大丈夫そうか?」
「平気、だ……早く、中に…………」
 入れろとねだっても、ヴァシリスは秘部を撫でるばかりだ。
「うっ……ああ…………」
 ヴァシリスは立ち上がるフィリの性器へ手を伸ばした。
 香油のおかげで滑りが良く、短い息を吐いたのち、ヴァシリスの手の中で果てた。
「儀式と違うじゃないか……なんでこんなねちっこいことするんだ……」
「ねちっこいか? 嫌だった?」
「嫌とか、そんなわけない……。儀式のときはあんなに淡泊だったのに……。それに、本で読んだものと違う……」
「本に書いてある内容は子作りの方法だろう? 花盛の儀で淡々と進めたのは、他の人にお前の美しい姿を見られたくなかったし、声も聞かせたくなかったからだ。俺は嫉妬深い」
 ヴァシリスは細い肉の路へ指を入れ、解しにかかった。
 声が上がるたびにそこを重点的に攻め、指を増やしていく。
「すごいな……この前より感じやすくなっている。香油に媚薬は入っていないのに」
 二つの丘を親指をかけて広げ、ヴァシリスは中をライトで照らした。
「見られるのが好きなのか? 布団を汚しているぞ。儀式の最中も見られて感じていたな」
「そんなのいいから……早くしてくれっ……!」
「お前におねだりされるのは好きだ。やはり誰にも見せたくないな。傷も塞がっているし、そろそろ入れるぞ」
 ヴァシリスは窄まりに先端を当てると、息を大きく吐きながら押し進めた。
「う……ああっ…………」
「っ…………なんて熱さだ……ああ…………」
 蠢く肉壁は異物を押し戻そうとするが、ヴァシリスはゆっくりと沈めていく。
 反り上がったもので突かれるたび、フィリは切ない声を上げ続けた。
 律動を繰り返し、ヴァシリスはやがて果てた。
 フィリは微笑み、意識が遠のいていった。



 夏が過ぎ去ろうとする季節、カゴのフルーツは徐々に小さな秋をもたらしていた。
「私がいたします」
 皮を剥こうとすると、すかさずアイラがやってきて、いくつかのフルーツを手に取った。
「フィリ様、もうすぐキャラバンがやってきますよ」
「そのようだな。でも僕は町へは行けない」
「侍従の数名で買いに行きます故、欲しいものをリストにまとめて下さいませ」
「欲しいものと言ってもなあ……」
「正式に上后になられましたので、これからはお好きなものを購入して頂けます」
「他の上后や下后も買うのか?」
「左様でございますね。宝石や衣類、アクセサリー、お香など、お好きなものをお選びになられます」
「とは言っても、足りないものはないんだ」
「他の后たちは自分が一番上だと知らしめるために、大きな宝石などをご所望されますよ」
「……アイラも行くのか?」
「私は上后のお側におりますが、私も行ってほしいとお望みならば、キャラバンへ参ります」
「いや、そうじゃなくて。他の侍従は派手な髪飾りなどをつけているが、アイラはあまり身につけないだろう?」
 アイラは意図に気づき、目を潤ませながら頭を垂れた。
「フィリ様のお優しい心遣い、痛み入ります」
「僕からプレゼントをしたい。かといって、アイラの趣味が判らない。ならキャラバンへ行って、好きなものを買ってほしいんだ。息抜きにもなるだろう?」
「ヴァシリス様は…………」
「ヴァシリスには僕から伝えておく。それともう一つ。アイラにしか頼めないことがある」
 夕餉のとき、ヴァシリスに話を通すと、彼もまた名案だと頷いた。
 毒になりうる海藻や間接的にハラへアクセサリーを売ろうとしたフードを被った男の正体について、調べてほしいと頼んだ。もし後宮の内部を知る人物ならば、必ずアイラへ接触してくるだろう。
「もし何かを売られた場合、あえてそれを購入してきてほしいんだ」
「かしこまりました」
「ただフードの男を優先しないでほしい。まずはアイラがキャラバンを楽しんできてくれ」
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