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4篇目タイトル【蘇生の回廊】
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「今度はどうしたのさ?」
「いろいろとあるみたいですね」
二人して二度目の曲がり角へとたどり着けば、すぐに声を上げた理由がわかる。壁際に台座があり、その上に置物が鎮座していた。
犬よりも鼻先が長く、鋭い牙を大きな口腔に並べた生物の骨格。動物の骨格標本かと思えば、人のような胴体を持っているためグロテスクに感じられる。半獣半人の怪物……いや、エジプト文明には良くある神様の表現だ。
「これは、セベクという神様、ですね。ワニの頭部を持つ神様で、太陽神ラーとも、関連付けられる高位の存在です」
「はぁぁ、それがこんな形で置かれてるというのは、なんとも侮辱というか」
奈々は説明してくれるが、名前くらいしか頭に入ってこなかった。わざわざ骨格標本などにしているあたりがヒドくおぞましく、見た目以上の不気味さを漂わせていた。
「そう、ですね。何か、ヒエログリフが、刻まれているようです」
奈々の言った通り、台座にはプレートが貼り付けられていて絵のようなものが刻まれていた。別荘の壁にも、疎らながらに描かれていたのを思い出せる。
奈々はロングスカートのポケットからメモ帳を取り出し、ヒエログリフを見つめつつ何かを書いていく。
「読めるんです?」
淳平が聞いた。ただの絵の羅列にしか見えない。
「はい。割と理屈は簡単で、アルファベットと対応しているんです」
「へぇ」
そう言っている間にも書き出すのが終わり、それを淳平に見せてくる。
「英語のようですね。アナタなら和訳できるのではないですか」
「え、えぇ、まぁ、これぐらいなら多分」
急に奈々が言い出すものだから驚いてしまった。単純な英語であればその場で訳せるが、詩的な表現があるため正確かは保証できなかった。
「えーと、“私の信徒たちは永遠の砂の回廊を歩く。”」
セベクの信者たちについて書かれているのだろうか?
さらに続ける。
「“出口のない道程。彼らには未だ叶わない夢があった。”」
「“それなのに絶望しかなく、しかし悲しみは終わらない。長きにわたる旅が続くかに思えたその時、彼らの前に現れる。”」
「“私の聖なる遺物へとたどり着く道だ。”
「“信徒たちは始めに血と肉の川を渡る。次に鱗の山。”」
「“そして最後は魂を実らせる樹林をくぐり……。”うっ」
最後まで読み切ったあたりで、淳平は誰かに見つめられている気がして周囲を見回す。
「どうかしましたか?」
「いや、視線を感じたような……。気のせい、かな?」
奈々に心配されて、何も見当たらないため勘違いだと片付けた。しかし、意識してしまうと地下に流れ込む風の音さえワニか何かの唸り声に聞こえてくる。
「いろいろとあるみたいですね」
二人して二度目の曲がり角へとたどり着けば、すぐに声を上げた理由がわかる。壁際に台座があり、その上に置物が鎮座していた。
犬よりも鼻先が長く、鋭い牙を大きな口腔に並べた生物の骨格。動物の骨格標本かと思えば、人のような胴体を持っているためグロテスクに感じられる。半獣半人の怪物……いや、エジプト文明には良くある神様の表現だ。
「これは、セベクという神様、ですね。ワニの頭部を持つ神様で、太陽神ラーとも、関連付けられる高位の存在です」
「はぁぁ、それがこんな形で置かれてるというのは、なんとも侮辱というか」
奈々は説明してくれるが、名前くらいしか頭に入ってこなかった。わざわざ骨格標本などにしているあたりがヒドくおぞましく、見た目以上の不気味さを漂わせていた。
「そう、ですね。何か、ヒエログリフが、刻まれているようです」
奈々の言った通り、台座にはプレートが貼り付けられていて絵のようなものが刻まれていた。別荘の壁にも、疎らながらに描かれていたのを思い出せる。
奈々はロングスカートのポケットからメモ帳を取り出し、ヒエログリフを見つめつつ何かを書いていく。
「読めるんです?」
淳平が聞いた。ただの絵の羅列にしか見えない。
「はい。割と理屈は簡単で、アルファベットと対応しているんです」
「へぇ」
そう言っている間にも書き出すのが終わり、それを淳平に見せてくる。
「英語のようですね。アナタなら和訳できるのではないですか」
「え、えぇ、まぁ、これぐらいなら多分」
急に奈々が言い出すものだから驚いてしまった。単純な英語であればその場で訳せるが、詩的な表現があるため正確かは保証できなかった。
「えーと、“私の信徒たちは永遠の砂の回廊を歩く。”」
セベクの信者たちについて書かれているのだろうか?
さらに続ける。
「“出口のない道程。彼らには未だ叶わない夢があった。”」
「“それなのに絶望しかなく、しかし悲しみは終わらない。長きにわたる旅が続くかに思えたその時、彼らの前に現れる。”」
「“私の聖なる遺物へとたどり着く道だ。”
「“信徒たちは始めに血と肉の川を渡る。次に鱗の山。”」
「“そして最後は魂を実らせる樹林をくぐり……。”うっ」
最後まで読み切ったあたりで、淳平は誰かに見つめられている気がして周囲を見回す。
「どうかしましたか?」
「いや、視線を感じたような……。気のせい、かな?」
奈々に心配されて、何も見当たらないため勘違いだと片付けた。しかし、意識してしまうと地下に流れ込む風の音さえワニか何かの唸り声に聞こえてくる。
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