10 / 32
4篇目タイトル【蘇生の回廊】
7
しおりを挟む
なんてことないタイミングで教えてくるのも雰囲気づくりのためだろう。本棚の古書もそのために用意したのか。
「もう女子の方にも伝えてあるから」
旅行のプログラムを次から次へと勝手に決めていく康一。しかし、二日目からは中だるみを起こすはずだ。
ちょうどそのあたりで、隣の女子二人が顔を出したようである。
「あぁ、こっちにも教えておいた。まぁ、後10分くらいだけど休んでな」
それだけ言い残すと行雄は自分の部屋へと戻って行った。
見送って、淳平と真吾は部屋から出る。
「お二人とも屋内の探検ですか?」
「うん。岸さんも?」
「大して見るものもなさそうだけどね」
奈々に聞かれて二人とも自然と視線を逆時計回り側に向けて答えた。すぐに順回り側へと顔が向く。
「はい。部屋は居づらいと言いますか」
奈々も淳平の問いに首肯し、扉が閉まるのを見届けてから少し言いにくそうに追述する。
「そ、そう」
千春がいないことを残念に思う。それでも、文学を静かに嗜むような性格の奈々にだって思うところがあるのだと考え諦めた。
「おぉ?」
考えを巡らせていると、先へ進んで行ってしまっていた真吾が急に声を上げた。
「どうしたのさ?」
何事かと向かってみれば、なんてことはない。
「こんなところになんか短剣が飾ってあってさ」
真吾の言う通り、壁に絵画のような枠を掲げ、その真中に短剣をはめ込んである。オタク心には興味の惹かれる一品だが、ただの別荘に飾ってあるものとしては異質だった。
「ちょっと真吾」
「大丈夫だって」
それでも抑えきれない好奇心が、他よりまだましな装飾品に手を伸ばさせた。真吾ははめ込まれた短剣を取り外そうとする。しかし、これも何らかの方法で固定されているのか指でつまみ引っ張った程度でははずれない。
「あらら、これもダメかぁ」
少し試して無理だと判断した真吾。
「これも古代エジプトで使われてた短剣を模倣してるみたいですね」
「へぇ、そんなこともわかるんですか」
奈々は本当に文化に詳しいらしく、聞かずとも説明してくれるので淳平も感心した。
諦めた真吾は、他にめぼしいものもない廊下をゆっくり次の角に向かって歩いて行く。
「この絵の装飾は犬の神様で、アヌビス。刀身に刻まれているのがホルスでしょう」
なぜか嬉しそうに語る奈々。その横顔を見つめながら淳平も進む。
「うわぁ……」
するとまたしても真吾の驚く声が響いた。
「もう女子の方にも伝えてあるから」
旅行のプログラムを次から次へと勝手に決めていく康一。しかし、二日目からは中だるみを起こすはずだ。
ちょうどそのあたりで、隣の女子二人が顔を出したようである。
「あぁ、こっちにも教えておいた。まぁ、後10分くらいだけど休んでな」
それだけ言い残すと行雄は自分の部屋へと戻って行った。
見送って、淳平と真吾は部屋から出る。
「お二人とも屋内の探検ですか?」
「うん。岸さんも?」
「大して見るものもなさそうだけどね」
奈々に聞かれて二人とも自然と視線を逆時計回り側に向けて答えた。すぐに順回り側へと顔が向く。
「はい。部屋は居づらいと言いますか」
奈々も淳平の問いに首肯し、扉が閉まるのを見届けてから少し言いにくそうに追述する。
「そ、そう」
千春がいないことを残念に思う。それでも、文学を静かに嗜むような性格の奈々にだって思うところがあるのだと考え諦めた。
「おぉ?」
考えを巡らせていると、先へ進んで行ってしまっていた真吾が急に声を上げた。
「どうしたのさ?」
何事かと向かってみれば、なんてことはない。
「こんなところになんか短剣が飾ってあってさ」
真吾の言う通り、壁に絵画のような枠を掲げ、その真中に短剣をはめ込んである。オタク心には興味の惹かれる一品だが、ただの別荘に飾ってあるものとしては異質だった。
「ちょっと真吾」
「大丈夫だって」
それでも抑えきれない好奇心が、他よりまだましな装飾品に手を伸ばさせた。真吾ははめ込まれた短剣を取り外そうとする。しかし、これも何らかの方法で固定されているのか指でつまみ引っ張った程度でははずれない。
「あらら、これもダメかぁ」
少し試して無理だと判断した真吾。
「これも古代エジプトで使われてた短剣を模倣してるみたいですね」
「へぇ、そんなこともわかるんですか」
奈々は本当に文化に詳しいらしく、聞かずとも説明してくれるので淳平も感心した。
諦めた真吾は、他にめぼしいものもない廊下をゆっくり次の角に向かって歩いて行く。
「この絵の装飾は犬の神様で、アヌビス。刀身に刻まれているのがホルスでしょう」
なぜか嬉しそうに語る奈々。その横顔を見つめながら淳平も進む。
「うわぁ……」
するとまたしても真吾の驚く声が響いた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる