忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」

竜弥

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第5章 神の器の奮闘記 ~スカイリンク封印編~

第68話 怪奇!?アメフラシの異変

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「ここに来るの久しぶりですねぇ」

 俺たちは女王様を引き連れて、町からさらに地下へと進む大階段を降りていた。足音が石造りの階段に不気味に反響してる。

「まさか、お母様も来るとは…」

 ウォルの言う通り、女王様が来る流れとは思わなかった。

「ていうか、女王様ってもっとこうお城の椅子でドンと構えてるものじゃないのか?」
「最初に仕込んでからかなり放置してたから、久しぶりに気になっちゃって~」

 セレヴィア女王が軽い調子でそう言う。ずっと放置してたってそれ、粗放飼育?

「さてさて。どんな感じになってるんでしょうかね~」

 階段をさらに下ると、壁際にかすかに広がる湿った風景が見えてきた。

「この辺り、さっきまでいた町とは全然違うわね」

 アリスが言う通り、本当に何にもない空間。4方向に行き来できる部屋が分かれていて、ちょっとしたダンジョンって感じ。

「放置してたアメフラシって、言ってもそれなりの秩序で動いてるんだろ?」
「さあ~?特に意志は持たないものですから、好き勝手に動いてるかも~」

 足元の石畳はところどころ苔に覆われ、あちこちで水がしとしと染み出している。

「なんか、思ったよりいないっすね」

 玄太がぽそっと言った。たしかに、いきなりわーっていっぱいいると思ったけど、奥の方か?アリスも警戒しながらキョロキョロしてる。

「とりあえず、隣の部屋に行ってみましょう!」

 アリスに着いて一向はゾロゾロと部屋を移動する。床には所々に水路みたいなものが通っていて、うっすら青白い光が揺れてる。まるで、水の中に静かに灯るランプみたいな。

「確かに意外と少ないような。なんか予定と違いますわねぇ」
「そうですねお母様。もっとこう、うようよとその辺にいるイメージでしたけど」

 そのとき。

「わー!いた!あそこあそこ!」

 ミルルがぴょいっと水路の先を指さす。俺たちの視線が向いたその先には、ぬらりと這うような動きの影。

「……出たな、アメフラシ」

 まるで靄をまとったみたいに体が揺らぎ、ぼんやりと光るその姿はどこか幻想的。でも、あの火の玉を知ってると、手放しでは綺麗とは言えない。

「てんぱい、どう攻めるっすか!?」

 玄太が後ずさりながら俺のツナギを掴む。

「数はあそこに一体、あと奥に一体か」

 アリスが矢を軽くつまみながら、冷静に状況確認。

「この距離なら、不意打ちが効きそうっすね」

「ウォル、女王様!あの核、回収していいんだよな?」
「はい。育ちきってる子たちだし、任せますわ」

「念のため言っておくけど、火の玉吐かれる前に無力化しないと焼けるのはあなただからね」
「なんで俺限定!?」

 俺が叫んだ瞬間、アメフラシのひとつがふるりと身体を揺らした。

「うわ、気づかれた!?早く早く!」
「アリス、矢いけるか!?」

「任せて!」

 アリスがすっと矢を引き、液晶体を的確に射抜いた。ピシィッ!という音とともに、アメフラシの動きが止まる。

「よっしゃ!さすがアリス!核、回収するぞ!」
「ミルルも行く~!」

 ミルルがぴょんぴょん跳ねながら駆け寄ってくると、ふわっと手のひらで核拾った。

「よし!隣の部屋行くぞ!」
「はいっ、てんぱい!!」


 ******

 何部屋か移動しつつアメフラシを数体倒し、俺たちはようやく核を5つほど手に入れた。

「なあアリス。これって、あと何匹くらい必要かな」

 俺の質問に、アリスが汗をぬぐいながら答える。

「そうねぇ…雨呼びの石の大きさから考えると、だいたい100匹分くらいの核が必要かな」
「……は?」

 その場に、時が止まったような静寂。

「ひ…ひゃく!?」

 俺と玄太、声を揃えて叫んでしまう。

「げげげー!」
「げげげのげっすね!てんぱい!」

「俺もう既にアメフラシの顔、当分見たくないぜ?」

 そんな悲鳴交じりのコントをしていたそのときだった。突然空気が変わった?

「なんか異様な気配がしますねぇ~」
「またまた女王様、ご冗談はやめてください!ほんとに」

 お約束で、この手の振フリには何か出てくるんだよな。

「ん?天貴!なんか地鳴りしない?」
「うん、なんか地面の水が少し跳ねたような」

 アリスの言う通り、なんとなくズズズと這いずるような気配と微かに地面が揺れてる感覚が。

「え…え…てんぱい、あれ…」

 隣の部屋を先に覗いた玄太が、震える指で奥を指す。

「なんだよ、また大袈裟な」

 俺たちもその部屋を覗くと、何かデカいものが這う音が、ゆっくりと近づいてきた。

「ミルル、これって……」
「……し、知らないの……こんなの……」

 ミルルが女王の後ろにぴたっと隠れる。やがて、ぬるりと現れたその影は、俺たちが今まで見てきたアメフラシとは比にならない大きさだった。全長、下手すれば10メートル超え。しかも、よく見るとその身体はいくつものアメフラシの核が融合して脈打っている。

「ま、まさかこれ、合体してる!?」
「な、なにこれ!?こんなの初めて見たわ!」

 ウォルも珍しく焦りの色を見せる。

「ちょっと、これは予想外ですねぇ」
「予想外って!」

 ちょっと女王様!放任主義にも程があるだろ!? 

「う、うわ!こっち見た!?」

 目のような光球が何かに反応するように、明滅のリズムが変わっていくのが分かる。

「ねぇ!あいつ、こっちに反応してない!?」
「てんぱい!あいつ、やる気満々っすよ!」

 アリスと玄太は一歩引いた。

「仲間の核を取り込み過ぎて、防衛本能が異常に発達してる可能性が高いですわね」
「嫌な予感しかしないよ、それ!?」

 俺が聞き返すと、女王はゆっくりと頷いた。

「つまり、ほとんど無意識の暴走ってことかよ!」
「はい。そして放置すれば、この洞窟のすべてを侵食し、やがては地上へも…」

 そこまで言って、女王は静かに俺たちを見た。

「本来なら我々精霊の手で処理すべきことですが、これはすでに精霊の域を逸脱しています」

 セレヴィアは一歩、前に出て深く頭を下げた。

「天貴さん。これの討伐、お願いできますか?」
「お母様!?」

 ウォルが驚いたように顔を上げる。

「討伐対象はこの融合体一体のみ。手段は問いません」

 俺はブルーストライクの柄を握り直し、女王と融合体を交互に見た。

「よし!考えてる暇はねえ。アリス、玄太!やってみっか!!」
「やるしかないわね!」

「てんぱい!あいつ核100個分くらい持ってるっすね!」

 たしかに、核100個分の個体って事なら一体一体狩るより楽かもな。

「おっし!じゃあ核の回収、始めますか!」
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