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第9章:アルカノア農場戦記 ~器を満たす者~
第130話 恨みの先は
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俺はブルーストライクをゲドへ振り下ろした、その時だった!
ドゴォォォンッ!!
大木を割って突進してきた黒き巨大な影。ドデカい両手を振りかざし、真っ直ぐに突進してくる。
グオオオォォォォォォォ…………!!
「なっ……!?あ、あれは……!」
姿を現した“それ”は、間違いなくあの時俺が倒したはずの神喰いの器。
けど、もう前に見た姿じゃねぇ。
鹿の角みてぇな骨の突起が頭から生え、レッドボアの分厚い牙が顎から突き出してる。両脇からは人間の腕が何本も継ぎ合わされていた。
「なんておぞましい姿……!あれが神喰いって奴なの!?」
アリスの声が震える。
逃亡兵か、森の獣か……ここへ来るまでに片っ端から喰いやがったんだ。全部の肉と怨嗟を自分の体に縫い合わせたその姿は、もう怪物って言葉すら生ぬるい。
「来たかぁぁ!よくぞ来た神喰いの器よ!」
ゲドが血反吐を吐きながらも狂ったように叫ぶ。
「やっちまえ!!神の器はあいつだ!あの小僧を喰えぇぇぇ!!」
黒影の眼窩に光が宿る。だが次の瞬間――。
ズガァァァァン!!
振り下ろされた腕は天貴じゃなく、ゲドのすぐ脇の地面を叩き割った。神喰いの器のデカい両手は、一直線にゲドに襲いかかる。
「な、なに……!?」
ゲドが必死に後ずさり、血に濡れた手を伸ばす。
「奴だッ!間違えるな!!神の器はあいつだ!!」
だが、怪物は一歩も迷わなかった。
ダストラを喰わされて育てられたその怨念は、命じられた“獲物”じゃなく、己をこの世に縛り付けた張本人へと牙を剥いたのだ。
「バカな……俺じゃ……ない……ッ!」
ゲドは血に濡れた腕を伸ばし、雪に突き刺さっていたエクリプス・ブレードを必死に掴んだ。
「来るなァァァァッ!!」
剣を振り上げ、怪物の体に叩きつける。
だが――。
ガシィィィッ!!
神喰いの器の巨大な手が、両側からゲドの体を鷲掴みにした。
「ふぐっ!……な、何をする!!」
その大きな腕は容赦なく締め上げ、まるで虫でも潰すみてぇにゲドを持ち上げていった。
ギシ……ギシ……ギチギチッ……!
「ぐぅぅ?……やめろぉぉぉ!!」
ゲドは喉を潰すような悲鳴を上げ、全身を締め上げられていた。
「あれって、ゲドに殺されたダストラたちの恨み……?」
アリスの言葉に俺も唇を噛み、目を逸らさなかった。
「ああ、間違いねぇ!あいつが追ってきたのは俺じゃねぇ」
だがゲドは、血走った目でまだ諦めてはいなかった。
「俺は!!帝国の覇者となる男だァァッ!!」
喉が裂けそうな絶叫と共に、ゲドはエクリプス・ブレードを逆手に構え、神喰いの器の胸へ渾身の力で突き立てた。
ブシュッ!!
漆黒の身体に、刃が深々と突き刺さる。血とも泥ともつかぬ液体が飛び散り、巨体がわずかに揺らいだ。
「どうだッ!俺を喰らおうなんざ――」
言い切る前に、神喰いの器の顎がガバッと開いた。
「グオオオォォォォ!!」
獣の咆哮と共に、ゲドの体はさらに強く締め付けられる。
メリメリ……ギチッ……ゴリッ!!
「ぐ、ぅぅああああっ!!」
ゲドの骨が悲鳴を上げ、血が口から吹き出した。剣をさらに押し込もうとするが、握り潰される痛みに力が抜けていく。
「お……れは……神を……超える……男……ななの、だ……っ!!」
最後の叫びは、バキィッと全身を砕かれる音にかき消された。神喰の手の中で、力なく首が垂れ、両腕がぶら下がるゲド。
「はっ……皮肉な末路だな……ゲド」
「ええ……」
散々バカにしてきたダストラ達の手によって最期を迎えるゲド。その掌から血が滴り落ち、地面を赤黒く染める。
……終わったかに思えた。
しかし、神喰の器は握り潰したゲドを投げ捨てると、血まみれの眼窩をギギギ……と俺に向けてきやがった。
「次は、俺か?ま、そうなるよな」
喉が勝手に鳴った。ブルーストライクを握る手に汗が滲む。
「天貴……!」
アリスが袖を掴む。小さな震えが伝わってくる。
巨影は一歩、また一歩と地を踏み砕きながら近づいてくる。そのたびに地鳴りが足を揺らした。
(やるしかねぇ……!)
そう腹を決めかけた瞬間だった。
ズズズ……ッ。
奴の身体にぶっ刺さっていたエクリプス・ブレードが、不気味な黒光りを放ち始めた。
「天貴!あいつに刺さったゲドの剣が!」
アリスの叫びに目を向けると、刃はまるで溶けるように揺らめき、じわじわと黒影の肉に沈んでいく。
ギュルルルル……ッ!
「あいつ、剣まで喰らおうってのか!?」
突き刺さった傷口から黒い靄と肉片が吸い上げられていく。神喰いの器が暴れて爪を振るっても、剣は抜けず、逆に深く根を張るように体内へ食い込んでいった。
「ちがう!!天貴、逆よ!」
「まさか!剣があいつを喰ってる!?」
ズズズズズ……ッ!!
巨影の背から突き出ていた腕が次々と干からび、皮膚はひび割れ、肉ごと吸い込まれていく。怨嗟の声すらも、霧となって剣へと流れ込んだ。
「グギャオアオォォォォォ――!!」
最後の咆哮を上げた巨影は、やがて全身を黒い光に呑まれ、そこには漆黒に脈動する剣だけが残った。
短くも、長くも感じる沈黙が支配する。
「生きてるって言うのか、あの剣も!?」
エクリプス・ブレードの刀身は以前よりも濃く、禍々しい闇色を湛えて輝いていた。
ドゴォォォンッ!!
大木を割って突進してきた黒き巨大な影。ドデカい両手を振りかざし、真っ直ぐに突進してくる。
グオオオォォォォォォォ…………!!
「なっ……!?あ、あれは……!」
姿を現した“それ”は、間違いなくあの時俺が倒したはずの神喰いの器。
けど、もう前に見た姿じゃねぇ。
鹿の角みてぇな骨の突起が頭から生え、レッドボアの分厚い牙が顎から突き出してる。両脇からは人間の腕が何本も継ぎ合わされていた。
「なんておぞましい姿……!あれが神喰いって奴なの!?」
アリスの声が震える。
逃亡兵か、森の獣か……ここへ来るまでに片っ端から喰いやがったんだ。全部の肉と怨嗟を自分の体に縫い合わせたその姿は、もう怪物って言葉すら生ぬるい。
「来たかぁぁ!よくぞ来た神喰いの器よ!」
ゲドが血反吐を吐きながらも狂ったように叫ぶ。
「やっちまえ!!神の器はあいつだ!あの小僧を喰えぇぇぇ!!」
黒影の眼窩に光が宿る。だが次の瞬間――。
ズガァァァァン!!
振り下ろされた腕は天貴じゃなく、ゲドのすぐ脇の地面を叩き割った。神喰いの器のデカい両手は、一直線にゲドに襲いかかる。
「な、なに……!?」
ゲドが必死に後ずさり、血に濡れた手を伸ばす。
「奴だッ!間違えるな!!神の器はあいつだ!!」
だが、怪物は一歩も迷わなかった。
ダストラを喰わされて育てられたその怨念は、命じられた“獲物”じゃなく、己をこの世に縛り付けた張本人へと牙を剥いたのだ。
「バカな……俺じゃ……ない……ッ!」
ゲドは血に濡れた腕を伸ばし、雪に突き刺さっていたエクリプス・ブレードを必死に掴んだ。
「来るなァァァァッ!!」
剣を振り上げ、怪物の体に叩きつける。
だが――。
ガシィィィッ!!
神喰いの器の巨大な手が、両側からゲドの体を鷲掴みにした。
「ふぐっ!……な、何をする!!」
その大きな腕は容赦なく締め上げ、まるで虫でも潰すみてぇにゲドを持ち上げていった。
ギシ……ギシ……ギチギチッ……!
「ぐぅぅ?……やめろぉぉぉ!!」
ゲドは喉を潰すような悲鳴を上げ、全身を締め上げられていた。
「あれって、ゲドに殺されたダストラたちの恨み……?」
アリスの言葉に俺も唇を噛み、目を逸らさなかった。
「ああ、間違いねぇ!あいつが追ってきたのは俺じゃねぇ」
だがゲドは、血走った目でまだ諦めてはいなかった。
「俺は!!帝国の覇者となる男だァァッ!!」
喉が裂けそうな絶叫と共に、ゲドはエクリプス・ブレードを逆手に構え、神喰いの器の胸へ渾身の力で突き立てた。
ブシュッ!!
漆黒の身体に、刃が深々と突き刺さる。血とも泥ともつかぬ液体が飛び散り、巨体がわずかに揺らいだ。
「どうだッ!俺を喰らおうなんざ――」
言い切る前に、神喰いの器の顎がガバッと開いた。
「グオオオォォォォ!!」
獣の咆哮と共に、ゲドの体はさらに強く締め付けられる。
メリメリ……ギチッ……ゴリッ!!
「ぐ、ぅぅああああっ!!」
ゲドの骨が悲鳴を上げ、血が口から吹き出した。剣をさらに押し込もうとするが、握り潰される痛みに力が抜けていく。
「お……れは……神を……超える……男……ななの、だ……っ!!」
最後の叫びは、バキィッと全身を砕かれる音にかき消された。神喰の手の中で、力なく首が垂れ、両腕がぶら下がるゲド。
「はっ……皮肉な末路だな……ゲド」
「ええ……」
散々バカにしてきたダストラ達の手によって最期を迎えるゲド。その掌から血が滴り落ち、地面を赤黒く染める。
……終わったかに思えた。
しかし、神喰の器は握り潰したゲドを投げ捨てると、血まみれの眼窩をギギギ……と俺に向けてきやがった。
「次は、俺か?ま、そうなるよな」
喉が勝手に鳴った。ブルーストライクを握る手に汗が滲む。
「天貴……!」
アリスが袖を掴む。小さな震えが伝わってくる。
巨影は一歩、また一歩と地を踏み砕きながら近づいてくる。そのたびに地鳴りが足を揺らした。
(やるしかねぇ……!)
そう腹を決めかけた瞬間だった。
ズズズ……ッ。
奴の身体にぶっ刺さっていたエクリプス・ブレードが、不気味な黒光りを放ち始めた。
「天貴!あいつに刺さったゲドの剣が!」
アリスの叫びに目を向けると、刃はまるで溶けるように揺らめき、じわじわと黒影の肉に沈んでいく。
ギュルルルル……ッ!
「あいつ、剣まで喰らおうってのか!?」
突き刺さった傷口から黒い靄と肉片が吸い上げられていく。神喰いの器が暴れて爪を振るっても、剣は抜けず、逆に深く根を張るように体内へ食い込んでいった。
「ちがう!!天貴、逆よ!」
「まさか!剣があいつを喰ってる!?」
ズズズズズ……ッ!!
巨影の背から突き出ていた腕が次々と干からび、皮膚はひび割れ、肉ごと吸い込まれていく。怨嗟の声すらも、霧となって剣へと流れ込んだ。
「グギャオアオォォォォォ――!!」
最後の咆哮を上げた巨影は、やがて全身を黒い光に呑まれ、そこには漆黒に脈動する剣だけが残った。
短くも、長くも感じる沈黙が支配する。
「生きてるって言うのか、あの剣も!?」
エクリプス・ブレードの刀身は以前よりも濃く、禍々しい闇色を湛えて輝いていた。
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