155 / 188
最終章:崩壊王国の戦い
第155話 その想いが咲くとき
しおりを挟む
アリスの言葉に戸惑うリオックと玄太を残して、彼女が丘を駆け降りていったのは、ほんの数十分前のことだった。
風は吹き、草の香りが静かに漂う。三人の間に、落ち着かない沈黙が流れていた。
「ところで玄太よ。無理やり咲かせるって、どういうことだ?」
リオックが低くつぶやく。
「いや、おれにもさっぱりっす……」
玄太が小さくあくびをしたころ、丘の向こうから草をかき分ける足音が近づいてきた。揺れる三つの影が、逆光の中をこちらへ向かってくる。
「お待たせ!」
アリスが軽くウインクして駆け上がってきた。
「あれ、グロウ君!?ベータ君も?」
玄太が目を丸くする。
「玄太さん!話は聞きました!」
グロウは一歩前へ出て、胸の前で拳を握った。
「僕のアストラでお役に立てるなら、ぜひ!」
その横でベータが肩をすくめ、にこっと笑う。
「へへ、僕は~……補助ってことで」
玄太は一瞬ぽかんとした後、ハッと手を打った。
「そ、そうか!グロウ君のアストラ、植物成長で無理やり咲かせちゃうってことっすね!」
「植物成長か。なるほど、筋は通っている」
リオックが腕を組んで短くうなずくと、みんなの視線が自然と一点に集まる。つぼみの眠る大地は、まるで次の瞬間を待っているように静まり返っていた。
「じゃ、グロウ……いい?」
「はい、アリスさん!」
グロウは表情を引き締め、ベータと視線を交わした。そして、膝をつき、そっと大地に両手を触れる。
(グロウ君!ファイッす!!)
「――プランナッ!」
詠唱の声とともに、地面がかすかに震えた。
グロウの掌の下から、じんわりと緑の光が広がっていく。光は土の中を走り、根が目を覚ますように地を押し上げた。風が巻き、丘全体が呼吸を始める。
「う、わぁ……!」
玄太が思わず息を呑む。
「おい、見ろ!」
草原が波のようにうねり、若草の間から薄緑のつぼみたちが一斉に顔を出した。
「やった……つぼみ、出たっす!」
玄太の声は期待に震えていた。
風が頬を撫で、芽吹いたばかりの香りがふわりと漂う。その瞬間まで、丘は生き物のように脈打っていた。
――だが、次の鼓動は来なかった。
草のざわめきが止まり、光が静かに消えていく。丘に残ったのは、開ききれない無数のつぼみと、湿った土の匂いだけだった。
「あれ……?」
「……止まった……」
アリスの声がかすれる。
「おい、つぼみ!咲けよ……赤青金色!!」
つぼみは、玄太の叫びに応えるような気配はない。
「グロウ君!なんでやめちゃうんすか!?」
グロウはそっと立ち上がって目を閉じると、首を横に振った。
「……ごめんなさい。これ以上は、何かが……拒んでいます」
額に浮かぶ汗。
その静けさの中、リオックが空を仰いだ。
「花は、次元の扉と共にしか開かぬ――か」
絶望に似たリオックの言葉に草原はシンと静まり返った。
(はぁ。やっぱ、無理なんすかね……)
言葉にしたら終わるような気がして、声に出せない玄太は唇を噛む。誰も言葉に出せず、丘を渡る風の音だけが走る。
風に揺れるつぼみが、どこか泣いているように見えた。
――そのとき。
静寂を裂くように、背後から響いた。
「――あきらめるな!」
振り返ると、丘を登ってくる影がいくつもあった。コンバインの肩を借りながらも、真っすぐ前を見て歩く男。
――ラクター隊長。
その後ろにはライラ、ミミ、ノーグ……農場のみんなの姿が続く。
「ラクター隊長!もう歩けるんすか!?」
玄太が叫ぶと、コンバインがニッと歯を見せた。
「隊長の体力を侮るんじゃねえよ!」
「ふっ……俺もうかうか寝ていられないからな」
ラクターはゆっくりと丘の頂に立つと、まだ開かぬつぼみを見渡した。そして、その瞳にアリスを映すと、真剣な顔つきで一歩前に出た。
「アリス……どういうことだ?何をして……いや、何があった?」
アリスの瞳が、地面に散らばる緑の残滓と、しおれかけたつぼみを見渡した。
「花を咲かせようとしたの。でも……途中で止まったの」
「花?どういうことだ?」
ラクターが問い返すと、アリスは小さく息を吸い込んだ。
「この丘に咲く花が、天貴がいる場所への扉を開く鍵かもしれないの」
その言葉を皮切りに、アリスは経緯を説明した。
玄太が見た花の事。それが次元の力で咲く花だという事。そして―――
「それで、グロウのアストラで咲かせようとしたんだけど……」
ラクターは黙って短くうなずくと、ゆっくりと丘を見渡した。
「……なるほどな」
その視線が、まだ開かぬつぼみを捉える。
「つまり、花が咲けば――扉が開くと」
「たぶん……だけど」
ラクターは片膝をつき、土を指でなぞる。掌に伝わるぬるい湿り気。その奥にまだ、かすかな鼓動が残っていた。
「つぼみはまだ、生きている……」
「でも……僕のアストラじゃぁ……」
ラクターは立ち上がり、申し訳なく落ち込むグロウの頭に大きな手を置いた。
「ならば、皆で咲かせよう」
丘の上に、仲間たちの視線が集まる。その声は誰に向けたでもない。けれど、その場の全員の胸にまっすぐ届いた。
「でも、どうやって……?」
短い沈黙ののち、ラクターは視線を花へ戻す。
「次元の力で咲くというのなら、こいつはおそらく……魔力《マナ》に反応して開花するんだろう」
「魔力《マナ》が、肥料ってことっすか?」
「ああ。それも、並の量じゃ足りん。膨大な量の魔力だ」
ラクターはしばらく考え込むと、ゆっくりと顔を上げた。
「……この花が、次元の無尽蔵な魔力で咲くのなら――」
ラクターは言葉を切り、短く息を吸った。
「それに近い状態を、ここで作るしかない」
「え?……お父様、そ、それってどういう事?」
アリスが息をのむ。
「全員の魔力を重ねて、この一帯を覆う。花が咲くに足る“場”を、一時的に再現するんだ」
「そんなこと、できるんすか……?」
玄太が目を見開く。
「できるかどうかじゃない。やるんだ」
ラクターの声に、誰も反論しなかった。
風が止まり丘の上に静けさが満ちると、誰もが無言のまま視線を交わし、うなずき合う。
「……全員でやりましょう。天貴さんのところまで、必ず繋ぎましょう」
アリスが静かに前に出て言った。
「よし――一斉に、解放だ!」
ラクターの号令が丘に響いた。
誰もが息を呑み、空気が張りつめる。
「……よし!」
次の瞬間、リオックが一歩前へ踏み出す。
「このリオックが天貴殿への道を切り開く!セラフィック・ブレード!!」
先陣を切ったリオックの白光が丘を覆い、風が唸りを上げる。
「グロウ!二人で行くよ!……プランダッ!」
「はい!ベータ兄ちゃん!……プランナッ!」
緑の奔流が地を走る。丘の草がいっせいにたわみ、空気が震える。
「ライラも行きます!道を照らして――ルーメノ!」
草原に虹色の光彩が反射する。
「ミミは声をさがしまふ!エコーハント!」
「天貴さん!どこにいるの……!エネルスキャン!」
シーダの魔力が光の網となり、草原へ広がる。
「うおぉぉぉ!俺は隊長への想いを全力で乗せるぞぉぉぉぉ!!」
「っしゃあぁぁ!コンバイン!!思いっきり来い!!」
ラクターとコンバインは全身からアストラを放出した。二人の力が火花のように弾け、全ての光が一点に収束する。
耳がキーンと鳴るほどの轟音。
空気が焼けるように熱くなり、光が重なり合う。
「み、みんなすげぇ……!」
アルカノア農場が誇るアストラオールスターに、思わず後ずさる玄太。
次の瞬間――
地面が低く唸り、草が震えた。つぼみたちが同時に脈打ち、淡い光を放ち始める。
「……動いた!」
アリスの声が響く。
彼女は両手を胸の前で組み、空を仰いだ。
「――視せて!私たちの未来を!」
アリスの瞳が淡く光を帯びると、丘の上に新たな光流が走る。玄太は後ずさりながらも、その光景に息を呑んだ。仲間たちが次々と魔力を放つ中、自分だけが立ち尽くしている。
(どうしよ……おれ……)
眩しさに目を細めながら、喉の奥がひゅっと鳴る。
その時――
「玄太ぁぁぁ!」
リオックの声が風を裂いた。
「お前が最後だ!」
「えっ、え!?でも、おれ……アストラなんて……」
玄太は慌てて立ち上がる。
「お前にはあるだろう!力が!そうやってお前は異世界(ここ)へ来たんだろう!?」
リオックの激励で、クータンの思念体と話した夜を思い出す。
*****
「ぬしの持つ……アストラじゃ……」
「お、おれがアストラ!?んなわけ――」
「――否……ぬしは……すでに使って……おる……」
「使ってる?いつ?どこで!?おれなんて、いっつもてんぱいの事で頭がいっぱいで……!」
「それじゃ……その力……」
*****
(……その力って……)
光の中で玄太は小さくつぶやいた。心臓の鼓動が、自分の中の“何か”を叩き起こす。
「……てんぱいを好きな力が……おれのアストラ?」
指先が震える。胸の奥が熱くなる。
「――その力だ、玄太!!」
リオックの叫びが雷のように響く。
「天貴氏が待ってまふ!」
ミミの声が続く。
「おにーちゃんの想い、きっと届くよ!」
ライラ。
「お前の想いを!」
ラクター隊長。
「ありったけ叫べ!」
コンバインさん。
みんなの声が一つに混ざって、玄太の全身を貫いた。なんだこれ……体の中がざわざわしてる。血がドクドクして、体中があったかい。
(なんか……おれ、熱い?)
その瞬間、どこからともなく確かに聞こえた。
『玄太!俺はここだ!』
(……え!?)
懐かしい声に、息が止まる。
(てんぱい……!?)
考えるより早く、玄太の口から大好きな名前がこぼれた。
「――てんぱぁぁぁぁぁいっ!!!」
風は吹き、草の香りが静かに漂う。三人の間に、落ち着かない沈黙が流れていた。
「ところで玄太よ。無理やり咲かせるって、どういうことだ?」
リオックが低くつぶやく。
「いや、おれにもさっぱりっす……」
玄太が小さくあくびをしたころ、丘の向こうから草をかき分ける足音が近づいてきた。揺れる三つの影が、逆光の中をこちらへ向かってくる。
「お待たせ!」
アリスが軽くウインクして駆け上がってきた。
「あれ、グロウ君!?ベータ君も?」
玄太が目を丸くする。
「玄太さん!話は聞きました!」
グロウは一歩前へ出て、胸の前で拳を握った。
「僕のアストラでお役に立てるなら、ぜひ!」
その横でベータが肩をすくめ、にこっと笑う。
「へへ、僕は~……補助ってことで」
玄太は一瞬ぽかんとした後、ハッと手を打った。
「そ、そうか!グロウ君のアストラ、植物成長で無理やり咲かせちゃうってことっすね!」
「植物成長か。なるほど、筋は通っている」
リオックが腕を組んで短くうなずくと、みんなの視線が自然と一点に集まる。つぼみの眠る大地は、まるで次の瞬間を待っているように静まり返っていた。
「じゃ、グロウ……いい?」
「はい、アリスさん!」
グロウは表情を引き締め、ベータと視線を交わした。そして、膝をつき、そっと大地に両手を触れる。
(グロウ君!ファイッす!!)
「――プランナッ!」
詠唱の声とともに、地面がかすかに震えた。
グロウの掌の下から、じんわりと緑の光が広がっていく。光は土の中を走り、根が目を覚ますように地を押し上げた。風が巻き、丘全体が呼吸を始める。
「う、わぁ……!」
玄太が思わず息を呑む。
「おい、見ろ!」
草原が波のようにうねり、若草の間から薄緑のつぼみたちが一斉に顔を出した。
「やった……つぼみ、出たっす!」
玄太の声は期待に震えていた。
風が頬を撫で、芽吹いたばかりの香りがふわりと漂う。その瞬間まで、丘は生き物のように脈打っていた。
――だが、次の鼓動は来なかった。
草のざわめきが止まり、光が静かに消えていく。丘に残ったのは、開ききれない無数のつぼみと、湿った土の匂いだけだった。
「あれ……?」
「……止まった……」
アリスの声がかすれる。
「おい、つぼみ!咲けよ……赤青金色!!」
つぼみは、玄太の叫びに応えるような気配はない。
「グロウ君!なんでやめちゃうんすか!?」
グロウはそっと立ち上がって目を閉じると、首を横に振った。
「……ごめんなさい。これ以上は、何かが……拒んでいます」
額に浮かぶ汗。
その静けさの中、リオックが空を仰いだ。
「花は、次元の扉と共にしか開かぬ――か」
絶望に似たリオックの言葉に草原はシンと静まり返った。
(はぁ。やっぱ、無理なんすかね……)
言葉にしたら終わるような気がして、声に出せない玄太は唇を噛む。誰も言葉に出せず、丘を渡る風の音だけが走る。
風に揺れるつぼみが、どこか泣いているように見えた。
――そのとき。
静寂を裂くように、背後から響いた。
「――あきらめるな!」
振り返ると、丘を登ってくる影がいくつもあった。コンバインの肩を借りながらも、真っすぐ前を見て歩く男。
――ラクター隊長。
その後ろにはライラ、ミミ、ノーグ……農場のみんなの姿が続く。
「ラクター隊長!もう歩けるんすか!?」
玄太が叫ぶと、コンバインがニッと歯を見せた。
「隊長の体力を侮るんじゃねえよ!」
「ふっ……俺もうかうか寝ていられないからな」
ラクターはゆっくりと丘の頂に立つと、まだ開かぬつぼみを見渡した。そして、その瞳にアリスを映すと、真剣な顔つきで一歩前に出た。
「アリス……どういうことだ?何をして……いや、何があった?」
アリスの瞳が、地面に散らばる緑の残滓と、しおれかけたつぼみを見渡した。
「花を咲かせようとしたの。でも……途中で止まったの」
「花?どういうことだ?」
ラクターが問い返すと、アリスは小さく息を吸い込んだ。
「この丘に咲く花が、天貴がいる場所への扉を開く鍵かもしれないの」
その言葉を皮切りに、アリスは経緯を説明した。
玄太が見た花の事。それが次元の力で咲く花だという事。そして―――
「それで、グロウのアストラで咲かせようとしたんだけど……」
ラクターは黙って短くうなずくと、ゆっくりと丘を見渡した。
「……なるほどな」
その視線が、まだ開かぬつぼみを捉える。
「つまり、花が咲けば――扉が開くと」
「たぶん……だけど」
ラクターは片膝をつき、土を指でなぞる。掌に伝わるぬるい湿り気。その奥にまだ、かすかな鼓動が残っていた。
「つぼみはまだ、生きている……」
「でも……僕のアストラじゃぁ……」
ラクターは立ち上がり、申し訳なく落ち込むグロウの頭に大きな手を置いた。
「ならば、皆で咲かせよう」
丘の上に、仲間たちの視線が集まる。その声は誰に向けたでもない。けれど、その場の全員の胸にまっすぐ届いた。
「でも、どうやって……?」
短い沈黙ののち、ラクターは視線を花へ戻す。
「次元の力で咲くというのなら、こいつはおそらく……魔力《マナ》に反応して開花するんだろう」
「魔力《マナ》が、肥料ってことっすか?」
「ああ。それも、並の量じゃ足りん。膨大な量の魔力だ」
ラクターはしばらく考え込むと、ゆっくりと顔を上げた。
「……この花が、次元の無尽蔵な魔力で咲くのなら――」
ラクターは言葉を切り、短く息を吸った。
「それに近い状態を、ここで作るしかない」
「え?……お父様、そ、それってどういう事?」
アリスが息をのむ。
「全員の魔力を重ねて、この一帯を覆う。花が咲くに足る“場”を、一時的に再現するんだ」
「そんなこと、できるんすか……?」
玄太が目を見開く。
「できるかどうかじゃない。やるんだ」
ラクターの声に、誰も反論しなかった。
風が止まり丘の上に静けさが満ちると、誰もが無言のまま視線を交わし、うなずき合う。
「……全員でやりましょう。天貴さんのところまで、必ず繋ぎましょう」
アリスが静かに前に出て言った。
「よし――一斉に、解放だ!」
ラクターの号令が丘に響いた。
誰もが息を呑み、空気が張りつめる。
「……よし!」
次の瞬間、リオックが一歩前へ踏み出す。
「このリオックが天貴殿への道を切り開く!セラフィック・ブレード!!」
先陣を切ったリオックの白光が丘を覆い、風が唸りを上げる。
「グロウ!二人で行くよ!……プランダッ!」
「はい!ベータ兄ちゃん!……プランナッ!」
緑の奔流が地を走る。丘の草がいっせいにたわみ、空気が震える。
「ライラも行きます!道を照らして――ルーメノ!」
草原に虹色の光彩が反射する。
「ミミは声をさがしまふ!エコーハント!」
「天貴さん!どこにいるの……!エネルスキャン!」
シーダの魔力が光の網となり、草原へ広がる。
「うおぉぉぉ!俺は隊長への想いを全力で乗せるぞぉぉぉぉ!!」
「っしゃあぁぁ!コンバイン!!思いっきり来い!!」
ラクターとコンバインは全身からアストラを放出した。二人の力が火花のように弾け、全ての光が一点に収束する。
耳がキーンと鳴るほどの轟音。
空気が焼けるように熱くなり、光が重なり合う。
「み、みんなすげぇ……!」
アルカノア農場が誇るアストラオールスターに、思わず後ずさる玄太。
次の瞬間――
地面が低く唸り、草が震えた。つぼみたちが同時に脈打ち、淡い光を放ち始める。
「……動いた!」
アリスの声が響く。
彼女は両手を胸の前で組み、空を仰いだ。
「――視せて!私たちの未来を!」
アリスの瞳が淡く光を帯びると、丘の上に新たな光流が走る。玄太は後ずさりながらも、その光景に息を呑んだ。仲間たちが次々と魔力を放つ中、自分だけが立ち尽くしている。
(どうしよ……おれ……)
眩しさに目を細めながら、喉の奥がひゅっと鳴る。
その時――
「玄太ぁぁぁ!」
リオックの声が風を裂いた。
「お前が最後だ!」
「えっ、え!?でも、おれ……アストラなんて……」
玄太は慌てて立ち上がる。
「お前にはあるだろう!力が!そうやってお前は異世界(ここ)へ来たんだろう!?」
リオックの激励で、クータンの思念体と話した夜を思い出す。
*****
「ぬしの持つ……アストラじゃ……」
「お、おれがアストラ!?んなわけ――」
「――否……ぬしは……すでに使って……おる……」
「使ってる?いつ?どこで!?おれなんて、いっつもてんぱいの事で頭がいっぱいで……!」
「それじゃ……その力……」
*****
(……その力って……)
光の中で玄太は小さくつぶやいた。心臓の鼓動が、自分の中の“何か”を叩き起こす。
「……てんぱいを好きな力が……おれのアストラ?」
指先が震える。胸の奥が熱くなる。
「――その力だ、玄太!!」
リオックの叫びが雷のように響く。
「天貴氏が待ってまふ!」
ミミの声が続く。
「おにーちゃんの想い、きっと届くよ!」
ライラ。
「お前の想いを!」
ラクター隊長。
「ありったけ叫べ!」
コンバインさん。
みんなの声が一つに混ざって、玄太の全身を貫いた。なんだこれ……体の中がざわざわしてる。血がドクドクして、体中があったかい。
(なんか……おれ、熱い?)
その瞬間、どこからともなく確かに聞こえた。
『玄太!俺はここだ!』
(……え!?)
懐かしい声に、息が止まる。
(てんぱい……!?)
考えるより早く、玄太の口から大好きな名前がこぼれた。
「――てんぱぁぁぁぁぁいっ!!!」
0
あなたにおすすめの小説
花屋の息子
きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。
森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___?
瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け
の、お話です。
不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。
攻めが出てくるまでちょっとかかります。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【完結】竜討伐の褒賞は、鹿角の王子様。(志願)
N2O
BL
執着王子 × 異世界転生魔法使い
魔法使いが逃げられなくなる話。
『上』『中』『下』の全三話、三連休中に完結します。
二万字以下なので、ショートショート𖤣𖥧𖥣
Special thanks
illustration by okiagsa様(X:@okigasa_tate)
MBM様(X:@MBMpaper)
※独自設定、ご都合主義。あしからず。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる