164 / 188
最終章:崩壊王国の戦い
第164話 第三領域 ―導きの大書庫― 前半
しおりを挟む
―第三領域・大書庫―
「ところでぬしはここに詳しいようじゃが、その1冊のありかは分からぬのか」
「ここ、潜るたびに答えの位置が変わるんすよねぇ」
クータンがずらりと並ぶ色のない本棚を見渡すと、色のない本がずっと奥まで続いていた。
「だがしかし、こうも薄暗くては……っむ!?」
しかし、ある一点にふと目が留まると、尻尾を振りながらぴょこぴょこと駆けて行った。
「ぬしよ!恐れ入るがよい!我が見つけたぞ」
「え…?うそでしょ?」
そう言ってクータンが見上げる本を確認すると、一冊だけ背表紙に色がついている。
「これじゃ。白き本に眠る一冊の赤い本。これに相違ないじゃろ」
「あぁ、これっすよね。これ、実は……」
赤い本を手に取ってクータンと一緒にパラパラとページをめくる。しかし、挿絵はおろか、文字の一つもないページが続き、ただ紙がめくれる音だけが静かに響いた。
「……中がからっぽじゃ。書物とは言えぬぞ」
「いや、ここは白紙なのが正しい挙動なんすよ」
玄太はページの端を指先で押さえながら、小さな声でクータンの耳元で囁いた。
「この本は鍵なんす。読むんじゃなくて、正しい位置にはめるアイテムなんすよ」
「正しい位置……こやつはこの場所が気に食わぬと申すか?」
「ま、そっすね。こういう、迷子の本がここに4冊あるはずなんで、まずはそれを見つけるんすよ」
「ほう……四方に散った小さき鍵、というわけじゃな?」
玄太は赤い本の背表紙を軽く撫でた。
「で、この赤いやつ……背表紙、見てくださいよ」
「む?建国史綱要(けんこくし・こうよう)……これは随分と大仰な名じゃな」
「建国に関係する棚に戻してやるんす!多分そこに違う迷子の本もまぎれてるんで!」
「なるほど。本が自らの家を求めておるわけか。ふむ、悪くない趣向じゃ」
「っし!じゃあまずは建国史の棚へ向かうっす!」
玄太は赤い本を抱えて、別の本棚の林へと一歩踏み込む。通路は広く、棚は高い。ちょっとした迷宮みたいで、歩くだけで本の匂いが肌にまとわりつく。
「広いのう。『建国』とやらの書棚は、いったいどこにあるのじゃ?」
「大丈夫っす。たしか手前ブロックの西側に――」
玄太は迷路のような棚の間を迷いなく進んでいく。クータンは後ろで小さく尻尾を揺らしながらついていく。曲がり角をひとつ抜けると、背の高い本棚に刻まれた文字が目に入った。
「ほら、ここっす!建国史・王政期って書いてある!」
玄太は棚の前で足を止めた。クータンも背伸びして棚を覗き込む。
「む?ぬしよ、ここにまた色のついた本が差さっておるぞ?」
クータンが不思議そうに眉をひそめた。棚の“赤い本が収まるはずの位置”に、 藍色の背表紙 が挟まっていた。玄太は淡々と藍色の本を引き抜くと、赤い本をスッと差し込んだ。すると、赤い本は本棚に溶け込むようにその色を失い、白い本たちと同化した。
「ほう。古巣に還ったが。これにて一部完了か?」
「さ、今度はこの藍色の本をあるべき場所に戻しに行きますよ!」
藍色の本の背表紙には、『王国戦史・終末編』と刻まれていた。
「なるほど……このように迷子がバトンタッチするのじゃな」
「っすね。4冊終われば恐怖の第二ギミックなんすけど……」
玄太は王国戦史・終末編を小脇に抱え、迷いなく左手の通路へ向かった。
*****
「おし!これで最後っと!」
最期の一冊を差し込むと、その瞬間、遠くの闇から鈴の音がした。
リン……。
「む?今しがた、怪しげな鈴の音が」
「はぁ、やっぱ出たかぁ……これ、第一ギミックを解くと、奥のエリアから書庫番が徘徊始めるんすよ」
二人は同時に足を止めた。
「ふむ。そのような輩は我の火の鳥で瞬殺じゃ」
「いや。書庫で火気とかシャレになんねえすから。見つかると厄介なんでここからは忍び足っすよ」
「むぅ……忍び足とは、我は忍術の類は使えぬぞ」
「声を小さくするだけで十分っすよ。クータンは黒くて小っちゃいから書庫番も見過ごすっしょ」
軽口を交わしながらも、玄太の耳はずっと奥の闇に向いていた。
リン……リリン……。
さっきより――ほんの少しだけ鈴の音が近い。棚の影がゆっくり揺れた気がして、玄太はクータンの背を軽く押した。
「さ、こっちも徘徊開始!本命の一冊は奥の棚のどこかっす」
「ふむ……ならば慎重にゆくとしよう」
玄太は息を潜めながら、さりげなく視線を上へ向けた。天井のシャンデリアがさっきまでより、さらに紫の光が弱い。
「やっぱ、おかしい。ゲームならもっと煌々と灯ってるのに……」
最初に感じた違和感。しかし彼には理由が分からない。けれど、そのわずかな違いは――地下最深部で、起きていた。
*****
壁一面に埋め込まれた紫の導流晶が、脈動のリズムをほんの一瞬だけ乱した。 淡い光がズ……と沈み、魔力槽の液面に、獣が息をひそめたような揺れが走る。
クザンは動きを止め、わずかに首を傾けて液面を覗き込んだ。
「……また流量が落ちた。なにこれ?」
静まり返った最深部に、不協和な鼓動だけが残る。 指先で魔力槽をコンと叩くと、紫の脈動はワンテンポ遅れて戻った。
「導流晶が安定しない……まさか――」
眉がほんのわずかに寄る。 だがそれは疑念ではない。 計算外の揺らぎに向けた、単なる興味の反応にすぎなかった。
「ウイルスが入り込んだ――?ないない。ここに干渉できる存在なんて、神族以外いないし」
この領域に触れられるのは、神である自分だけ。そう信じきっているからこそ、その興味は疑問に育たない。
「……まぁ、昔の動力だしね。続けよっと」
最深部の空気が再び脈打ち始め、紫の光はゆっくりと天貴の器へ吸い込まれ続けていった。
*****
ぷ~っ……!
リ……ン……………………リリンリリンリリン!
「クータンやばいやばいやばい!来る来る来る!!」
棚の向こう、闇の通路の奥で鈴の音が乱れ跳ねる。さっきまで一定だった巡回音が完全に走ってきている音に変わっていた。
「思わず尻から空圧が出てしもうた」
「いや!こんな時に屁とか冗談きついって!」
リリンリリンリリンリリン!!
棚の影が一瞬、横に揺れた。玄太は反射より早く棚の陰に隠れると身を屈めながら、クータンの背中を床に押さえつけた。
「クータン、伏せ!伏せっす!!」
「んぐっ!?ぬ、ぬし……かように押してはまた空圧が……」
床に身を沈めた瞬間、通路の向こうを“何か”の影がすっと横切った。玄太は息を殺しながら、そっと棚の隙間から覗くと、音の出どころを見失った見張り番が再び徘徊を始めた。
リン……リリン……。
「ふぅっ…………今の、近すぎ……!」
玄太がそっと息を吐いた瞬間、その隣でクータンが鼻をひくつかせた。
「……すんすん……ふむ、なにやら匂うの」
「え?なに……ほんとだ、くさっ!っぷ……っく……っ~~……」
玄太は口を押さえて肩を震わせた。書庫番が通り過ぎた直後の、この深刻な静寂の中でよりによってこれ。笑ってはいけない状況でのみ襲い来る、笑いのハードルが下がる謎の現象。
「ぬしよ、安心せい。我は音を出さずに空圧を放出する術を覚えたぞ。我だけのアストラじゃ」
クータンが誇らしげに胸を張る。おい、追い打ちはやめろ。それ誇る類いの技じゃない。
「……っぷ、それただのすかしっ屁!みんな習得してるから!」
この状況で笑ったら終わりだ。玄太は涙目で必死に口元を押さえたまま、クータンにささやいた。
「見つかって距離詰められたり……鈴の音が突然止まったと思ったら……真後ろにいたりするんすよ」
リ…ン………………。
「――ほう、確かに止まったの」
鈴の音が、耳の真後ろで直に止まった。空気の振動が、首筋の産毛を逆立たせる。え?嘘だろ?っと、そぉっと振り返った、その瞬間。
「っッ!!?」
そこにいた。真後ろで真っ白い仮面の書庫番が、ぎろりと玄太を見下ろしていた。
仮面の奥の視線なんて見えるわけないのに、確実に殺意を向けられてると全身が理解する感覚。心臓がキュッと縮んで、玄太とクータンは完全に固まった。
(……っく……声……出ねぇ……!)
やば、ビビりすぎてちびったかも…玄太がパンツを少し濡らした、その刹那だった。
「……ひっ……ひぐ……」
隣のクータンが恐怖のあまり小刻みに震え、小さく尻を揺らした。
――ぷりっ。
ちっちゃい音がした瞬間、小さな丸い“それ”が玄太の足元にコロコロと転がってきた。
(―――っ!?……いや待って、嘘だろ!?)
目の前の小さな“おそそ”に、脳が理解を拒んだ。だが現実は残酷だ。
「っ……ふ……っ、……や……ば……」
クータン、ビビりすぎて脱糞事件IN静寂の大書庫。こらえればこらえるほど腹の底からこみ上げ、恐怖で張りつめていた心が一気に逆方向へ跳ねた。
「……ぷ、ぶっ……ぶはッ……ぎゃははははははははははッッ!!!!!」
―――終わった。
完全に終わった。
書庫番の目の前で、大爆笑。
もう自分でも止められなかった。涙が出るほど狂ったように笑いながら、玄太は床をゴロゴロと転がった。
「ぬし、声を上げてはならぬぞ」
「むりっ……むりだって!クータン……お前……神の領域で……ぶはははははは!!!」
書庫全体に、玄太の大爆笑が響き渡った。
「ところでぬしはここに詳しいようじゃが、その1冊のありかは分からぬのか」
「ここ、潜るたびに答えの位置が変わるんすよねぇ」
クータンがずらりと並ぶ色のない本棚を見渡すと、色のない本がずっと奥まで続いていた。
「だがしかし、こうも薄暗くては……っむ!?」
しかし、ある一点にふと目が留まると、尻尾を振りながらぴょこぴょこと駆けて行った。
「ぬしよ!恐れ入るがよい!我が見つけたぞ」
「え…?うそでしょ?」
そう言ってクータンが見上げる本を確認すると、一冊だけ背表紙に色がついている。
「これじゃ。白き本に眠る一冊の赤い本。これに相違ないじゃろ」
「あぁ、これっすよね。これ、実は……」
赤い本を手に取ってクータンと一緒にパラパラとページをめくる。しかし、挿絵はおろか、文字の一つもないページが続き、ただ紙がめくれる音だけが静かに響いた。
「……中がからっぽじゃ。書物とは言えぬぞ」
「いや、ここは白紙なのが正しい挙動なんすよ」
玄太はページの端を指先で押さえながら、小さな声でクータンの耳元で囁いた。
「この本は鍵なんす。読むんじゃなくて、正しい位置にはめるアイテムなんすよ」
「正しい位置……こやつはこの場所が気に食わぬと申すか?」
「ま、そっすね。こういう、迷子の本がここに4冊あるはずなんで、まずはそれを見つけるんすよ」
「ほう……四方に散った小さき鍵、というわけじゃな?」
玄太は赤い本の背表紙を軽く撫でた。
「で、この赤いやつ……背表紙、見てくださいよ」
「む?建国史綱要(けんこくし・こうよう)……これは随分と大仰な名じゃな」
「建国に関係する棚に戻してやるんす!多分そこに違う迷子の本もまぎれてるんで!」
「なるほど。本が自らの家を求めておるわけか。ふむ、悪くない趣向じゃ」
「っし!じゃあまずは建国史の棚へ向かうっす!」
玄太は赤い本を抱えて、別の本棚の林へと一歩踏み込む。通路は広く、棚は高い。ちょっとした迷宮みたいで、歩くだけで本の匂いが肌にまとわりつく。
「広いのう。『建国』とやらの書棚は、いったいどこにあるのじゃ?」
「大丈夫っす。たしか手前ブロックの西側に――」
玄太は迷路のような棚の間を迷いなく進んでいく。クータンは後ろで小さく尻尾を揺らしながらついていく。曲がり角をひとつ抜けると、背の高い本棚に刻まれた文字が目に入った。
「ほら、ここっす!建国史・王政期って書いてある!」
玄太は棚の前で足を止めた。クータンも背伸びして棚を覗き込む。
「む?ぬしよ、ここにまた色のついた本が差さっておるぞ?」
クータンが不思議そうに眉をひそめた。棚の“赤い本が収まるはずの位置”に、 藍色の背表紙 が挟まっていた。玄太は淡々と藍色の本を引き抜くと、赤い本をスッと差し込んだ。すると、赤い本は本棚に溶け込むようにその色を失い、白い本たちと同化した。
「ほう。古巣に還ったが。これにて一部完了か?」
「さ、今度はこの藍色の本をあるべき場所に戻しに行きますよ!」
藍色の本の背表紙には、『王国戦史・終末編』と刻まれていた。
「なるほど……このように迷子がバトンタッチするのじゃな」
「っすね。4冊終われば恐怖の第二ギミックなんすけど……」
玄太は王国戦史・終末編を小脇に抱え、迷いなく左手の通路へ向かった。
*****
「おし!これで最後っと!」
最期の一冊を差し込むと、その瞬間、遠くの闇から鈴の音がした。
リン……。
「む?今しがた、怪しげな鈴の音が」
「はぁ、やっぱ出たかぁ……これ、第一ギミックを解くと、奥のエリアから書庫番が徘徊始めるんすよ」
二人は同時に足を止めた。
「ふむ。そのような輩は我の火の鳥で瞬殺じゃ」
「いや。書庫で火気とかシャレになんねえすから。見つかると厄介なんでここからは忍び足っすよ」
「むぅ……忍び足とは、我は忍術の類は使えぬぞ」
「声を小さくするだけで十分っすよ。クータンは黒くて小っちゃいから書庫番も見過ごすっしょ」
軽口を交わしながらも、玄太の耳はずっと奥の闇に向いていた。
リン……リリン……。
さっきより――ほんの少しだけ鈴の音が近い。棚の影がゆっくり揺れた気がして、玄太はクータンの背を軽く押した。
「さ、こっちも徘徊開始!本命の一冊は奥の棚のどこかっす」
「ふむ……ならば慎重にゆくとしよう」
玄太は息を潜めながら、さりげなく視線を上へ向けた。天井のシャンデリアがさっきまでより、さらに紫の光が弱い。
「やっぱ、おかしい。ゲームならもっと煌々と灯ってるのに……」
最初に感じた違和感。しかし彼には理由が分からない。けれど、そのわずかな違いは――地下最深部で、起きていた。
*****
壁一面に埋め込まれた紫の導流晶が、脈動のリズムをほんの一瞬だけ乱した。 淡い光がズ……と沈み、魔力槽の液面に、獣が息をひそめたような揺れが走る。
クザンは動きを止め、わずかに首を傾けて液面を覗き込んだ。
「……また流量が落ちた。なにこれ?」
静まり返った最深部に、不協和な鼓動だけが残る。 指先で魔力槽をコンと叩くと、紫の脈動はワンテンポ遅れて戻った。
「導流晶が安定しない……まさか――」
眉がほんのわずかに寄る。 だがそれは疑念ではない。 計算外の揺らぎに向けた、単なる興味の反応にすぎなかった。
「ウイルスが入り込んだ――?ないない。ここに干渉できる存在なんて、神族以外いないし」
この領域に触れられるのは、神である自分だけ。そう信じきっているからこそ、その興味は疑問に育たない。
「……まぁ、昔の動力だしね。続けよっと」
最深部の空気が再び脈打ち始め、紫の光はゆっくりと天貴の器へ吸い込まれ続けていった。
*****
ぷ~っ……!
リ……ン……………………リリンリリンリリン!
「クータンやばいやばいやばい!来る来る来る!!」
棚の向こう、闇の通路の奥で鈴の音が乱れ跳ねる。さっきまで一定だった巡回音が完全に走ってきている音に変わっていた。
「思わず尻から空圧が出てしもうた」
「いや!こんな時に屁とか冗談きついって!」
リリンリリンリリンリリン!!
棚の影が一瞬、横に揺れた。玄太は反射より早く棚の陰に隠れると身を屈めながら、クータンの背中を床に押さえつけた。
「クータン、伏せ!伏せっす!!」
「んぐっ!?ぬ、ぬし……かように押してはまた空圧が……」
床に身を沈めた瞬間、通路の向こうを“何か”の影がすっと横切った。玄太は息を殺しながら、そっと棚の隙間から覗くと、音の出どころを見失った見張り番が再び徘徊を始めた。
リン……リリン……。
「ふぅっ…………今の、近すぎ……!」
玄太がそっと息を吐いた瞬間、その隣でクータンが鼻をひくつかせた。
「……すんすん……ふむ、なにやら匂うの」
「え?なに……ほんとだ、くさっ!っぷ……っく……っ~~……」
玄太は口を押さえて肩を震わせた。書庫番が通り過ぎた直後の、この深刻な静寂の中でよりによってこれ。笑ってはいけない状況でのみ襲い来る、笑いのハードルが下がる謎の現象。
「ぬしよ、安心せい。我は音を出さずに空圧を放出する術を覚えたぞ。我だけのアストラじゃ」
クータンが誇らしげに胸を張る。おい、追い打ちはやめろ。それ誇る類いの技じゃない。
「……っぷ、それただのすかしっ屁!みんな習得してるから!」
この状況で笑ったら終わりだ。玄太は涙目で必死に口元を押さえたまま、クータンにささやいた。
「見つかって距離詰められたり……鈴の音が突然止まったと思ったら……真後ろにいたりするんすよ」
リ…ン………………。
「――ほう、確かに止まったの」
鈴の音が、耳の真後ろで直に止まった。空気の振動が、首筋の産毛を逆立たせる。え?嘘だろ?っと、そぉっと振り返った、その瞬間。
「っッ!!?」
そこにいた。真後ろで真っ白い仮面の書庫番が、ぎろりと玄太を見下ろしていた。
仮面の奥の視線なんて見えるわけないのに、確実に殺意を向けられてると全身が理解する感覚。心臓がキュッと縮んで、玄太とクータンは完全に固まった。
(……っく……声……出ねぇ……!)
やば、ビビりすぎてちびったかも…玄太がパンツを少し濡らした、その刹那だった。
「……ひっ……ひぐ……」
隣のクータンが恐怖のあまり小刻みに震え、小さく尻を揺らした。
――ぷりっ。
ちっちゃい音がした瞬間、小さな丸い“それ”が玄太の足元にコロコロと転がってきた。
(―――っ!?……いや待って、嘘だろ!?)
目の前の小さな“おそそ”に、脳が理解を拒んだ。だが現実は残酷だ。
「っ……ふ……っ、……や……ば……」
クータン、ビビりすぎて脱糞事件IN静寂の大書庫。こらえればこらえるほど腹の底からこみ上げ、恐怖で張りつめていた心が一気に逆方向へ跳ねた。
「……ぷ、ぶっ……ぶはッ……ぎゃははははははははははッッ!!!!!」
―――終わった。
完全に終わった。
書庫番の目の前で、大爆笑。
もう自分でも止められなかった。涙が出るほど狂ったように笑いながら、玄太は床をゴロゴロと転がった。
「ぬし、声を上げてはならぬぞ」
「むりっ……むりだって!クータン……お前……神の領域で……ぶはははははは!!!」
書庫全体に、玄太の大爆笑が響き渡った。
0
あなたにおすすめの小説
花屋の息子
きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。
森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___?
瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け
の、お話です。
不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。
攻めが出てくるまでちょっとかかります。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【完結】竜討伐の褒賞は、鹿角の王子様。(志願)
N2O
BL
執着王子 × 異世界転生魔法使い
魔法使いが逃げられなくなる話。
『上』『中』『下』の全三話、三連休中に完結します。
二万字以下なので、ショートショート𖤣𖥧𖥣
Special thanks
illustration by okiagsa様(X:@okigasa_tate)
MBM様(X:@MBMpaper)
※独自設定、ご都合主義。あしからず。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる