【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

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第75話 食材調達

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朝食を済ませた俺とメタムンは米村さんと北原とともに、ハウスから少し離れた場所に食材調達にやってきていた。
米村さんは「そんなことはいいからみんなの相手をしてやってくれないか? みんな、善くんの話を聞きたがっているんだよ」と言ったが、お世話になるのだから食材調達くらいはさせてほしいと俺が強く頼みこんだのだ。
まあそれは建前で、多くの学生たちから少しでも距離をとりたかったというのが正直なところなのだが。

『みんなでお出かけ、楽しいねーっ』
「そうだね、メタムンちゃん」
「二人はもうすっかり仲良しになったようだね」
『うんっ。おいらたち友達だもんっ。ねー、奏美っ』
「ねー、メタムンちゃんっ」

メタムンはニコニコ顔で北原を見やった。
北原もそれに笑顔で返す。
そんな様子を微笑ましくみつめる米村さん。
……うん、平和だ。
二十四時間後には非常に危険なレアアイテムが俺のもとへと投下されるというのに、みんないい意味で緊張感がない。

「善くん、心配かい?」
俺の心の内を察してか、米村さんがそっと訊ねてくる。

「あ、ええ、まあ……そうですね。俺たち以外の誰かがもし死神のデスサイスを手にしたらと思うと……」
「大丈夫だよ。僕たちがついているから。絶対にほかの人たちにはとらせないよ」
と米村さん。
不思議だ。米村さんにそう言われると心がすっと軽くなる。

「話は変わるけど、善くん、普通に会話できているんじゃないのかい?」
米村さんは唐突にそんなことを訊いてきた。

「え、ど、どういうことですか?」
「メタムンくんはもちろん、僕とも北原さんとも上手く話せているようだから、善くんの人付き合いが苦手っていうのも直ってきているんじゃないのかと思ってね」
「あ、あー、そうですか……?」

米村さんにはきちんと話していなかったが、いくら俺がコミュ障とはいってもさすがに家族とは普通に話せる。
なので俺の場合は家族とまではいかなくてもある程度気を許した相手ならば、それが他人だとしても多少は普通に会話ができる、と長年の経験から自己分析が出来ていた。
米村さんが普通に会話が出来ていると俺を見て思ってくれているのなら、それは俺が少なからず米村さんたちに気を許しているということの表れなのかもしれない。

『あっ、野ウサギだよっ!』
メタムンが前方を見ながら声を上げた。
俺たちはその声で顔を上げる。

「本当だっ」
「あ、でもちょっと待って。あれって親子じゃないですかっ?」
駆け出そうとした米村さんに北原が声をかけた。
たしかによく見ると北原の言う通り、野ウサギは大きいのが一匹と小さいのが二匹一緒にいて、親子のように見えた。

「あれを捕まえるのはちょっと……わたしはあまり気が進まないです」
「うーん、そうか」
『おいらも見逃してやりたいなー』
「……うん、わかった。帰りを待っているみんなには悪いけど、あの野ウサギの親子は見逃すことにしよう」
『わーい!』
「ありがとうございます、米村さん」

三人で相談した結果、今回は食糧として野ウサギの親子を狩ることはやめることにしたのだった。
……それにしても俺、さっきからほとんど会話に参加してないな。
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