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オルランドの独白
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アイシャが誘拐される可能性のことを示唆すると、セシル側も孤児院側もすぐに協力するという返答が返ってきた。
ノアも予想していたことだが、ジョン・デンバーは面会に来たことはなく、アイシャの顔は知らないらしい。本人に似せる必要がなくなったので、後はどれだけミラの変装が14歳の孤児に寄せられるかにかかっている。
だが、危険なのは変わりないので、アイシャは即座に孤児院を離れてタイラー家へ密かに養子に出されることになった。
突然、孤児院を追い出される形になってしまったアイシャは、最初は孤児院から離れることを拒んでいたが、ノアからセシルの事情を話し、彼の写真を渡すとすんなりとタイラー家に行く事を承諾した。孤児院で幼い子ども達の面倒をたくさん見てきたアイシャだからこそ、病弱なセシルの事が気になって仕方ないようだ。
オルランド達が警戒する中、アイシャは速やかにタイラー家へと届けられた。そして、施設長にはデンバー家に養子として預けたい旨を連絡してもらった。返事は翌日早速届き、明日には迎えの馬車を寄越すとのことで、ミラの囮計画は慌ただしく準備が整えられていった。
「明日、ミラが出発するのと同時に、俺とギルド選抜の冒険者数名が追跡して行く事になった」
「いよいよ明日なんだね」
「ああ。俺がいない間無茶はするなよ?」
「わかってるよ」
「本当にわかっているのか?」
「心配性だな」
「心配にもなるさ。ノアは本当に何をするのかわからないから」
『まぁ、そこが面白いんだけどな』と続けるオルランドの横顔を見ていたノアが、今まで疑問に思っていた事を訊ねた。
「ねぇ……どうして俺の事が好きなの?」
「どうした急に……最初にチャールストン家に行った時に言っただろ。アルフレッドの婚約解消の時に見せた笑顔に惚れたって」
実際は『あの時の笑顔を自分にも向けて欲しい』云々と言っていた気がするが、彼の中ではそれは『惚れた』という表現だったようだ。
「本当にそれだけ?」
「最初はな。在学中も君の事は勿論認識していたよ、とても綺麗な子がいるなって。でもアルフレッドの婚約者だし、恋愛感情は当然持っていなかったけど。いつもアルフレッドに傷つけられていて、可哀そうだとも思っていた……でも、あまり男女の関係に首は突っ込まない方がいいかと思って、アルフレッドを諫めるようなことはしなかった。俺もこの事件の調査に追われてて、そもそも他の事を考える余裕はあまりなかったし。だから俺にとってのノアは綺麗だけどいつも昏い顔をしている子っていう印象だったんだ」
『あの日までは』とオルランドはノアを見つめて微笑みながら答えた。
「でも、あの卒業パーティーの日。初めて心から笑った君の顔を見て思ったんだ……『ああこんな風に笑える子だったんだ』って。そしてもっと君の色んな表情を見てみたいと思った」
「……実際にこの数週間で俺の色んな表情を見れたと思うけど。満足した?」
「全然! 貴族として毅然としている君も好きだし、自分の事を俺と言って、冒険者に憧れるちょっと困った君も……察しが悪いフリして俺に黙って寄り添ってくれる優しい君も。全部大好きだよ。もっともっと君の事が知りたい。だって、ノアはまだ秘密なことがいっぱいありそうだから」
(そんな人の事をからくり箱みたいに言って……)
ノアも予想していたことだが、ジョン・デンバーは面会に来たことはなく、アイシャの顔は知らないらしい。本人に似せる必要がなくなったので、後はどれだけミラの変装が14歳の孤児に寄せられるかにかかっている。
だが、危険なのは変わりないので、アイシャは即座に孤児院を離れてタイラー家へ密かに養子に出されることになった。
突然、孤児院を追い出される形になってしまったアイシャは、最初は孤児院から離れることを拒んでいたが、ノアからセシルの事情を話し、彼の写真を渡すとすんなりとタイラー家に行く事を承諾した。孤児院で幼い子ども達の面倒をたくさん見てきたアイシャだからこそ、病弱なセシルの事が気になって仕方ないようだ。
オルランド達が警戒する中、アイシャは速やかにタイラー家へと届けられた。そして、施設長にはデンバー家に養子として預けたい旨を連絡してもらった。返事は翌日早速届き、明日には迎えの馬車を寄越すとのことで、ミラの囮計画は慌ただしく準備が整えられていった。
「明日、ミラが出発するのと同時に、俺とギルド選抜の冒険者数名が追跡して行く事になった」
「いよいよ明日なんだね」
「ああ。俺がいない間無茶はするなよ?」
「わかってるよ」
「本当にわかっているのか?」
「心配性だな」
「心配にもなるさ。ノアは本当に何をするのかわからないから」
『まぁ、そこが面白いんだけどな』と続けるオルランドの横顔を見ていたノアが、今まで疑問に思っていた事を訊ねた。
「ねぇ……どうして俺の事が好きなの?」
「どうした急に……最初にチャールストン家に行った時に言っただろ。アルフレッドの婚約解消の時に見せた笑顔に惚れたって」
実際は『あの時の笑顔を自分にも向けて欲しい』云々と言っていた気がするが、彼の中ではそれは『惚れた』という表現だったようだ。
「本当にそれだけ?」
「最初はな。在学中も君の事は勿論認識していたよ、とても綺麗な子がいるなって。でもアルフレッドの婚約者だし、恋愛感情は当然持っていなかったけど。いつもアルフレッドに傷つけられていて、可哀そうだとも思っていた……でも、あまり男女の関係に首は突っ込まない方がいいかと思って、アルフレッドを諫めるようなことはしなかった。俺もこの事件の調査に追われてて、そもそも他の事を考える余裕はあまりなかったし。だから俺にとってのノアは綺麗だけどいつも昏い顔をしている子っていう印象だったんだ」
『あの日までは』とオルランドはノアを見つめて微笑みながら答えた。
「でも、あの卒業パーティーの日。初めて心から笑った君の顔を見て思ったんだ……『ああこんな風に笑える子だったんだ』って。そしてもっと君の色んな表情を見てみたいと思った」
「……実際にこの数週間で俺の色んな表情を見れたと思うけど。満足した?」
「全然! 貴族として毅然としている君も好きだし、自分の事を俺と言って、冒険者に憧れるちょっと困った君も……察しが悪いフリして俺に黙って寄り添ってくれる優しい君も。全部大好きだよ。もっともっと君の事が知りたい。だって、ノアはまだ秘密なことがいっぱいありそうだから」
(そんな人の事をからくり箱みたいに言って……)
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