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英雄は遅れてやってくる
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「人間、多少欠点がある方が愛着が湧くんだよ。完璧主義のあんたにはわからないかもしれないけどな……ぽんこつだからこそ支えたいって思う人の気持ちは」
「それは本気でわからないな。統治者は完璧であることが第一だ」
「それは違う。統治者に一番求められるのは、初代国王が戴冠式で宣言したとされる『国民の安全と福祉を考えて、公平かつ正当な政治を行う』こと……つまり、不正だらけで、民を危険に晒すお前が、一番なっちゃいけないものだ!」
「…………まぁ、君の躾は追々考えようノア。君が王太子妃になることは陛下も了承済みだ。それよりもまずは邪魔者の始末から先にやってしまおうか」
ノアへの説得を一旦諦めたらしいエドワードは、ノアと同じく床に蹲っているリリスへと歩み寄る。
「……リリス。さっきは冷たくしてごめんね。君の事は大切に思っているよ……心から」
「エドワード様……?」
リリスの顔を至近距離で覗き込み、エドワードは恐ろしい事を言い始める。
「僕のことを愛しているというのなら……僕の為に死んでくれないか?」
「え……?」
衝撃で言葉を失うリリスに、エドワードは微笑みを浮かべたまま告げる。
「どの道、色々と知ってしまったアルフレッドをこのままにしておけないだろう? だから彼を魅了して自分を刺し殺すように言うんだ。或いは逆でもいい。君がアルフレッドを刺してくれ。そして自殺してくれれば尚いい。愚かな心中ってことで片づけられるからね」
「……ッ」
(この男、どこまで下劣な……ッ)
「エドワード様……どうして、そんなことを……っ?」
「最初から君にはいずれ死んでもらうつもりだったさ。君は僕の事を知りすぎているからね。本当はもう少し長生きさせてあげたかったけど、ごめんね」
ちっとも謝っているようには見えない口調でそう言いながら、エドワードはアルフレッドに魔法をかけるようにリリスに囁く。しかし……
「い、嫌です……っ、エドワード様のお言葉でも、それは……だって、私はエドワード様と結婚できるって信じてここまで……っ」
「そんなこと一度も約束していないだろう。僕にはもうノアがいるんだ。君は邪魔なだけだよ……仕方がない。こうなったら……僕がやるしかないか」
エドワードは先ほど兵士が落とした剣を拾い上げて、リリスに向かう。
「い、いやっ、こんな、こんなのっ……!」
「ッ、兄上!」
リリスを庇うようにアルフレッドが彼の前に立ちふさがり、帯刀していた剣を抜く。
「ははっ。アルフレッド僕に剣を向けるのかい? いいよ。久々に相手をしてやろう」
エドワードは自信に満ちた笑みを浮かべて剣を振り下ろした。それをアルフレッドがなんとか受け止める。
しかし、優劣は明らかだった。アルフレッドは避けるか、受け止めるのに精一杯なのに対して、エドワードは必死にアルフレッドの様子を面白がって手を抜いている節がある。
「クッ……!」
必死にエドワードからリリスを守るアルフレッドだったが、その額には汗が浮かび、息が上がっていく。
そして……カランッ、という乾いた音が部屋の中に響いた。それはエドワードの斬撃を受け止めきれなかったアルフレッドが剣を落とした瞬間だった。
「これで終わりだ! アルフレッド!!」
「アルッ!!」
「ッ……!」
エドワードによってアルフレッドが切り殺される瞬間、その剣は颯爽と風の如く駆け込んできた一人の男によって止められる。
「ッ、誰だ!! 僕の邪魔をする奴は!」
「お前は……」
エドワードが激昂し、アルフレッドが目を瞠る中……ノアの心は歓喜と安堵に包まれる。
(ああ……良かった……)
ノアは、この部屋に入ってきた人物の顔を見て、心の緊張の糸が解けたように息を吐いた。
「すまないノア! 遅くなった」
「いいや……さいっこうにかっこいいタイミングだぜ! オルランド」
「それは本気でわからないな。統治者は完璧であることが第一だ」
「それは違う。統治者に一番求められるのは、初代国王が戴冠式で宣言したとされる『国民の安全と福祉を考えて、公平かつ正当な政治を行う』こと……つまり、不正だらけで、民を危険に晒すお前が、一番なっちゃいけないものだ!」
「…………まぁ、君の躾は追々考えようノア。君が王太子妃になることは陛下も了承済みだ。それよりもまずは邪魔者の始末から先にやってしまおうか」
ノアへの説得を一旦諦めたらしいエドワードは、ノアと同じく床に蹲っているリリスへと歩み寄る。
「……リリス。さっきは冷たくしてごめんね。君の事は大切に思っているよ……心から」
「エドワード様……?」
リリスの顔を至近距離で覗き込み、エドワードは恐ろしい事を言い始める。
「僕のことを愛しているというのなら……僕の為に死んでくれないか?」
「え……?」
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「……ッ」
(この男、どこまで下劣な……ッ)
「エドワード様……どうして、そんなことを……っ?」
「最初から君にはいずれ死んでもらうつもりだったさ。君は僕の事を知りすぎているからね。本当はもう少し長生きさせてあげたかったけど、ごめんね」
ちっとも謝っているようには見えない口調でそう言いながら、エドワードはアルフレッドに魔法をかけるようにリリスに囁く。しかし……
「い、嫌です……っ、エドワード様のお言葉でも、それは……だって、私はエドワード様と結婚できるって信じてここまで……っ」
「そんなこと一度も約束していないだろう。僕にはもうノアがいるんだ。君は邪魔なだけだよ……仕方がない。こうなったら……僕がやるしかないか」
エドワードは先ほど兵士が落とした剣を拾い上げて、リリスに向かう。
「い、いやっ、こんな、こんなのっ……!」
「ッ、兄上!」
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「ははっ。アルフレッド僕に剣を向けるのかい? いいよ。久々に相手をしてやろう」
エドワードは自信に満ちた笑みを浮かべて剣を振り下ろした。それをアルフレッドがなんとか受け止める。
しかし、優劣は明らかだった。アルフレッドは避けるか、受け止めるのに精一杯なのに対して、エドワードは必死にアルフレッドの様子を面白がって手を抜いている節がある。
「クッ……!」
必死にエドワードからリリスを守るアルフレッドだったが、その額には汗が浮かび、息が上がっていく。
そして……カランッ、という乾いた音が部屋の中に響いた。それはエドワードの斬撃を受け止めきれなかったアルフレッドが剣を落とした瞬間だった。
「これで終わりだ! アルフレッド!!」
「アルッ!!」
「ッ……!」
エドワードによってアルフレッドが切り殺される瞬間、その剣は颯爽と風の如く駆け込んできた一人の男によって止められる。
「ッ、誰だ!! 僕の邪魔をする奴は!」
「お前は……」
エドワードが激昂し、アルフレッドが目を瞠る中……ノアの心は歓喜と安堵に包まれる。
(ああ……良かった……)
ノアは、この部屋に入ってきた人物の顔を見て、心の緊張の糸が解けたように息を吐いた。
「すまないノア! 遅くなった」
「いいや……さいっこうにかっこいいタイミングだぜ! オルランド」
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