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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第3部《交錯する戦場》
2話 トリス王国第76代国王サザンカ・L・トリス
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トリス王国は大陸の国々の中でも特に歴史のある国である。
しかし、決して大国では無い。
それどころか大国であるミルミット王国やグリント帝国に比べると、その国土は地方貴族の領地と変わらないくらいの大きさである。
王都と小さな町と村がいくつかあるだけのトリス王国は、300年前の戦乱で滅亡の危機に晒されてだが、邪神を封印した勇者の仲間である剣聖(後の剣帝)が起こしたグリント帝国の属国となる事で今日まで存続する事が出来た。
トリス王国はグリント帝国の傘下にある国として貿易や税金などで帝国を優遇する必要がある。
しかし、グリント帝国もトリス王国を始めとする属国を積極的に保護し、支援して来た為、両国の関係は非常に良好だった。
今回の戦争でも、総戦力が約1500程度のトリス王国に代わりグリント帝国が多くの兵を出す事で、トリス王国の防衛力を落とさない様に配慮されていた。
そんなトリス王国の76代目となる国王、サザンカ・L・トリスは、臆病で威厳には欠ける反面、優しく温和な性格であり、国民に愛される王であった。
「陛下、大変でございます!」
慌てた様子の侍従長がサザンカの元に駆けてきた。
「ひゃ!な、何事だ!」
「魔境を監視していた兵から魔物の群れが迫っているとの報告が有りました」
「なんだと!」
「その魔物の群れは統制がとれており、我が国の近くで待機していると……
その様子からおそらく魔族に使役された魔物だと思われます」
「な、なんと言う事だ……れ、連合軍への連絡は⁉︎」
「すでに従魔を飛ばしております。
陛下……おそらく魔物は魔族軍の進軍と時を同じくして我が国へと攻め入って来ると思われます」
「ま、魔族と同時に…………連合軍の戦力を分断する狙いか?」
「おそらく……」
トリス王国の魔境は切り立った崖に阻まれており、軍勢が押し寄せる事が出来る地形では無い。
その為、トリス王国には連合軍の防衛戦力を置かず、他の進軍しやすい地形の国に割り当てられていた。
「陛下……」
サザンカは顔を青くし、恐怖に身体を震わせている。
「み、皆を集めよ」
「は、はい」
歴史あるトリス王国の王城の謁見の間には宰相や大臣などの要職に就く者、数は多くない貴族、そして王族が集まっていた。
「皆、状況は聞いていると思う」
サザンカは言葉を飾り立てる事なく、単刀直入に話し始めた。
集まっている者達の顔を見回して、全員が現状を理解している事を確認したサザンカは、話を続ける。
「現状、報告に有った魔物の数から、我が国の戦力では防衛する事は不可能だ。
そこで…………王都を放棄して、民達を率い帝国領へと避難する。
帝国との国境付近まで戦線を退げれば援軍と合流する事も可能だろう」
サザンカのその言葉を聞いた者達は衝撃を受けていた。
戦線を退げるという事はこの王都を魔物に蹂躙されると言う事だ。
サザンカは、この国が積み上げてきた歴史を捨て去ると言ったのだ。
「陛下!
それでは我が国は……我が国の歴史はどうなるのですか!」
サザンカは声を上げた貴族の目を見つめ、口を開く。
「貴公の言いたい事は分かる。
だが、ワシもこの国を……この国の歴史を誇りに思っておる」
「ならば!」
「しかし!
民の命は、その誇りとは比べ物にならぬ程に大切に思っておるのだ。
皆、歴史に目を曇らせてはならん。
過去を生きた先人の歴史より、大切な物があるであろう。
命が有ればそこから新しい歴史を作る事が出来るのだ。
我らの先祖も、歴史の為に滅んで欲しいなどとは願っていないだろう?」
サザンカに問い掛けられた貴族は、己の浅慮を恥じる事となった。
「ノアザミ」
「はい、父王陛下」
サザンカは15になったばかりの自らの息子を呼んだ。
「お前は民を率いて帝国へ向かいなさい」
「え?」
サザンカの言葉に驚きを返したノアザミは、いつも自信なさげでオドオドとした父が不思議な程に落ち着いている事に気が付いた。
「ち、父上はどうされるのですか」
「ワシはこの地に残る」
謁見の間を再び騒めきが包んだ。
だが、その騒めきもサザンカが軽く手を挙げた事ですぐに収まる。
「ロザン兵士長」
「此処に」
「兵を編成し、帝国へ向かう民を護衛せよ。
そして…………100名程で良い、部隊を1つ編成するのだ。
コレはワシと共に戦い死ぬ部隊だ。
若者を選ぶ事は許さぬ」
「父上!
何を仰っているのですか!」
「ノアザミ、ワシはこの国の王である。
ワシには民が逃げるまで、少しでも多くの時間を作る義務がある」
「しかし!」
「くどい!
直ぐに民に触れを出せ。
時間がない、急ぎ行動せよ。
これは王命である!」
サザンカの瞳に確かな決意の色を見たノアザミは、父に深々と頭を下げた。
その時、ノアザミはサザンカの足が恐怖にガクガクと震えそうなのを必死で堪えている事に気が付いたが、それを口に出す事はなく、民を避難させる為に謁見の間を飛び出して行った。
翌日、皆が慌ただしく行動する中、サザンカは侍女の手を借りながら鎧を着込んでいた。
荒事の苦手なサザンカには似合わない立派な鎧だ。
「ご立派です、陛下」
「ふふふ、世辞はよせ。
さて、手間を取らせたな、君も早く逃げなさい」
「陛下……………御武運を御祈り致します」
侍女はサザンカに深々と礼をして去って行った。
その後、自室を出たサザンカは広間へと向かった。
そこにはロザン兵士長によって選ばれた兵達がサザンカを待っていた。
皆、老いて執務や管理職、指導役になった兵達ばかりだ。
そんな兵の先頭に見知った顔を見つけた。
「ルドベキア」
ルドベキア・ブルーはロザンの前任の兵士長である。
現在は引退し、名誉兵士長として隠居していた男だ。
そして、サザンカの幼馴染でもある。
「また陛下と共に野山を駆ける日が来るとは思いませんでしたな!」
ルドベキアは満面の笑みで笑っていた。
サザンカは彼に微笑みを返すと、直ぐに顔を引き締めた。
そして、集まった兵に向かって告げる。
「皆、ワシらの目的は理解している事と思う。
皆にこの様な命令を下すワシは愚かな王であろう」
サザンカはもう1度、集まった兵の顔を見回す。
この場にいる老兵達の瞳には強い意志の光が見て取れた。
サザンカは居住まいを正し命令する。
「誇り高き我が兵達よ、愛する民の為、命を捨てて戦え!」
しかし、決して大国では無い。
それどころか大国であるミルミット王国やグリント帝国に比べると、その国土は地方貴族の領地と変わらないくらいの大きさである。
王都と小さな町と村がいくつかあるだけのトリス王国は、300年前の戦乱で滅亡の危機に晒されてだが、邪神を封印した勇者の仲間である剣聖(後の剣帝)が起こしたグリント帝国の属国となる事で今日まで存続する事が出来た。
トリス王国はグリント帝国の傘下にある国として貿易や税金などで帝国を優遇する必要がある。
しかし、グリント帝国もトリス王国を始めとする属国を積極的に保護し、支援して来た為、両国の関係は非常に良好だった。
今回の戦争でも、総戦力が約1500程度のトリス王国に代わりグリント帝国が多くの兵を出す事で、トリス王国の防衛力を落とさない様に配慮されていた。
そんなトリス王国の76代目となる国王、サザンカ・L・トリスは、臆病で威厳には欠ける反面、優しく温和な性格であり、国民に愛される王であった。
「陛下、大変でございます!」
慌てた様子の侍従長がサザンカの元に駆けてきた。
「ひゃ!な、何事だ!」
「魔境を監視していた兵から魔物の群れが迫っているとの報告が有りました」
「なんだと!」
「その魔物の群れは統制がとれており、我が国の近くで待機していると……
その様子からおそらく魔族に使役された魔物だと思われます」
「な、なんと言う事だ……れ、連合軍への連絡は⁉︎」
「すでに従魔を飛ばしております。
陛下……おそらく魔物は魔族軍の進軍と時を同じくして我が国へと攻め入って来ると思われます」
「ま、魔族と同時に…………連合軍の戦力を分断する狙いか?」
「おそらく……」
トリス王国の魔境は切り立った崖に阻まれており、軍勢が押し寄せる事が出来る地形では無い。
その為、トリス王国には連合軍の防衛戦力を置かず、他の進軍しやすい地形の国に割り当てられていた。
「陛下……」
サザンカは顔を青くし、恐怖に身体を震わせている。
「み、皆を集めよ」
「は、はい」
歴史あるトリス王国の王城の謁見の間には宰相や大臣などの要職に就く者、数は多くない貴族、そして王族が集まっていた。
「皆、状況は聞いていると思う」
サザンカは言葉を飾り立てる事なく、単刀直入に話し始めた。
集まっている者達の顔を見回して、全員が現状を理解している事を確認したサザンカは、話を続ける。
「現状、報告に有った魔物の数から、我が国の戦力では防衛する事は不可能だ。
そこで…………王都を放棄して、民達を率い帝国領へと避難する。
帝国との国境付近まで戦線を退げれば援軍と合流する事も可能だろう」
サザンカのその言葉を聞いた者達は衝撃を受けていた。
戦線を退げるという事はこの王都を魔物に蹂躙されると言う事だ。
サザンカは、この国が積み上げてきた歴史を捨て去ると言ったのだ。
「陛下!
それでは我が国は……我が国の歴史はどうなるのですか!」
サザンカは声を上げた貴族の目を見つめ、口を開く。
「貴公の言いたい事は分かる。
だが、ワシもこの国を……この国の歴史を誇りに思っておる」
「ならば!」
「しかし!
民の命は、その誇りとは比べ物にならぬ程に大切に思っておるのだ。
皆、歴史に目を曇らせてはならん。
過去を生きた先人の歴史より、大切な物があるであろう。
命が有ればそこから新しい歴史を作る事が出来るのだ。
我らの先祖も、歴史の為に滅んで欲しいなどとは願っていないだろう?」
サザンカに問い掛けられた貴族は、己の浅慮を恥じる事となった。
「ノアザミ」
「はい、父王陛下」
サザンカは15になったばかりの自らの息子を呼んだ。
「お前は民を率いて帝国へ向かいなさい」
「え?」
サザンカの言葉に驚きを返したノアザミは、いつも自信なさげでオドオドとした父が不思議な程に落ち着いている事に気が付いた。
「ち、父上はどうされるのですか」
「ワシはこの地に残る」
謁見の間を再び騒めきが包んだ。
だが、その騒めきもサザンカが軽く手を挙げた事ですぐに収まる。
「ロザン兵士長」
「此処に」
「兵を編成し、帝国へ向かう民を護衛せよ。
そして…………100名程で良い、部隊を1つ編成するのだ。
コレはワシと共に戦い死ぬ部隊だ。
若者を選ぶ事は許さぬ」
「父上!
何を仰っているのですか!」
「ノアザミ、ワシはこの国の王である。
ワシには民が逃げるまで、少しでも多くの時間を作る義務がある」
「しかし!」
「くどい!
直ぐに民に触れを出せ。
時間がない、急ぎ行動せよ。
これは王命である!」
サザンカの瞳に確かな決意の色を見たノアザミは、父に深々と頭を下げた。
その時、ノアザミはサザンカの足が恐怖にガクガクと震えそうなのを必死で堪えている事に気が付いたが、それを口に出す事はなく、民を避難させる為に謁見の間を飛び出して行った。
翌日、皆が慌ただしく行動する中、サザンカは侍女の手を借りながら鎧を着込んでいた。
荒事の苦手なサザンカには似合わない立派な鎧だ。
「ご立派です、陛下」
「ふふふ、世辞はよせ。
さて、手間を取らせたな、君も早く逃げなさい」
「陛下……………御武運を御祈り致します」
侍女はサザンカに深々と礼をして去って行った。
その後、自室を出たサザンカは広間へと向かった。
そこにはロザン兵士長によって選ばれた兵達がサザンカを待っていた。
皆、老いて執務や管理職、指導役になった兵達ばかりだ。
そんな兵の先頭に見知った顔を見つけた。
「ルドベキア」
ルドベキア・ブルーはロザンの前任の兵士長である。
現在は引退し、名誉兵士長として隠居していた男だ。
そして、サザンカの幼馴染でもある。
「また陛下と共に野山を駆ける日が来るとは思いませんでしたな!」
ルドベキアは満面の笑みで笑っていた。
サザンカは彼に微笑みを返すと、直ぐに顔を引き締めた。
そして、集まった兵に向かって告げる。
「皆、ワシらの目的は理解している事と思う。
皆にこの様な命令を下すワシは愚かな王であろう」
サザンカはもう1度、集まった兵の顔を見回す。
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