不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
198 / 2,091
剣鬼 闘技祭準備編

暴鬼 その1

しおりを挟む
「おおおおおおっ!!」


暴れ牛のようにジンは3階建ての建物に突進し、壁を崩壊して中に入り込む。内部から悲鳴が響き渡り、慌ててジャンヌとロウガは駆けつけようとしたが、直後に建物が傾き始める。


「そんな馬鹿なっ!?」
「建物が……崩れる!?」



――オオオオオオッ……!!




獣の唸り声のようなジンの叫び声が響き渡り、建物の支柱を破壊したのか、徐々に建物が崩れ始めれる。危険を察したジャンヌとロウガはその場を離れ、やがて街道方面に向けて建物が倒れこむ。


「あ、有り得んっ!!」
「中の住民は……!?」


建物が倒れこむ光景にジャンヌとロウガは唖然とするが、やがて破壊された建物の内部からジンが姿を現し、その手には人間だったと思われる肉塊が握りしめられていた。


「うおおおおおおっ!!」
「ば、化者か!?」
「くっ……このっ!!」
「いかん!!近づくなジャンヌ!!」


住民を肉塊へと変り果てるまで痛めつけたジンに対し、ジャンヌは怒りを抱いて駆け出す。しかし、ジンは自分に向かい来る彼女に対して左手に掴んでいた肉塊を構える。


「ふんっ!!」
「なっ……くぅっ!!」


投げ込まれた肉塊に対してジャンヌは武器で切り裂く事も出来たが、相手が先ほどまで生きていた人間だと意識すると武器を振り払えず、その隙を逃さずにジンは足元の瓦礫を蹴り飛ばす。


「うがぁっ!!」
「きゃああっ!?」
「ジャンヌ!!」


無造作に繰り出された蹴りに瓦礫が衝突した瞬間、まるで散弾のように破片が散らばり、ジャンヌは咄嗟に両手の剣で防ごうとしたが、全てを防ぐことは出来ずに脇腹に命中してしまう。そのまま彼女は後方に吹き飛び、地面に倒れこむ。


「う、ぐうっ!?」
「くっ……小童がぁっ!!」
「があっ!!」


自分の剣の教え子が吹き飛ばされる姿にロウガは剣を抜き、負傷した状態で駆けだす。そんな彼に対してジンは肉塊を今度は盾としてではなく、投擲する。


「舐めるなっ!!」


ロウガは投げ飛ばされた肉塊に視線を向け、一瞬だけ眉を顰めるが刃を振り落とし、空中で二つに切り裂く。罪もない住民の死体を切り裂く事に抵抗感がないわけではないが、目の前に存在する化物を殺さない限りは被害が拡大してしまう。内心で謝罪しながらもロウガはジンの元に向かい、剣を突き刺す。


「刺突!!」
「うがぁっ……!!」


肉塊を放り投げたジンは特に動きはなく、ロウガは隙だらけの胸元に剣を突き刺す。しかし、先ほどのジャンヌのように彼は木刀で金属の塊を突き刺したような感覚を覚え、攻撃を仕掛けたロウガの腕が振るえる。刃は皮膚の表面を切りつけた程度で致命傷には至らない。


「ば、馬鹿なっ……」
「がぁっ!!」
「ぐおっ!?」
「ろ、ロウガ様……!?」


ジンはロウガの首元を掴み、そのまま片腕のみで持ち上げる。そのまま絞め殺す気なのか指に力が加わり、ロウガは必死に振り払おうとするがどれだけ暴れてもびくともしない。


「がはぁっ……!?」
「ふううっ!!」


鼻息を荒くジンはロウガを睨みつけ、その瞳を見たロウガは目を見開き、過去に自分を破った吸血鬼の事を思い出す。仲間を殺し、返り血を全身に浴びながらも嬉々とした表情で次々と戦場の人間を殺害する吸血鬼の姿と重なり、ロウガは失いかけた意識を取り戻す。


「があああっ!!」
「ロウガ様!?」
「ぐがぁっ!?」


ロウガは咄嗟に剣を自らの足に突き刺し、剣を手放して傷口から迸る血を掌で掴み、そのままジンの顔面に放つ。予想外の行動に反応が遅れたジンは両目にロウガの血を浴びてしまい、そのまま狂ったように悲鳴を上げる。


「ぐあああああっ!?」
「ぐふぅっ……思い知ったか、小童がぁっ!!」


目潰しに成功したロウガは笑みを浮かべ、そのまま瓦礫の中で倒れこむ。既に限界を迎えており、意識を失う。その間にもジンは目元を覆い隠しながら無茶苦茶に走り回り、やがて足を瓦礫に挟ませて転がり込む。


「うううっ……ああっ!!」


癇癪を起した子供のようにジンは泣き叫び、目元の血を手で拭う。攻撃の好機である事は理解しているが、ジャンヌは脇腹に刺さった破片を引き抜き、回復薬を注ぐ。


「ぐぅうっ……!!」


傷口に回復薬を流し込む事で殺菌と怪我の治療を行い、どうにか骨や内臓までには至ってはいなかったのか痛みはあるがジャンヌは立ち上がる事は出来た。しかし、時間を掛け過ぎたのかジンは既に手元から両手を離し、自分を追い込んだロウガを睨みつける。


「ぐぎぃいいいっ!!」
「いけないっ!!」


歯を食いしばりながら倒れているロウガに向けて駆け出すジンにジャンヌは急いで追いかけようとした時、彼女の背後から突風が発生し、そのままジンの足元をすくいあげるように身体を浮上させた。


「があっ!?」
「えっ!?この剣は……」
「俺だよ!!」


派手に転倒したジンに対して上空から近づく影が存在し、そのまま日本刀を構えた「シュン」は頭上からジンの顔面に向けて剣を振り下ろした。
しおりを挟む
感想 5,096

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。