不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
199 / 2,090
剣鬼 闘技祭準備編

暴鬼 その2

しおりを挟む
「うらぁっ!!」
「ぎゃあっ!?」
「シュン……さん!?」


上空から姿を現した瞬は日本刀の刃に風の魔力を纏わせ、そのままジンの顔面を振り落とす。シュンの扱う魔法剣は風の力を刀身に纏わせる「嵐剣」と呼ばれており、ジンの左目を風の刃が切り裂く。


「ぐぎゃああああっ!?」
「へっ……化物でも眼球までは柔らかいんだなっ!!」


片目を切り裂かれたジンは悲鳴を上げ、そのまま目元を抑えながら跪き、その隙を逃さずにシュンは倒れているロウガを肩に抱えて駆け抜ける。奇襲が成功したとはいえ、ジンから異様な敬拝を感じ取ったシュンは仲間の救助を優先し、その場を急いで離れる。


「ジャンヌ!!どうなってやがる!!なんだあの化物は!?」
「えっ……し、知らずにやってきたのですか?」
「市場の方がうるせえから何事かと思って来てみたら、お前等が戦ってたのを見て加勢してやったんだよ!!こいつは何なんだ!?」


シュンがこの場に訪れたのはロウガと同じく偶然であり、ジンの正体をジャンヌに問い質す。しかし、彼女が答える前にジンは右目を抑えながら立ち上がり、怒りの咆哮を放つ。


「おぁああああっ!!」
「きゃっ!?」
「なんて声を出しやがる……まるで獣だな」


ロウガを抱えたままシュンは剣を構え、刀身に風を纏わせたまま相手の出方を待つ。正確にはジンの放つ威圧に迂闊に近づけないという方が正しく、シュンは後方に倒れているガロに視線を向ける。


(あの馬鹿……力の差も分からずに喧嘩売りやがったな。くそ、おっさんをこんな目に遭わせた奴にお前が勝てるはずがないだろ)


肩に担いでいるロウガに視線を向け、シュンは溜息を吐く。右目の視界を封じる事に成功はしたが、そのせいでジンの目標がシュンに切り替わり、即座にジンは足元の瓦礫を蹴り飛ばす。


「うがぁっ!!」
「くそっ……吹き飛べっ!!」


サッカーボールのように瓦礫を蹴り飛ばしてくるジンに対し、シュンは片手で剣を振り抜いて「風の斬撃」で瓦礫を切り裂く。闘技場でレナとの試合で使用した彼の剣技であり、風の精霊の力も使用しているので瓦礫程度ならば軽く吹き飛ばせる。しかし、ジンは1メートルを超える巨大な瓦礫を持ち上げ、そのまま跳躍を行う。


「うおおおおおっ!!」
「マジかよ!?」
「逃げてっ!!」


巨大な瓦礫を両手に抱えた状態でジンは頭上からシュンに接近し、そのまま瓦礫を叩きつけようとする。流石に今度は防ぎきれないと判断し、シュンはロウガを抱えたまま剣を地面に突き刺す。


「このっ!!」
「きゃあっ!?」
「おあっ……!?」


剣を突き刺した瞬間に刀身に纏っていた風の魔力が衝撃波のように拡散し、シュンの身体を後方に吹き飛ばす。その結果、ジンの振り下ろした瓦礫は地面に激突する。どうにか直撃を避ける事には成功したが、シュンはロウガを抱えた状態で背中から地面に着地してしまう。


「いでででっ!?」


背中を強打するがどうにか無事に攻撃を回避する事には成功し、シュンはロウガの身体を荒っぽく地面に横たわらせる。敵の狙いが自分である以上、ロウガは抱えていない方が安全だと判断し、そのまま砂煙に飲み込まれたジンの様子を伺う。


「ちっ……面倒かけやがって、いつもの威勢はどうした」
「ううっ……」
「ぐうっ……」
「うおっ!?お前も居たのかよ……いつの間にかここまで飛ばされていたのか」


シュンは背後からも呻き声を耳にして振り返ると、どうやらガロが倒れている場所まで吹き飛ばされたらしく、一応は傷の具合を確認する。


「怪我はしてるが……別に死ぬような傷じゃねえな。唾でも付けときゃ治るな」
「シュンさん!!前を見てください!!」
「どうした……うおっ!?」


ジャンヌの言葉にシュンは前方に視線を向けようとした瞬間、地面に衝撃が走る。何事かと彼はジンの方向に視線を向けると、そこには右拳を地面に振り下ろしたジンの姿が存在した。


「ぐおおおおおおっ!!」
「おいおい……嘘だろおいっ!!」
「嘘……!?」


地中に右拳を貫いたジンが腕を引き抜いた瞬間、地面に亀裂が発生し、シュンが立っている場所まで到達する。あまりにも馬鹿げた怪力にシュンは動揺を隠せず、足元に近づいてくる亀裂に対して彼はガロとロウガを担いで跳躍する。


「くそっ!!何時までも面倒を掛けんじゃねえよ!!」
「ぐはっ!?」
「ぎゃあっ!?」


地割れに飲み込まれる前に二人を安全な場所に移動させると、シュンは建物の路地裏を発見し、そこに二人の身体を放り投げる。荒っぽい方法だが今は手段を選ぶ暇はなく、シュンは剣を握りしめてジンに風の斬撃を放つ。


「これでも喰らいやがれっ!!」
「うがっ!?」


振り抜かれた刃から三日月状の風刃が放たれ、ジンの右腕に衝突する。しかし、精霊の力を借りて作り出した風刃さえも傷を与える事は出来ず、ジンの右腕は無傷だった。


「がああああっ……!!」
「嘘だろおいっ!?」


風の斬撃を物ともせずに近づいてくるジンに対し、シュンは慌てて場所を移動させて距離を取る。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。