不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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剣鬼 闘技祭準備編

対峙

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「レナ……貴方、何時から入れ替わっていたの?」
「少し前からだよ。この城は前に忍び込んだ事もあるから入るのはそんなに苦労しなかったよ」


シズネが戸惑いながら尋ねると、レナは彼女が訪れる前にフヨと呼ばれる少年に変装し、城内に忍び込んだことを伝える。背格好が似通っていた事が幸いし、スラミンの擬態の能力で顔面を変えていた事から無事に侵入を果たし、王妃の側近として振舞いながらシズネと王妃のやり取りを見届けていたのである。


「くっ……どうして誰も気づかなかった!!」
「えっ!?だ、だって……」
「止めなさい」


王妃の傍に控えていた青年が他の側近を怒鳴りつけるが、それを王妃は制止する。この場に存在した人間全員がレナの存在に気付かなかった以上、誰も責める事は出来ない。


「リク、貴方は普段は冷静なのに動揺すると頭に血が上る傾向があるわね」
「も、申し訳ありません……!!」
「反省は後にしなさい。今は折角ここまで訪れてきてくれた王子様を丁重に出迎えなさい」
「どの口が言うんだよ」


レナは退魔刀を肩に乗せながら王妃と向かい合い、直に顔を合わせるのは初めてのため、内心は緊張していた。実際に目の当たりした王妃は彼の予想に反して随分と若々しく、年齢的にはアイラやマリアとそれほど変わらないはずだが、下手をしたら森人族の血を継いでいるアイラよりも若く見える。

流石に少女という言葉は不釣り合いだが、それでも実年齢からは想像できない若さを保ち、最初に王妃を見た時はレナは噂に聞いていた王妃とは気づけなかった。本当は森人族なのではないかというほどに人間離れした美貌と若々しさを誇り、正体さえ知らなければ見惚れていたかも知れない。


「王妃様……で、いいのかな。あんたに聞きたいことがあるんだけど!!」
「貴様!!王妃様に向かってなんて口を……ぐあっ!?」
「邪魔」


周囲に控えていた兵士の一人が激高してレナに不用意に近づいた瞬間、身体に強い衝撃が走り、壁際まで吹き飛ぶ。その光景に誰もが呆気に取られ、殆どの人間が兵士が自分から吹き飛んだようにしか見えなかったが、実際の所はレナが大剣を横薙ぎに振り払い、兵士を殴りつけて吹き飛ばす。レナの行動を視認出来たのはシズネと王妃の側近の中ではリクだけであり、それ程までに無駄がなく素早い攻撃動作だった。


「……今、ここで争う気はないよ。俺はシズネを返してくれればそれでいい。だから大人しく返してくれない?」
「随分と勝手なことを言うのね。貴方達のせいで私がどれほど迷惑を掛けられたと思っているの?」
「それなら……ここで死にたいのか?」


レナの言葉に王妃は余裕の態度を保ったまま返事を行うと、レナは退魔刀の刃先を王妃に構えて睨みつける。そんな彼の行動に危機感を抱いた側近達が王妃を守る為に動く。


「王妃様!!お下がりください!!」
「ここは我らが!!」
「止めておきなさい」


自分を守る為に武器を構えようとした側近達に王妃は止め、彼女は態度を崩さずにレナに質問する。


「貴方達をここで見逃せば私に何の得があるのかしら?今ここで貴方達を殺せば邪魔者が二人も消えるのよ……こんな好機を黙って見逃せと言うの?」
「別にあんたと取引をするつもりはない。邪魔をするならあんたを殺す……そう言っているだけだよ」
「レナ、貴方……」


王妃の言葉に対して堂々とレナは言い返すと、シズネが戸惑ったように彼の顔を見る。この時、彼女はレナの赤色の瞳が妙に輝いているように感じ、周囲の人間もレナに威圧されるように黙り込む。


「綺麗な瞳ね、特に赤色というのが気に入ったわ。そのまま目玉をくりぬいて飾りたいぐらいよ」
「……それは勘弁してほしいな」


しかし、王妃だけはレナの威圧を物ともせずに話しかけ、あくまでも自分が優位的な立場である事を証明するように態度を崩さない。そんな彼女の不気味なまでの余裕にシズネは訝しみ、この状況下でも王妃が余裕を保てる理由を探る。


(どういう事……?私一人ならともかく、こんな子供達にレナを止められると思っているの?)


シズネの知る中でもレナは剣士としての腕前は非常に高く、しかも剣鬼としての能力を持っている。この場に存在する兵士や側近は王妃を守る人間の中でもより優れた者達で構成されているのだろうが、それでもレナに勝る人間が居るとは考えられない。


(あの余裕は空威張りだと言うの?いえ、この女は油断できない。この状況でも何か奥の手を隠している。でも、一体何だと言うの?)


一貫として変わらぬ王妃の態度にシズネは不安を煽られ、一体彼女が何を考えているのか理解できず、明らかに不利な状況にも関わらずに自分の身を守る術があるかのように振舞う王妃の行動に理解できなかった。


「それで、返答は?俺達をこのまま見逃すか、それともここで死ぬか……どっちがいい?」


だが、シズネの不安を掻き消すかのようにレナは王妃に対して退魔刀を構えたまま質問を行い、彼の言葉に王妃は返答する。


「……駄目ね。やっぱり、貴方達はここで殺す事に決めたわ」
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