不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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放浪編

閑話 〈その頃、冒険都市では……〉

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――時刻はレナが監獄都市に送り込まれたばかりの頃に遡り、地竜の襲撃によって荒れ果てた冒険都市では住民の避難活動が行われていた。救助を行っているのは王国軍であり、指揮は大将軍のミドルが行う。


「ミドル様!!北の地区の住民の救助は終了しました!!これより、第一から第三部隊は他の地区の救援に向かわせます!!」
「ああ、頼んだよ」
「ミドル様、牙竜の冒険者が協力を願い出ていますが、いかがいたしましょうか?」
「それは心強い。有難く協力を受け入れようじゃないか」
「分かりました!!」


次々と訪れる伝令の兵士達にミドルは指示を与え、紅色の槍を握り締めながら完全に死に絶えた地竜の死骸を覗く。大勢の兵士達が瓶に入った水を地竜の死骸に流し込み、岩石の外殻を軟化させて剥ぎ落す。ゴーレムやガーゴイルの外殻と同様に地竜の外殻は水を浴びると脆くなり、さらに剥がれ落ちた外殻は農作物を育てる際の良い肥料になるため回収を行う。


「ミドル様、都市中を捜索しましたがやはりマリアを含め、氷雨の冒険者の姿が見当たりません。恐らくは既に退去したかと……」
「そうか……マリアは転移魔法を行えると聞いている。既に逃げ出したんだろう」
「どうしますか?捜索の範囲を広げてもう一度探し出しますか?」
「いや、止めておこう。今は住民の救助活動に集中しろ。一人でも多くの人間を救うんだ」
「はっ!!」


ミドルは部下に指示を与えると崩壊した街の景色を見て眉をしかめ、このような事態が陥る事は予想はしていたとはいえ、それでも罪もないに街の住民に被害を与えた事に罪悪感を抱く。


(この街はもう都市として機能は出来ないかもしれない……だが、王妃様は確かに彼等を助けると約束してくれた)


王国の大将軍としてミドルは民衆を守る立場にあり、今回の王妃の立てた作戦に対して思う所はあった。しかし、王妃の命令ならば彼は決して逆らわず、彼女のためならば情に流されずに実行に移す。例え、自分が間違った行為をしていると自覚してもミドルは王妃の命令に従う。


(さて……そろそろ頃合いか)


ミドルは背後に振り返るとミスリル製の織の中に閉じ込められた「キラウ」に視線を向け、彼女は現在魔法が使用できないように全身を鎖で拘束され、口元には布を押し込んだ状態で口封じされた状態で横たわっていた。ミドルが顔を向けるとキラウは憎々し気な表情を浮かべ、彼を睨みつける。


「ふぐっ……んぅっ!!」
「大人しくしてください。貴方はまだ殺さないように王妃様から命令されています」
「んぐぐっ……!!」
「魔法を使おうとしても無駄ですよ。その首輪がある限り、貴方は我々には逆らえない」


キラウの右腕には「神器」の一つである「リング」と呼ばれる腕輪が装着されており、こちらは元々は獣人国の囚人闘士であるタザンに取り付けられた足枷と同様に対象の自由を奪う道具だった。こちらの神器は種類が5つも存在し、首、両腕、両足の5つのリングが存在し、その内の2つをタザンとキラウに取り付けられていた。


「その神器が装着している限り、貴方は王妃様には逆らえない。それはよくご存じのはずでしょう?」
「うぐっ……!!」
「安心してください、今は貴方を殺すつもりはありません。近い将来、きっとマリアは王妃様の命を狙う。そのためにはこちらも戦力を整える必要があるので貴方は殺しません」


現在の王国には3人の大将軍が存在するが、その内の1人は行方不明、もう1人はマリアと接触した節があり、本当に王妃に忠誠を誓っているのはミドルだけである。王妃の傍には常に特殊能力を持つ側近が控えているが、それでも強者揃いの氷雨の戦力に対抗するにはキラウという存在は必要不可欠だった。


「さて……僕はそろそろ失礼させてもらいます。ああ、それと王妃様からの言伝を言い忘れていました。『心残りを残さないように母親の供養はちゃんと済ませておきなさい』……以上です」
「……!?」


母親という単語にキラウは目を見開き、彼女はハヅキがこの場所で死んだ事を知らず、一体どういう意味なのかと必死にミドルに問いただそうとしたが、彼は無常にも何も伝えずに立ち去った――





-――この数日後、冒険都市の住民は一時的に王国の軍隊が保護することが決まり、遂に王妃はマリアが長い年月を費やして支えてきた冒険都市さえも手中に収めてしまう。
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