不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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最終章 王国編

革命団の誘導

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――時刻は遂に作戦の開始時間の30分前を迎え、革命団はそれぞれが最終準備を整える。城下町を巡回する兵士を攪乱するために街中に存在する廃屋に人員を配置し、家事を引き起こす用意を行う。そして民衆を扇動するために城下町で最も人目が目立つ噴水広場にて演説を行う。


「皆、聞いてくれ!!僕は過去にナオ姫が率いたヴァルキュリア騎士団に命を救われた者だ!!そしてこの場に居る彼女達は元ヴァルキュリア騎士団の女騎士達だ!!」
「どうか話を聞いて下さい!!皆さんのお力を貸してください!!」
「お願いします!!私達の話を聞いて下さい!!」
「何だ何だ?」
「ヴァルキュリア騎士団だって!?」
「おいおい、何が始まるんだ?」


噴水広場には大勢の人間が集まり始め、事前に巡回の兵士が邪魔しないように革命団の人員が配慮し、しばらくの間は兵士達の邪魔を受けられずに済む。コタロウは十分に人間が集まったのを確認すると、大勢の人間の前で演説を開始した。


「君達も知っての通り、明日を迎えればこの国の正統王位継承者であるナオ姫が処刑されてしまう!!それを黙って見ているつもりか!?あの方は本来はこの国の王となる人間なんだぞ!!」
「そ、それは……」
「でもよ、王女様が国王様の命を狙ったんだろ!?」
「それは違う!!姫様は嵌められたんだ、この国を陥れようとする悪党に姫様は罠に掛かったんだ!!考えてみろ、あの方は命を懸けて王国を壊滅の危機に陥れようとした腐敗竜を討伐したのだぞ!?そんな御方が国王様を暗殺しようなどと考えるのか!?」
「確かにおかしいよな……」
「俺、あの時は冒険都市に居た……そして王女様が聖剣を使ってあの化物を殺すところを見てたぞ」


民衆は女騎士の話を聞いて疑問を抱き始め、そもそもナオが養父である父親を殺す動機がない。それに命を懸けて大勢の人民を危険に晒した腐敗竜を討伐したナオが国王を殺すとは考えにくく、元々彼女を慕っていた人間達も革命団の言葉に賛同を示す。


「けどよ、それなら一体誰がナオ姫様を利用して国王様を殺そうとしたんだ!?」
「そうよそうよ!!お姫様じゃなければ誰が国王様の命を狙ったというのよ!!」


コタロウは事前に民衆に紛れさせていたサクラ(仕掛け人)を使い、民衆が疑問を抱ている事を敢えて質問させる。その質問に対してコタロウは緊張を覚えながらも堂々と宣言した。


「国王の暗殺を計画した人物は判明している。それは……ナオ姫がいなくなれば正式に王位継承権を引き継ぐ事が出来る第一王子様を生み出した王妃だ!!」
「お、王妃様だって!?」
「何を言ってるんだ!!どうして王妃様がそんな事を……」
「だが、それ以外に考えられない!!国王様は温厚で人柄も良く、決して誰かに恨まれる人間ではない!!しかし、王妃は自分の息子を王位継承者にするためにナオ姫を処刑するために罠に嵌めたんだ!!考えても見ろ、この処刑で一番得をするのは一体誰かを!?」
「け、けど……ナオ姫以外にも二人の王女様がまだ残っているじゃないか!?」
「実の妹である二人の王女様がナオ姫を罠に嵌めるというのか?王女様達の仲の良さは一般にも知れ渡っているだろう?それに二人の王女様は王位継承権は与えられていない!!」
「た、確かに……」
「まさか本当に……」


王妃が暗殺の計画犯という言葉に民衆は半信半疑だったが、コタロウの話を聞くうちに確かにナオの妹達が彼女を狙う理由は薄く、代わりにナオの次に王位を継承する権利を持つ第一王子の母親である王妃が怪しく感じられた。それでも王妃は表向きは国王を支える良妻賢母として振舞っていたため、王妃が暗殺犯といわれても信じられない者達も居た。


「それでも王妃様が国王様の命を狙うなんて考えられない!!あの人はな、この城下町の孤児院に多額の援助金を渡すように進言してくれたんだぞ!?そのお陰でこの街の孤児院の子供達はちゃんとした教育を受けて立派に育っている!!そんな優しい人がどうして国王様を狙うんだ!!」
「そうだそうだ!!王妃様のお陰で俺達の生活は一気に楽になったんだ!!お前達の言う事なんか信じられるか!!」
「出鱈目を言うんじゃないわよ!!」


王妃が黒幕だと告げる革命団に対して民衆の中には激しく反発する人間も存在し、予想以上に王妃に心酔する人間が多い事にコタロウは内心焦る。もうそろそろ時間が経過すれば兵士が訪れるのは間違いなく、どうにかして彼等を説得する必要があった。

恐らく王妃もこのような事態を想定していたのは間違いなく、民衆の支持を得られるように王都の民の生活を調査して彼等が暮らしやすい環境を作り出したのだろう。そのために革命団の予想よりも王妃を指示する民衆も多い。だが、そんな彼等の前にはっきりと王妃を非難する者達が現れる。


「生活が楽になっただと!?それはお前達だけだろうが!!」
「な、何だお前らは!?」
「俺達は冒険者だ!!あの王妃の命令のせいでこっちは仕事が上がったりなんだよ!!」


噴水広場に100人を超える冒険者の集団が現れ、彼等を見てコタロウは事前に連絡を取り合っていたこの城下町の冒険者が協力してくれた事に感謝する。彼等は王妃に不満を抱き、自分達がどのような扱いを受けているのかを話す。


「あの王妃はな、氷雨のギルドマスターのマリアさんと敵対しているんだよ!!この間の冒険都市の事件でマリアさんが行方不明になったのも王妃の仕業に間違いねえ!!」
「な、何の話をしているんだ!?どうして冒険者のあんたらがここに……」
「王妃は俺達が何もいないのにギルドに兵士を送り込んで仕事を制限したんだよ!!お陰でこっちは商売あがったりだ!!」
「そうだ!!仕事を引き受けられないせいで金も手に入らなくてこっちは宿を追い出されそうなんだよ!!しかも毎日毎日兵士どもがギルドに入り浸っておちおちと休む事も出来ねえ……俺達は罪人のように扱いやがって!!」
「そ、そんな事を言われても……」


転移したマリアの居場所が掴めなかった頃、王妃は警戒して王都の冒険者ギルドに王国兵を送り込み、彼等の冒険者活動を停止してしまう。マリアとこの街の冒険者が接触しないようにしたのだろうが、そのせいで城下町の冒険者は仕事を取り上げられて不満を抱く。


「俺達は月にいくら稼いでいると思ってる!?あの王妃が寄越した補助金だけじゃ生活も出来ねえんだよ!!こっちは育ちざかりのガキが5人も居るってのによ!!」
「俺は酒場のツケがたまってんだ!!」
「私なんて折角新しい杖を購入したのに使う機会がないのよ!?」
「い、いや……そんな事を俺達に言われても本当に困るんだけど」


一応は冒険者達が活動停止期間の間は補助金も支払われていたが、高ランクの冒険者は月に莫大な資金を稼ぐため、王国が支払う補助金程度では生活が成り立たずに不満を抱く。それに高ランク以外の冒険者も仕事を引き受けられない事に苛立ちを感じていたらしく、どうして自分達がこのような扱いを受けなければならないのか我慢ならなかった。

仕事を受けられないばかりではなく、まるで犯罪者のように兵士達に見張られる生活というのは冒険者にとっては大きなストレスを感じていた。彼等の仕事の多くは一般人からの依頼のため、彼等の仕事を引き受ける事で冒険者達はこの街を支える事に貢献していると考えていた。それにも関わらずに理由も話さずに兵士達が自分達のギルドに押し入り、まるで犯罪者のように見張る生活に嫌気が差し、遂に不満が爆発した。
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