不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
604 / 2,091
外伝 ~ヨツバ王国編~

犯罪者の焼印

しおりを挟む
「王女はそこだ!!殺せっ!!」
「死ねっ!!」
「え、えっ!?」
「ティナ様、下がって!!」


エリナに庇われているティナは何が起きているのか分からずに混乱するが、その間にも部屋の中に入り込んできた暗殺者たちは武器を構えた。だが、彼女達がティナに近付く前に全員の肉体に影の触手が絡みつき、肉体を拘束する。


「シャドウ・バインド!!」
「何だとっ……!?」
「こ、これは!?」
「そこまでよ」


ダインの影魔法によって動きを封じられた暗殺者の元にシズネが接近し、レナから借り受けた反鏡剣を握り締め、鞘を装着した状態で暗殺者達の急所を撃ち抜く。


「刺突・五連突き!!」
「うぐっ!?」
「あうっ!?」
「がはぁっ!?」


一瞬にして暗殺者集団の肉体に強烈な突きを放ち、意識を奪い取る。「乱れ突き」と「刺突」の戦技を組み合わせた複合戦技で抜き身の状態ならば彼女達の肉体も貫通する事は容易かったが、正体を確かめる必要があったので手加減を行う。

シズネの攻撃を受けた暗殺者達は意識を失ったらしく、ダインが影魔法を解くと床に倒れ込む。他に敵がいない事をカゲマルは確かめると扉を閉め、中に誰も入り込まないように鍵を閉めた。


「全員無事か?」
「あ、ああ……誰も怪我してないよな?」
「ティナ様、大丈夫っすか?」
「う、うん……何ともないよ?」


全員が無事である事を確認すると即座にカゲマルは倒れた暗殺者の元へ向かい、彼女達の服装を確認すると兵士の恰好をした女性を見てある事に気付く。


「衣服と鎧のサイズが合っていない……恐らく、この城の人間から強奪したか、あるいは盗み出した物を着込んで忍び込んだのだろう。だが、こんなガサツな方法で忍び込むあたり、こいつらは本職の暗殺者ではないな」
「確かにそうね。暗殺者の職業の人間と比べると動作も鈍くて隙だらけだったわ。でも、どうして部屋の前にこれだけの人数が隠れていたのに気付かなかったのかしら?」


部屋の中に存在する人間の中で本職の暗殺者であるハンゾウやカゲマル、それに武人としては極めて高い実力を持つレナとシズネでさえも最初に暗殺を仕掛けた女性の後に姿を現した者達が隠れていた事に気付くのに反応が遅れた。全員が彼女達の存在に気付いたのは部屋の中に入り込んだ瞬間のため、寸前まで部屋の前に待機していたはずの4人の女性の存在に気付かなかった事が不思議でならない。


「多分、これのせいだと思うよ」
「……マント?」
「正確には身隠しのマントという魔道具、緑影の人間がよく使用していた」


レナは床に落ちた緑色のマントを拾い上げて皆に見せつけ、以前に何度か見かけたことがある魔道具である事を説明する。緑影の隊員が愛用する魔道具の一種でこれを装備した人間は身動き一つ取らずに待機していると他の生物から認識されなくなり、存在感を完全に消す事が出来る。


「このマントを使ってどうやらここまで忍び込んできたらしい。でも、このマントの効果は時間制限があるからきっと用心のためにこの城の使用人や兵士の恰好をしていたんだと思う」
「ほう、そのような魔道具があるのか……ヨツバ王国の技術は侮れんな」
「忍である拙者たちでさえも気付けぬとは……面目ないでござる」
「それよりもこの女たちが何者なのかが重要よ。エリナ、見知った顔はある?」


シズネは気絶している暗殺者集団の手首を縛りあげながらエリナに尋ねると、恐る恐るエリナは近づき、顔を確認するが誰一人として見覚えはない。


「すいません、記憶力には自信がありますけどこの人達は見た事もないっす」
「そう……レナ、こいつらは緑影だと思う?」
「いや、それはないよ。緑影の隊員ならもっと慎重に行動するはずだし、こんなに弱いはずがない」


先ほどの話を思い出したシズネがレナに確認するが、実際に緑影と何度か交戦したことがあるレナから見れば今回襲撃を仕掛けた者達は弱すぎた。第一に緑影の面子が暗殺を仕掛けるのならばレナ達が不在の時にティナを狙うはずであり、わざわざ他の人間が彼女と行動を共にしている時に襲撃を仕掛けるはずがない。

ハンゾウが女性の一人の身体検査を行い、何か手掛かりになるような物はないのかと探していると、不意に彼女達の首筋の部分に焼印のような物が刻まれている事に気付き、皆に知らせる。


「これを見て欲しいでござる。首の裏に焼印があるでござるよ?」
「これは……」
「えっ!?これって!?」
「そ、それ!!追放された人にしか刻まれない紋章だよ!?」
「追放……?」


ティナとエリナは女性達に刻まれた焼印に見覚えがあるらしく、激しく動揺する。一体この焼印にどのような意味があるのかと二人に尋ねる前にカゲマルが答えた。


「なるほど、これが噂に聞くヨツバ王国の犯罪者に施される焼印か」
「兄者、知っているのでござるか!?」
「ああ、過去に一度だけマリア様に教えて貰った。ヨツバ王国の中で重罪を犯した森人族にのみ刻まれる焼印だ」


カゲマルは女性達の首筋に刻まれた朽ち果てた「枯れ木」を想像させる形状の焼印を示しながら説明を行う。まだカゲマルがマリアに仕えたばかりの頃に教わり、その時のマリアの表情は苦々しかった事から記憶に根強く残っていた。


「この焼印を刻まれた森人族はどのような理由であれ、ヨツバ王国の領地に滞在する事は禁じられている。追放された者が国へ戻る事は許されず、もしも領地内でこの焼印を刻んだ森人族を発見すれば即刻に処刑される……焼印を刻まれた森人族を仮に誰かが殺したとしても、その者が罪に問われる事はない」
「酷い……」
「し、信じられん……」


説明を受けたコトミンとゴンゾウは憐れむように気絶した女性達に視線を向けるが、シズネは淡々と告げる。


「同情は不要よ。どんな理由があるにせよ、彼女達は人の命を狙った。なら自分の命を狙われても仕方がない事よ」
「それはそうかもしれないけど……」
「それよりも私が気になるのはどうしてそんな焼印を刻まれた森人族がこの城の中に忍び込んでティナ王女の命を狙ったのかよ」
「確かにそれは気になるでござるな」


シズネの言葉にハンゾウも同意し、気絶している者達を抱きかかえて一先ずは壁際の方に移動させる。運び出す際、首筋の印に気付いたレナはカゲマルに問う。


「でもさ、こんな傷跡なんて回復薬や回復魔法で簡単に消し去る事が出来るんじゃないの?」
「いや、それは出来ない。普通の火傷の類ならば回復薬でも治療出来るが、この焼印を刻むのは特殊な魔道具が使用されている。傷跡を塞ごうとしても紋章が発熱して逆に悪化する」
「そんな魔道具まであるのか……改めてヨツバ王国が魔法に優れた森人族の国だと思い知らされるな」


バルトロス王国では流通されていない魔道具を複数所持しているヨツバ王国の魔法技術にレナはため息を吐き出し、存在感を消すマントや焼印を残す魔道具を作り出せるのならばもっと安全で役立つ代物を作ればいいのにと考えながらも女性の一人の頬を叩く。


「もしもし、起きてください。朝ですよ?」
「ううっ……」
「駄目か、起きる様子がない……仕方ない、コトミンとティナ。ちょっとスライム達を貸して」
「……?」
「え?あ、うん……どうするの?」
「「ぷるるんっ?」」


2人からスラミンとヒトミンを借り受けたレナは2体を鷲掴むと、そのままスライム達を両手に乗せて命令した。


「スラミン、ヒトミン、水鉄砲!!」
『ぷるっしゃあああっ!!』
「ぶほぉっ!?」
「えええっ!?」


気絶している女性の一人に向けてスライム達が口内から大量の水を放ち、冷水を浴びた女性は何事かと目を覚ます。
しおりを挟む
感想 5,096

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。