不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

フェンリルの主

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『王妃もカレハも協力関係を築いていましたが、お互いに信頼しているわけじゃありません。だからカレハはハヤテを密偵として送っていたように王妃もヨツバ王国内に密偵を忍び込ませてたんです。ですけど、王妃が亡くなった事で援助が途絶えた密偵は国へ引き返そうとしたところを始末されたというわけです』
『え?始末?という事はあのフェンリルは……』
『南聖将のレイビが使役する契約獣です。フェンリルがこの場所を徘徊していたのは偶然ではなく、レイビの命令を受けて森の外へ抜け出そうとする存在を見張らせていたからですね』
『マジかよ……最悪だな』


六聖将の中には竜種級の戦闘力を誇るフェンリルさえも使役する森人族が存在するという事実にレナは頭を悩ませ、フェンリルと遭遇したのが偶然ではなく、六聖将が見張りに立てていたという事は自分達の存在も気付かれたのかと尋ねる。


『俺達の存在も魔物使いに気付かれたかな?』
『いえ、レイビはあくまでもフェンリルに守護を任せただけで本人は南方から離れていません。主人と距離を離れすぎると契約獣も意識の伝達力が弱まりますから今の状態だと自分の命令しか覚えていません。だからレナさん達の事も森の中に侵入者が現れたとフェンリルは認識していますが、レイビには伝わっていないはずです』
『え、本当に?』
『だけど安心したら駄目ですよ。逃亡者の他にも侵入者も排除するようにフェンリルも命令を受けているのでこれからの道中はフェンリルの追跡を警戒して先に進んでください』
『……マジかよ』


森の中に配置されているヨツバ王国側の兵士だけではなく、これからはフェンリルの追跡も警戒しなければならないという事実にレナはため息を吐き出し、他に気を付けるべき点はないのか確認した。


『他に連絡事項は?』
『良い情報と悪い情報があります。悪い情報から言うと森の中に見張りの兵士が増員されました。北聖将の兵士だけではなく、他の将からも兵士が送り込まれています』
『最悪だな』
『良い情報は旧都を縄張りとしているユニコーンが離れた事で旧都はがら空きになりました。今の内に旧都を通過すれば目的地への到着を早める事が出来ます』
『さっきのユニコーンか……そういえばどうしてユニコーンがこんな場所に現れたんだ?』


縄張りである旧都からユニコーンが離れた理由も気になるが、その他にもどうして人里から離れた地域でしか住処を作らないユニコーンが旧都を支配したのかも気になるところなのでアイリスにレナは尋ねると、彼女は真相を明かす。


『ユニコーンがこの場所まで移動したのは単純に餌を探すためです。ユニコーンの主食は綺麗な水と薬草だけですからね。だから餌が豊富で湖に囲まれた旧都はユニコーンにとっては最適な住処だったんです。最もユニコーンが旧都を住処にしたのは別の理由があるんですが……』
『別の理由?』
『ユニコーンは死期が近まると子供を産みます。それも番いを必要としない単為生殖で出産し、自分の命と引き換えに新たなユニコーンを生み出します。だからユニコーンに雌雄という概念はありません』
『へえ……』
『旧都を支配したユニコーンは死期が近まったユニコーンなんですが、こちらのユニコーンは寿命ではなく、病で命を落としそうになっています。もしも寿命以外の経緯で死亡した場合、生まれる子供は未熟児になるんです。それを阻止するため、ユニコーンは病を治すために大量の薬草を必要としているんですよ』


アイリスによるとユニコーンは病によって死ねば自分の子供が未熟児として生まれてしまうと危惧し、大量の薬草と綺麗な湖に覆われた旧都を住処としたらしく、子供の出産の前に大量の栄養を蓄えているらしい。


『ユニコーンが間もなく死亡する事は間違いありません。だけど、その前にユニコーンは子供のために栄養を蓄えて立派な赤子を出産しようとしているんです。そのために危険を犯して旧都を縄張りにして森中を徘徊して薬草を探し回っているんですよ』
『なるほど、どうりでこんなに大きい森の中なのに薬草があんまり見かけないと思ったよ』


薬草は森の中に最も多く自生する植物だが、ここまでの道中でレナは薬草を見かけていない理由を知る。どうやらユニコーンは旧都に存在した薬草さえも食い尽くしたらしく、餌を探すためにこんな森の外れまで移動して偶然にも遭遇したフェンリルと戦闘を繰り広げたという事になる。


『ユニコーンは最も愛情深い生物なんです。自分の命と引き換えに生まれてくる子供のためならばどんな危険な事でも躊躇なく行動しますからね』
『感動する話だな。どっかの父親は生まれてきた子供を殺そうとしたのに……』
『全くですね。まあ、それはともかくユニコーンが戻ってくる前に旧都へ向かいましょう。ユニコーンの縄張り内にはヨツバ王国の兵士も近づけませんし、安全に休めますよ』
『分かった。でも、どうやって説明しようかな……』
『大丈夫ですよ。レナさんの提案なら皆話を聞いてくれますから』


アイリスと交信を終えると、レナは仲間達に視線を向け、行き先を旧都に変更にするためにエリナに話しかけた。


「ねえ、エリナ。ここから旧都まではどのくらいの距離がある?」
「え?旧都ですか?それならここを真っすぐに進めば辿り着けますけど……まさか兄貴、旧都へ向かうつもりですか?」
「地図上では旧都を通過した方が距離が近いんでしょ?」
「いやいや、無理っすよそんなの!!兄貴も見たでしょ?あのユニコーンを!!旧都へ侵入すればユニコーンを怒らせちゃうんですよ!?」
「そのユニコーンがこんな離れた場所までいるんだから、今の旧都はがら空きなんじゃないの?」
「ふむ、確かに一理あるが……」
「ウォンッ?」


レナの発言にエリナは必死に否定するが、カゲマルはレナの言葉に賛同し、ウルは首を傾げる。当初の予定ではレナ達は旧都を迂回して向かう予定だったが、もしも旧都を素通り出来たのならば予定を大幅に縮める事が出来る。


「でも旧都まで移動するにしても歩いて二日は掛かるんですよ!?森の中でウルやアインに乗って走って移動すると目立ち過ぎるし、見張りの兵士だって何処に隠れているのかも分からないのにユニコーンが戻る前に旧都へ辿り着くなんて無理っす!!」
「本当に方法はないの?」
「そういわれても……どれだけの兵士が隠れているのかも分からない時点で無暗に動くのは危険なんですよ」


エリナは旧都に向かう事を断固として反対するが、アイリスによれば旧都を通過する方が時間が短縮も出来るし、ヨツバ王国の兵士も近づけない場所ならば休憩に向いている。そもそも移動する方法が本当に無ければアイリスも提案するはずがなく、レナは考えた。


(アイリスが交信した時に移動法を教えなかったのは教える必要もないと判断したからとしたら……もしかしたら旧都までの道程には邪魔者はいない、あるいは気付かれない移動方法を俺達が持っている?)


アイリスと交信して答えを尋ねる方が早いが、わざわざ彼女が旧都へ向かう事を提示した時点でレナ達が移動できる方法があるのは間違いない。その方法が一体何なのかをレナは考えた時、ウルが鼻先を鳴らして鳴き声を上げた。


「ウォンッ!!」
「うわ、びっくりした!?どうしたウル?」
「クゥ~ンッ」


ウルは鳴き声を上げると近くに存在した大樹を示す。その行動にレナ達は不思議がると、カゲマルがいち早く異変に気付いて苦無を放つ。


「あれは……ぬんっ!!」
『ギャウッ!?』
「うわ、なんだ?木の皮が剥がれた?」
「違うでござる!!こいつは擬態した魔物でござる!!」


苦無が突き刺さった箇所の皮が剥がれ落ちたかと思われた途端、樹皮だと思われていた物体の色が変色し、カメレオンを想像させるトカゲが姿を現した。
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