不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

古代龍

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――村の防衛が始まってから1時間後、事前にホムラの言葉通りに一気に魔物が出現する数が減少し、最高潮ピークを過ぎ去ったと判断した彼女は休憩を宣言する。


「各自、死骸の素材を回収して戻って来い!!休憩に入るぞ!!」
『…………』


ホムラの言葉を聞いても誰も返事を返す余力も残っておらず、毎晩のように戦っているダークエルフの戦士達でさえも全身に汗を流していた。一方で防衛戦という慣れない戦闘を行っていたレナ達の方も疲労が大きく、ダインに至っては子供のレノに抱えられた状態で戻って来た。


「し、死ぬかと思った……ありがとう、皆」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「何でレノはそんなに元気なんだよ……」
「こういうのは慣れてるから……」
「ふん、私の弟を舐めるなよ。気は弱いが、この齢で戦闘に参加する体力は身に着けている」
「俺の子供の頃よりずっと凄いなこの子……」


ダインを抱えて戻って来たレノにホムラは初めて優し気な表情を浮かべて頭を撫でやり、彼女なりに弟の事は気にかけている様子だった。一方でレナの方もカゲマルとエリナを脇に抱えたアインとミノを連れて戻り、全員が無事である事を確認する。


「皆、大丈夫?生きてる?」
「ど、どうにか……辛うじて」
「矢が尽きた時はもう駄目かと思いました……」


エリナは矢筒が空になるまで矢を撃ち尽くし、ハンゾウの方も武器が刃毀れを起こして使い物にならなくなるまで戦い抜いたらしく、どちらも疲労は大きかった。一方で魔人族であるアインとミノはまだまだ戦えるらしく、ミノに至っては村の周囲に横たわった死骸の中から食べられそうな魔物を選別して持ち帰って来た。


「ブモォッ!!」
「え?何?これを調理して欲しいの?仕方ないな、なら魔法で焼くか……」
「止めろ!!ここで火を焚くな!!」


丸々と肥え太ったオークの死骸を運んできたミノに対し、仕方なく丸焼きにでもしようと合成魔術を発動させようとした時、戦士の一人が注意を行う。いったい何事かとレナは戦士の方に振り返ると、ホムラが代わりに説明を行う。


「命が惜しければここで死骸を焼くのは止めておけ……もうすぐ、この岩山が目覚める時間帯だ」
「目覚めるって……何が?」
「いいから必要な分の死骸だけを回収して村へ引き返すぞ。奴が目覚める前に戻る必要がある」
「奴?」


ホムラの言葉を聞いてレナは戦士達に視線を向けると、彼等の方は魔物の素材を必要分だけ回収を終えていたらしく、急いで橋を渡って村の中へ引き返す。ホムラの方もレノを抱えて村の方に戻り、その様子を見てレナ達も不思議に思いながらも後に続く。

魔物達は立ち去ったとはいえ、まだ夜明けまでかなりの時間が存在するにも関わらずに引き返したホムラ達に疑問を抱き、いったい何が目覚めようとしているのかを尋ねた。


「ホムラ、いったい何が目覚めるの?」
「……古代龍だ」
「古代龍……?」
「名前は存在しない、古の時代から存在するこの星で最も偉大な竜だ……もう、目覚める」


古代龍という単語はレナも初めて聞き、ホムラは地面に視線を向けると何かを悟ったように立ち止まり、そんな彼女の態度にレナ達は不思議に思うが、直後に激しい振動が地面を走る。


「何だ!?」
「じ、地震か!?」
「落ち着け」


地震を想像させる激しい振動が岩山全体に広がり、慌ててレナ達はその場に伏せるが、激しい振動の中でホムラはレノを抱えた状態で立ち尽くす。そんな彼女の姿を見てレナは何が起きているのか尋ねる前に地面に視線を向け、振動の正体を見破る。




――数秒後、アトラス大森林に獣を想像させる咆哮が響き渡り、やがてレナ達が立っている岩山が浮き上がる。より正確に言えば岩山の下から更に巨大な土気色の生物が誕生し、まるで亀の甲羅のように岩山を背負った状態で巨大生物は姿を現した。




その姿はかつて冒険都市を強襲した「地竜」と姿は似ているが、レナ達が対峙した地竜の何倍、下手をしたら何十倍の大きさを誇る巨大生物が地中から出現した。レナ達が存在する岩山は巨大生物の背中に位置しており、どうやら岩山だと思われていたのは巨大生物の肉体の一部だと判明する。

古代龍と呼ばれる生物はゆっくりと身体を動かすと移動を行い、歩くだけで多くの木々を薙倒し、地上に存在する魔物達を蹴散らす。その圧倒的な巨体を前にすれば恐らくは樹肉の果実で理性を失った魔物であろうと恐れおののき、一目散に逃げだすだろう。

夜間の間にしか目を覚まさず、日中の間は地中に身を隠す古代龍ではあるが、夜を迎えてからしばらくすると目を覚まして移動を行う。その際に歩くだけで地震の如く大地が震え、木々は破壊され、魔物達は恐怖で逃げ惑う。バルトロス王国では最強の竜種は「白竜」と呼ばれているが、ヨツバ王国の民衆の間ではこの「古代龍」こそが最強の生物だと伝わっていた――
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