855 / 2,091
S級冒険者編
ケンゾウ
しおりを挟む
「そういえば名前を名乗ってなかったな。俺の名前はケンゾウ、この近くにある道場の師範をやっている」
「道場?」
「ケンゾウといえば……思い出した、剣術指南役を任されていたケンゾウ殿でござるか?」
「ははははっ、今はもう引退して実家の田舎道場を継いだ普通の爺だがな」
ハンゾウの驚いた声を上げるとケンゾウは笑い、そんな彼に対してレナに突っかかって来た男は慌てふためく。
「そ、そんな!!今でも師範はこの国最強の剣士ですよ」
「おだてるんじゃねえよ。この足じゃあ、もうまともに剣を振る事も出来ねえ」
「その足、どうしたんですか?」
「まあ、今の剣術指南役との試合で斬られてな……年は取りたくないな。昔と比べてもうキレを失ちまった」
ケンゾウの片足は彼が剣術指南役として働いていた時、ある剣士に敗れた事で失ったという。その剣士はケンゾウを破った事で剣術指南役と認められ、一方でケンゾウの方は職を失って実家の道場を引き継いだという。
「それよりも兄さん、ここにいる男は一応は俺の道場の師範代を任せているんだが、こいつがあんたに負けたと聞いて興味をもってな。あんた、何者だい?」
「通りすがりのS級冒険者です」
「ほう、S級冒険者か。ヨクヒの嬢ちゃんと同じ立場の人間という事か」
「冒険者だと……くそ、俺は魔物狩りにやられたのか」
「魔物狩り?」
「和国では冒険者の事を魔物狩りと呼んでいるでござる」
自分の道場の師範代が敗れたと聞いたケンゾウは興味を抱き、レナ達の事を探し回っていたという。彼は許可を貰う前にレナ達の机の椅子に座り込むと、人懐っこい笑みを浮かべて向き直る。
「兄さん、俺とこいつはこんな見た目だが別にあこぎな商売をやっているわけじゃねえ。あんたを探していたのは純粋にどんな強い剣士なのか気になったからさ」
「そうですか。でも、俺は生粋の剣士じゃありませんけどね」
「ん?どういう意味だい?」
「レナ殿は魔術師でござる」
「ま、魔術師だと……魔術師に俺は負けたというのか!?」
「タロウ、うるさいぞ。お前のでかい声は足に響くんだ。静かに座ってろ」
「す、すいません……」
タロウと呼ばれた男性は落ち込んだ様子で座り込み、まさか自分が戦った相手が剣士ではない事が余程ショックだったらしい。一方でケンゾウの方はレナに視線を向け、何かに気付いた様に頷く。
「なるほど、人生長生きするもんだな……まさかこの年齢で俺と同じ領域の人間に巡り合えるとはな」
「……貴方も只者じゃなさそうですね」
「そういう事だな」
レナとケンゾウはお互いに視線を交わすと一瞬だけ瞳の色を「赤色」に変色させる。それだけでお互いの正体を見抜くと、ケンゾウは真剣な表情を浮かべて扉の方を指差す。
「とりあえず、俺に付いてきてくれないか?悪いようにはしないぜ」
――ケンゾウに誘われるままにレナ達は付いていくと、彼が経営している道場まで案内された。道場といっても随分と古びた建物であり、ヨクヒの屋敷よりも年季を感じさせた。元々は剣術指南役を任されていた男性が経営するような建物とは思えない程に寂れているが、それでもケンゾウ本人は気に入っているらしい。
建物の中に案内されたレナ達は一先ずは座り込むと、タロウが用意した酒と杯を頂く。あまり酒は好きではないレナだが、代わりにハンゾウが酒を飲む。
「おおっ、これは良い酒でござるな。飲みやすく、喉越しもいい」
「だろう?嬢ちゃんはこの酒の良さが分かるか、こいつは俺のダチの秘伝の酒だ。そっちの兄さんも遠慮せずにのみな」
「はあ……それで、俺達を呼び出した理由はなんですか?」
酒を進めてくるケンゾウに対して一応は盃を受け取ったレナだが、酒を飲む前に本題を尋ねる。レナとしてはハンゾウから過去に召喚された勇者がどのような手段で地球へ戻ったのか聞きたい所だが、この男と会った時に何故か無視できなかった。
ケンゾウは盃の酒を飲み干すと、一息吐いてしばらくは天井を眺めていたが、やがて杯を床に置くと杖を使ってゆっくりと立ちあがる。そして彼は杖を握り締めると、仕込み杖だったのか刃を露わにした。その彼の行動にハンゾウは咄嗟に立ち上がって武器に手を伸ばすが、レナの方は冷静に視線を向けたまま動かさない。
「いや、何……さっきも言ったが、俺はこの人生で一度も同種の人間と会った事がなくてな。少しばかり気になって兄さんたちを呼び出したというわけさ」
「同種!?それはどういう意味でござる!?」
「兄さん、あんたも剣鬼なんだろう?」
剣鬼という言葉を告げた瞬間に雰囲気が一変し、ケンゾウの瞳が赤色に染まる。それを見たハンゾウは背筋が凍り付くが、レナの方は特に変化はなく、手にした杯を口元に運ぶ。
「ふっ……俺の殺気を受けてここまで平然とした態度を取る奴は初めてだ。だが、俺の勘が行ってるぜ。あんたは只者じゃないとな」
「だろうね……前に叔母様から聞いた事があるよ。同じ時代に二人の剣鬼が存在する事は出来ない。何故なら剣鬼同士が出会えば必ず殺し合いに発展するとね」
「そういう事だ。じゃあ、殺し合うか?」
レナの言葉にケンゾウは握り締めた仕込み杖の刃を構えた時、レナは盃を床に置いてゆっくりと立ちあがる。
「道場?」
「ケンゾウといえば……思い出した、剣術指南役を任されていたケンゾウ殿でござるか?」
「ははははっ、今はもう引退して実家の田舎道場を継いだ普通の爺だがな」
ハンゾウの驚いた声を上げるとケンゾウは笑い、そんな彼に対してレナに突っかかって来た男は慌てふためく。
「そ、そんな!!今でも師範はこの国最強の剣士ですよ」
「おだてるんじゃねえよ。この足じゃあ、もうまともに剣を振る事も出来ねえ」
「その足、どうしたんですか?」
「まあ、今の剣術指南役との試合で斬られてな……年は取りたくないな。昔と比べてもうキレを失ちまった」
ケンゾウの片足は彼が剣術指南役として働いていた時、ある剣士に敗れた事で失ったという。その剣士はケンゾウを破った事で剣術指南役と認められ、一方でケンゾウの方は職を失って実家の道場を引き継いだという。
「それよりも兄さん、ここにいる男は一応は俺の道場の師範代を任せているんだが、こいつがあんたに負けたと聞いて興味をもってな。あんた、何者だい?」
「通りすがりのS級冒険者です」
「ほう、S級冒険者か。ヨクヒの嬢ちゃんと同じ立場の人間という事か」
「冒険者だと……くそ、俺は魔物狩りにやられたのか」
「魔物狩り?」
「和国では冒険者の事を魔物狩りと呼んでいるでござる」
自分の道場の師範代が敗れたと聞いたケンゾウは興味を抱き、レナ達の事を探し回っていたという。彼は許可を貰う前にレナ達の机の椅子に座り込むと、人懐っこい笑みを浮かべて向き直る。
「兄さん、俺とこいつはこんな見た目だが別にあこぎな商売をやっているわけじゃねえ。あんたを探していたのは純粋にどんな強い剣士なのか気になったからさ」
「そうですか。でも、俺は生粋の剣士じゃありませんけどね」
「ん?どういう意味だい?」
「レナ殿は魔術師でござる」
「ま、魔術師だと……魔術師に俺は負けたというのか!?」
「タロウ、うるさいぞ。お前のでかい声は足に響くんだ。静かに座ってろ」
「す、すいません……」
タロウと呼ばれた男性は落ち込んだ様子で座り込み、まさか自分が戦った相手が剣士ではない事が余程ショックだったらしい。一方でケンゾウの方はレナに視線を向け、何かに気付いた様に頷く。
「なるほど、人生長生きするもんだな……まさかこの年齢で俺と同じ領域の人間に巡り合えるとはな」
「……貴方も只者じゃなさそうですね」
「そういう事だな」
レナとケンゾウはお互いに視線を交わすと一瞬だけ瞳の色を「赤色」に変色させる。それだけでお互いの正体を見抜くと、ケンゾウは真剣な表情を浮かべて扉の方を指差す。
「とりあえず、俺に付いてきてくれないか?悪いようにはしないぜ」
――ケンゾウに誘われるままにレナ達は付いていくと、彼が経営している道場まで案内された。道場といっても随分と古びた建物であり、ヨクヒの屋敷よりも年季を感じさせた。元々は剣術指南役を任されていた男性が経営するような建物とは思えない程に寂れているが、それでもケンゾウ本人は気に入っているらしい。
建物の中に案内されたレナ達は一先ずは座り込むと、タロウが用意した酒と杯を頂く。あまり酒は好きではないレナだが、代わりにハンゾウが酒を飲む。
「おおっ、これは良い酒でござるな。飲みやすく、喉越しもいい」
「だろう?嬢ちゃんはこの酒の良さが分かるか、こいつは俺のダチの秘伝の酒だ。そっちの兄さんも遠慮せずにのみな」
「はあ……それで、俺達を呼び出した理由はなんですか?」
酒を進めてくるケンゾウに対して一応は盃を受け取ったレナだが、酒を飲む前に本題を尋ねる。レナとしてはハンゾウから過去に召喚された勇者がどのような手段で地球へ戻ったのか聞きたい所だが、この男と会った時に何故か無視できなかった。
ケンゾウは盃の酒を飲み干すと、一息吐いてしばらくは天井を眺めていたが、やがて杯を床に置くと杖を使ってゆっくりと立ちあがる。そして彼は杖を握り締めると、仕込み杖だったのか刃を露わにした。その彼の行動にハンゾウは咄嗟に立ち上がって武器に手を伸ばすが、レナの方は冷静に視線を向けたまま動かさない。
「いや、何……さっきも言ったが、俺はこの人生で一度も同種の人間と会った事がなくてな。少しばかり気になって兄さんたちを呼び出したというわけさ」
「同種!?それはどういう意味でござる!?」
「兄さん、あんたも剣鬼なんだろう?」
剣鬼という言葉を告げた瞬間に雰囲気が一変し、ケンゾウの瞳が赤色に染まる。それを見たハンゾウは背筋が凍り付くが、レナの方は特に変化はなく、手にした杯を口元に運ぶ。
「ふっ……俺の殺気を受けてここまで平然とした態度を取る奴は初めてだ。だが、俺の勘が行ってるぜ。あんたは只者じゃないとな」
「だろうね……前に叔母様から聞いた事があるよ。同じ時代に二人の剣鬼が存在する事は出来ない。何故なら剣鬼同士が出会えば必ず殺し合いに発展するとね」
「そういう事だ。じゃあ、殺し合うか?」
レナの言葉にケンゾウは握り締めた仕込み杖の刃を構えた時、レナは盃を床に置いてゆっくりと立ちあがる。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。