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S級冒険者編
剣鬼同士
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「戦わないよ、面倒くさい」
「ほう……つまり、俺に勝つ自信がないと」
「そういう挑発で乗るほど子供でないので」
レナの言葉にケンゾウは少し意外そうな表情を浮かべるが、レナはそのまま背中を向けて立ち去ろうとする。抜き身の剣を構えた自分を前にして無防備に背中を向けたレナに対してケンゾウは驚くが、振り返りもせずにレナは彼に告げた。
「何が目的なのか知らないけど、こっちは別に人を殺す事が好きなわけじゃないんだよ」
「……そうかい」
その言葉を聞いたケンゾウは仕込み杖を下ろすと、それを見たハンゾウとタロウは安堵した表情を浮かべた。しかし、レナが1歩歩いた瞬間に彼は目を見開くとレナが地面に足を置く前に動き出す。
「はあっ!!」
「レナ殿……!?」
「師匠……!?」
ケンゾウは横薙ぎに仕込み杖を振りぬくと、レナの身体を刃が通り抜けた。その光景を見たハンゾウとタロウはレナの胴体が切り裂かれたのかと思ったが、攻撃を仕掛けたケンゾウは手元の感触に違和感を抱き、すぐに自分が切り裂いたのが「残像」である事に気付いた。
仕込み杖が空振りしたケンゾウは反射的に振り返ると、そこには空間魔法を発動させて大太刀を引き抜こうとするレナの姿が存在し、彼は唇を噛みしめて振りぬいた刃を勢いに任せて一回転するように背後にも切りかかった。この間の動作にかかった時間は一瞬であり、瞳を赤色に染めたケンゾウは剣鬼としての能力を最大限に発動させて切りかかる。
「あああっ!!」
「遅い」
しかし、振りぬいたケンゾウの刃に対してレナは剣鬼の能力も発動せずに半歩下がって刃を回避した。肉体の数ミリ先に刃が通過してもレナは焦る様子も見せず、異空間から出現した大太刀を引き抜いて床板が割れるほどの勢いで踏み込むと刃を振り翳す。
「ちぃっ!!」
「ぐうっ!?」
ケンゾウ本人ではなく、仕込み杖の刃に向けてレナは大太刀を振り払った瞬間、天井に折れた刃がめり込む。ケンゾウは自分が握り締めていた名工に打たせた仕込み杖の刃が折られた事に気付き、続けてレナが放つ掌底によって彼の身体は吹き飛ばされた。
「せいっ!!」
「ぐはぁっ!?」
「師匠!?お、おのれ!!」
「おっと、そこまででござる」
吹き飛ばされたケンゾウを見てタロウが動こうとしたが、既にタロウの首先にはハンゾウが短刀の刃を構えて抑えつける。首筋に刃を突きつけられたタロウは顔色を青くさせるが、そんな彼を無視してレナはケンゾウの元に移動すると手を差し出す。
「大丈夫ですか?まだ生きてる?」
「……くそ、年は取りたくねえな。まさか、こんな若造に心配される日が来るとは」
「貴方がもっと若かったら俺も手加減する余裕は無かったですよ」
「ちっ……すまん、助かる」
義足なので自力で立ち上がる事も難しいのかケンゾウはレナの手を借りて起き上がると、折れた仕込み杖と天井に突き刺さった刃を見てため息を吐き出す。後で回収するのが大変そうではあるが、今は素直に自分が敗北した事を認め、レナに頭を下げた。
「すまんな、兄さん……こんな騙し討ちするような真似をして悪かった」
「別に良いですよ。でも、どうして急にこんな事を?」
「……言っただろう、剣鬼同士が出会えば無事では済まない。剣鬼というのは巡り合えば互いに殺し合う運命なんだ」
レナの言葉にケンゾウは言い訳をするように語り掛けるが、彼の言葉を聞いてレナはケンゾウの本心ではない事に気付き、本当の理由を尋ねる。
「世間一般の剣鬼がどう扱われているのかは知らないけど、俺は無暗に人を斬る趣味はない」
「おかしな事を言うな、それならお前さんはどうやってその力を手に入れた?愛する人を斬ってまで手に入れた力なんだろう?」
「……そうだよ、だけど俺は人斬りに快楽なんか感じられない。今までにも何人か切ったけど、その度に嫌な夢を見た」
「あんた……変わってるな」
ケンゾウはレナの言葉が意外だったのか驚いた顔を向けるが、やがて疲労がぶり返してきたのかその場に座り込み、レナを呼び寄せた本当の理由を話す。
「……実はここ最近、この国で辻斬りが多発してる。俺の所の弟子も何人か殺された」
「辻斬り?」
「それは本当でござるか!?」
「ああ、嘘じゃない。俺も弟子を連れて毎日のように出回っているが、未だにそいつとは出会っていない。だが、相当な剣の腕前なのは間違いない。俺の所の一番弟子もそいつに斬られちまった……だから師として仇はどうしても討ちたい」
「それでどうして俺に切りかかってきたんですか?」
「悪いな、あんたを一目見た時から俺と同種の人間だと見抜いたんだ。だから辻斬りの正体があんただと思ったんだが、どうやら違うようだな。あんたの言葉に嘘は感じられねえ……あんたは良い人だよ。急に切りかかって悪かったな」
レナの言葉にケンゾウは苦笑いを浮かべ、勘違いで襲いかかった事を謝罪する。しかし、同時にレナが犯人でないと分かった以上は未だに辻斬りがこの国に存在するのは間違いなかった。
「ほう……つまり、俺に勝つ自信がないと」
「そういう挑発で乗るほど子供でないので」
レナの言葉にケンゾウは少し意外そうな表情を浮かべるが、レナはそのまま背中を向けて立ち去ろうとする。抜き身の剣を構えた自分を前にして無防備に背中を向けたレナに対してケンゾウは驚くが、振り返りもせずにレナは彼に告げた。
「何が目的なのか知らないけど、こっちは別に人を殺す事が好きなわけじゃないんだよ」
「……そうかい」
その言葉を聞いたケンゾウは仕込み杖を下ろすと、それを見たハンゾウとタロウは安堵した表情を浮かべた。しかし、レナが1歩歩いた瞬間に彼は目を見開くとレナが地面に足を置く前に動き出す。
「はあっ!!」
「レナ殿……!?」
「師匠……!?」
ケンゾウは横薙ぎに仕込み杖を振りぬくと、レナの身体を刃が通り抜けた。その光景を見たハンゾウとタロウはレナの胴体が切り裂かれたのかと思ったが、攻撃を仕掛けたケンゾウは手元の感触に違和感を抱き、すぐに自分が切り裂いたのが「残像」である事に気付いた。
仕込み杖が空振りしたケンゾウは反射的に振り返ると、そこには空間魔法を発動させて大太刀を引き抜こうとするレナの姿が存在し、彼は唇を噛みしめて振りぬいた刃を勢いに任せて一回転するように背後にも切りかかった。この間の動作にかかった時間は一瞬であり、瞳を赤色に染めたケンゾウは剣鬼としての能力を最大限に発動させて切りかかる。
「あああっ!!」
「遅い」
しかし、振りぬいたケンゾウの刃に対してレナは剣鬼の能力も発動せずに半歩下がって刃を回避した。肉体の数ミリ先に刃が通過してもレナは焦る様子も見せず、異空間から出現した大太刀を引き抜いて床板が割れるほどの勢いで踏み込むと刃を振り翳す。
「ちぃっ!!」
「ぐうっ!?」
ケンゾウ本人ではなく、仕込み杖の刃に向けてレナは大太刀を振り払った瞬間、天井に折れた刃がめり込む。ケンゾウは自分が握り締めていた名工に打たせた仕込み杖の刃が折られた事に気付き、続けてレナが放つ掌底によって彼の身体は吹き飛ばされた。
「せいっ!!」
「ぐはぁっ!?」
「師匠!?お、おのれ!!」
「おっと、そこまででござる」
吹き飛ばされたケンゾウを見てタロウが動こうとしたが、既にタロウの首先にはハンゾウが短刀の刃を構えて抑えつける。首筋に刃を突きつけられたタロウは顔色を青くさせるが、そんな彼を無視してレナはケンゾウの元に移動すると手を差し出す。
「大丈夫ですか?まだ生きてる?」
「……くそ、年は取りたくねえな。まさか、こんな若造に心配される日が来るとは」
「貴方がもっと若かったら俺も手加減する余裕は無かったですよ」
「ちっ……すまん、助かる」
義足なので自力で立ち上がる事も難しいのかケンゾウはレナの手を借りて起き上がると、折れた仕込み杖と天井に突き刺さった刃を見てため息を吐き出す。後で回収するのが大変そうではあるが、今は素直に自分が敗北した事を認め、レナに頭を下げた。
「すまんな、兄さん……こんな騙し討ちするような真似をして悪かった」
「別に良いですよ。でも、どうして急にこんな事を?」
「……言っただろう、剣鬼同士が出会えば無事では済まない。剣鬼というのは巡り合えば互いに殺し合う運命なんだ」
レナの言葉にケンゾウは言い訳をするように語り掛けるが、彼の言葉を聞いてレナはケンゾウの本心ではない事に気付き、本当の理由を尋ねる。
「世間一般の剣鬼がどう扱われているのかは知らないけど、俺は無暗に人を斬る趣味はない」
「おかしな事を言うな、それならお前さんはどうやってその力を手に入れた?愛する人を斬ってまで手に入れた力なんだろう?」
「……そうだよ、だけど俺は人斬りに快楽なんか感じられない。今までにも何人か切ったけど、その度に嫌な夢を見た」
「あんた……変わってるな」
ケンゾウはレナの言葉が意外だったのか驚いた顔を向けるが、やがて疲労がぶり返してきたのかその場に座り込み、レナを呼び寄せた本当の理由を話す。
「……実はここ最近、この国で辻斬りが多発してる。俺の所の弟子も何人か殺された」
「辻斬り?」
「それは本当でござるか!?」
「ああ、嘘じゃない。俺も弟子を連れて毎日のように出回っているが、未だにそいつとは出会っていない。だが、相当な剣の腕前なのは間違いない。俺の所の一番弟子もそいつに斬られちまった……だから師として仇はどうしても討ちたい」
「それでどうして俺に切りかかってきたんですか?」
「悪いな、あんたを一目見た時から俺と同種の人間だと見抜いたんだ。だから辻斬りの正体があんただと思ったんだが、どうやら違うようだな。あんたの言葉に嘘は感じられねえ……あんたは良い人だよ。急に切りかかって悪かったな」
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