不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・闘技祭 本選編

勝者こそ絶対

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「参の太刀、斬煌」
「っ――!?」


ヨシテルの鞘から剣が引き抜かれた瞬間、凄まじい光が放たれる。しかし、それは「閃光」の類ではなく、まるでレミアのエクスカリバーから生み出される「光の刃」のように変化を果たし、正面から接近してきたギガンの身体に走った。

その結果、ギガンの肉体に血飛沫が舞い上がり、顔面を覆うように塞がっていた両腕が切り裂かれ、地面へと落ちる。両腕を失ったギガンは膝を崩すと、唖然とした表情を浮かべてヨシテルへと顔を向けた。そんな彼に対してヨシテルは刃を上に翳した状態で告げる。


「甘く見ていたのは貴方のようでしたね、ギガン殿」
「ヨシ、テ……」
「はああっ!!」


気合を込めた声と同時にヨシテルはギガンに向けて刃を振り下ろすと、今度はギガンの顔面に血飛沫が舞い上がり、その光景を見ていた観衆は悲鳴を上げる。ギガンは虚ろな瞳で地面へと倒れ込むと、その様子を見下ろしたヨシテルは頬に汗を垂らしながらも刃にこびり付いた血を振り払い、鞘へと戻す。


「……ご安心ください、ギガン殿。貴方は弱くはなかった、だが私には及ばなかった。それだけの話ですよ」
『え、あっ……ぎ、ギガン選手の戦闘不能、勝者はヨシテル選手です』
『何をしてるんですか!!医療班、早く治療を行って下さい!!今ならまだ腕もくっつくかもしれません!!』


ラビットがヨシテルの勝利を宣言すると、すぐにホネミンが待機している医療班に指示を出し、慌てて試合場に倒れたギガンの元に治癒魔導士が駆けつける。彼の治療はすぐに行われ、その間にも試合を終えたヨシテルは脂汗を流しながらも城門へと立ち去っていく。

あまりの試合の結果に観衆は騒ぐ事も出来ず、誰もがギガンが生きているのかと心配した表情を浮かべる。試合を観戦していた選手達も表情は険しく、武芸者同士の試合なので今回のような結果に陥る事も予想は出来た。それでもヨシテルの最後の攻撃に関してだけは納得していない者もいた――





「――ふうっ、流石に疲れましたね」


城門を抜けたヨシテルは通路に戻ると、誰もいない事を確認してから壁に手を伸ばして身体を休めさせる。ギガンとの試合では彼は二度しか刃を振るってはいないが、それでも想像以上に体力を消耗していた。


(準決勝と決勝が別の日で助かったかもしれません。万全な体調を取り戻すには時間がかかりそうです……まさか、人前で参の太刀まで使用する日が来るとは……しかし、私の目的のためには必要な事)


少し休んで体力を取り戻したヨシテルは衣服の乱れを直すと、ここで胸元を抑えつける。彼は口元にも手をやって吐き気を抑え、嗚咽を漏らす。


「ぐふっ……くぅっ、この身体が忌々しい……!!」
「随分と苦しそうだな」
「貴女は……これはお見苦しい所を見せましたね」


ヨシテルは通路の前方から話しかけられ、振り返るとそこにはホムラが立っていた。彼女を見てヨシテルは冷や汗を流し、この場にホムラが現れた事に動揺する。先ほどの試合は午前の部の最終試合のため、次の試合の前に休憩を挟む。つまり、ホムラがこの場にいるという事は試合での呼び出しではなく、ヨシテルに会いに来たという事を意味していた。

どうにか吐き気を我慢してヨシテルは表面上は冷静になろうとすると、ホムラはそんな彼に対して黙って視線を向け、やがて背を向ける。その彼女の行為にヨシテルは意外に思うが、ホムラは淡々と告げた。


「ギガンの弟子が先ほど暴れた。他の奴等が取り押さえて今は落ち着いたがな、お前の顔を見ると何をしでかすか分からない」
「……目の前で師匠を斬られたのです、無理もないでしょう」
「違う、奴が気に喰わなかったのはお前の最後の追撃らしい」
「そうですか……」


ホムラの言葉にヨシテルは彼女が控室に戻らないように忠告するためだけに現れた事に気付き、意外に思う。そんな気遣いをするような女性には見えなかったのだが、ホムラはヨシテルに問いかける。


「最後の攻撃、お前はどうして奴を斬った?」
「……あの時、私は殺されると思いました。だからこそ試合ではなく、勝負として彼に止めを刺そうとしたのです。その判断に間違いがあるとは思っていません」
「そうか……正論だ、お前の意見は間違っていない」
「まさか、それだけを聞きに来たのですか?」


試合でありながらヨシテルはギガンを殺すために最後の攻撃を加えたという話を聞いたホムラは納得したように頷くと、そのまま立ち去る。そんな彼女にヨシテルは呆気に取られるが、すぐに笑みを浮かべた。


「全く、何という魅力的な御人でしょうか……必ずや手にしてみたいですね」


わざわざ自分に質問するために訪れたホムラにヨシテルは苦笑いを浮かべ、彼はゆっくりと通路を歩いて去って行った――
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