1,138 / 2,091
真・闘技祭 本選編
聖痕から解き放つ
しおりを挟む
「皆、下がりなさい。貴方達もよ」
「ちょっと、待ちなさい。何をするつもりなの?」
「この子の身体から聖痕を切り離すのよ」
「えっ!?そ、そんな勝手な……」
「そうする事が一番なのよ」
レナの頭にマリアは手を伸ばすと、手を繋いでいたコトミンとシズネを下がらせて彼女は額に手を差し伸べる。意識を集中させるように目を閉じると、マリアはレナの体内の魔力の流れを感じとる。
「やはり、風の聖痕が体内の魔力の流れを乱していたのね。そのせいでレナは本来の力を発揮できていない」
「魔力の流れを乱す?どういう意味ですか?」
「元々、この聖痕は私の母、つまりはこの子の祖母から受け継いだ力。つまり、他人から受け取った能力よ。適性があれば自然と聖痕は身体に馴染み、完全に扱えるようになる。だけど、この子には適性はなかった……そのせいで今までは聖痕の力を使い切れなかった」
聖痕を手に入れてからはレナは風属性の魔法を強化、あるいは無効化する能力を手に入れた。しかし、本来の風の聖痕の適合者と比べると能力は格段に落ちており、それどころか聖痕のせいで体内の魔力が乱され、今までは本来の力を出し切れていなかった。
もう聖痕はレナにとっては大きな力ではなく、逆にレナの力を抑制する能力にしか過ぎない。マリアはレナの身体に触れた状態で意識を集中させ、聖痕からレナを解き放つ事にした。
(お母様……今、貴女の力を受け継ぐわ)
マリアが亡き母親の事を想い浮かべながらレナの右手を掴むと、次の瞬間に彼の身体の右肩に聖痕の紋様が浮き上がり、やがて聖痕が消え去るとマリアの手の甲に風の聖痕の紋様が浮き上がる。すると、マリアに聖痕が映った瞬間にレナは目を覚ます。
「うっ……ここは?」
「レナ、目が覚めたのか!!」
「身体は大丈夫か?」
「栄養剤でも打ちますか?丁度、私が調合したばかりのとっておきの奴がありますけど……」
「嫌な予感がするからいらないよ……」
レナは自分の周囲に大勢の人が集まっている事に気付き、少し驚きながらもベッドから起き上がると、自分の両手を見て不思議そうな表情を抱く。眠る前は気だるかった身体が楽になっており、心なしか身体が軽いように感じた。ハルナとの試合での疲れも吹き飛び、それどころか今までにないほどに自分の体内の魔力が溢れているように感じる。
「何か凄く身体が軽いんだけど……何かあったの?」
「貴方の身体から聖痕を摘出したわ。これでもう十分に戦えるはずよ」
「えっ……あ、本当だ。聖痕の力が使えないや」
「おいおい、それ大丈夫なのか?あのゴウライとかいう奴も聖痕の所有者なんだろう?」
マリアがの手の甲に浮かんだ聖痕を見てレナは驚き、寝ている間に聖痕の力を失っている事に気付いたレナは自分の右肩を掴んで聖痕の紋様が消えている事を知る。その様子を見てハルナは少し心配した声を上げるが、そんなハルナに対してマリアは首を振る。
「聖痕がないからといって聖痕を持つ人間に劣る道理はないわ。所詮は聖痕は魔力を増幅させるだけの力しか持ち合わせていない、分かりやすく言えば「才能」みたいな物よ」
「才能?聖痕が……?」
「聖痕がなくても魔法を極める事は出来るわ。才能があってもそれを開花させる努力を怠れば意味はない、だから貴女には風の聖痕は使い切れなかったのよ」
「うっ……耳が痛い」
レナは聖痕を入手した後も風属性の魔法には頼らず、基本的には他の属性の魔法を使い分けていた。そのせいでレナは聖痕の力を引き出せていなかったという理由もあるが、そもそもレナの肉体は風属性の適性が高いわけではないのも原因と言えた。
聖痕を手にしたとしてもそれを生かす努力を怠れば意味はなく、そういう意味ではレナは聖痕を使いこなせてはいなかった。真面目に風属性の魔法だけを極めようとしていれば適合率は低くてもレナも祖母のように聖痕を使いこなせる日が来たかもしれない。しかし、その選択をレナは出来なかった。
「なんか、身体が羽根の様に軽いな……叔母様が何かしてくれたの?」
「いいえ、お礼を言うならこの二人に言いなさい。貴方の魔力が完全に回復したのはこの二人のお陰よ」
「気にしなくていい、レナのためなら何だってする」
「……ここまで私達にさせたんだから、負けたら承知しないわよ」
誇らしげに親指を立てるコトミンと、その隣でシズネは少し気恥しそうに頬を赤く染めながら答えると、レナは笑みを浮かべる。そして空間魔法を発動させ、退魔刀を取り出すと背中に抱える。体調は万全、魔力も完全に復活した。後は最強の剣士に挑むだけだった。
「よし、じゃあ行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
「レナ、勝てよ!!」
「負けるんじゃねえぞっ!!」
「頑張れ!!」
皆からの声援を受けたレナは黙って右腕を上げ、医療室の扉から立ち去る。その様子をマリアとアイラは誇らしげな表情を浮かべ、アイラは涙ぐむ。そんな姉にマリアは語り掛ける。
「姉さん、貴女の息子は立派に成長したわね」
「ええ、たくましい後ろ姿だわ……あら?」
アイラはレナの後ろ姿を見送り、ここで不意に彼女は気配を感じて隣を振り返るが、そこには誰もいない。だが、アイラは何かを悟ったように微笑み、胸に手を当てて祈る。
(アリア……どうかあの子を見守ってあげて)
この世には存在しないレナにとっては一番大切だった女性の事を想い浮かべ、彼女達は観客席へと戻る事にした。
「ちょっと、待ちなさい。何をするつもりなの?」
「この子の身体から聖痕を切り離すのよ」
「えっ!?そ、そんな勝手な……」
「そうする事が一番なのよ」
レナの頭にマリアは手を伸ばすと、手を繋いでいたコトミンとシズネを下がらせて彼女は額に手を差し伸べる。意識を集中させるように目を閉じると、マリアはレナの体内の魔力の流れを感じとる。
「やはり、風の聖痕が体内の魔力の流れを乱していたのね。そのせいでレナは本来の力を発揮できていない」
「魔力の流れを乱す?どういう意味ですか?」
「元々、この聖痕は私の母、つまりはこの子の祖母から受け継いだ力。つまり、他人から受け取った能力よ。適性があれば自然と聖痕は身体に馴染み、完全に扱えるようになる。だけど、この子には適性はなかった……そのせいで今までは聖痕の力を使い切れなかった」
聖痕を手に入れてからはレナは風属性の魔法を強化、あるいは無効化する能力を手に入れた。しかし、本来の風の聖痕の適合者と比べると能力は格段に落ちており、それどころか聖痕のせいで体内の魔力が乱され、今までは本来の力を出し切れていなかった。
もう聖痕はレナにとっては大きな力ではなく、逆にレナの力を抑制する能力にしか過ぎない。マリアはレナの身体に触れた状態で意識を集中させ、聖痕からレナを解き放つ事にした。
(お母様……今、貴女の力を受け継ぐわ)
マリアが亡き母親の事を想い浮かべながらレナの右手を掴むと、次の瞬間に彼の身体の右肩に聖痕の紋様が浮き上がり、やがて聖痕が消え去るとマリアの手の甲に風の聖痕の紋様が浮き上がる。すると、マリアに聖痕が映った瞬間にレナは目を覚ます。
「うっ……ここは?」
「レナ、目が覚めたのか!!」
「身体は大丈夫か?」
「栄養剤でも打ちますか?丁度、私が調合したばかりのとっておきの奴がありますけど……」
「嫌な予感がするからいらないよ……」
レナは自分の周囲に大勢の人が集まっている事に気付き、少し驚きながらもベッドから起き上がると、自分の両手を見て不思議そうな表情を抱く。眠る前は気だるかった身体が楽になっており、心なしか身体が軽いように感じた。ハルナとの試合での疲れも吹き飛び、それどころか今までにないほどに自分の体内の魔力が溢れているように感じる。
「何か凄く身体が軽いんだけど……何かあったの?」
「貴方の身体から聖痕を摘出したわ。これでもう十分に戦えるはずよ」
「えっ……あ、本当だ。聖痕の力が使えないや」
「おいおい、それ大丈夫なのか?あのゴウライとかいう奴も聖痕の所有者なんだろう?」
マリアがの手の甲に浮かんだ聖痕を見てレナは驚き、寝ている間に聖痕の力を失っている事に気付いたレナは自分の右肩を掴んで聖痕の紋様が消えている事を知る。その様子を見てハルナは少し心配した声を上げるが、そんなハルナに対してマリアは首を振る。
「聖痕がないからといって聖痕を持つ人間に劣る道理はないわ。所詮は聖痕は魔力を増幅させるだけの力しか持ち合わせていない、分かりやすく言えば「才能」みたいな物よ」
「才能?聖痕が……?」
「聖痕がなくても魔法を極める事は出来るわ。才能があってもそれを開花させる努力を怠れば意味はない、だから貴女には風の聖痕は使い切れなかったのよ」
「うっ……耳が痛い」
レナは聖痕を入手した後も風属性の魔法には頼らず、基本的には他の属性の魔法を使い分けていた。そのせいでレナは聖痕の力を引き出せていなかったという理由もあるが、そもそもレナの肉体は風属性の適性が高いわけではないのも原因と言えた。
聖痕を手にしたとしてもそれを生かす努力を怠れば意味はなく、そういう意味ではレナは聖痕を使いこなせてはいなかった。真面目に風属性の魔法だけを極めようとしていれば適合率は低くてもレナも祖母のように聖痕を使いこなせる日が来たかもしれない。しかし、その選択をレナは出来なかった。
「なんか、身体が羽根の様に軽いな……叔母様が何かしてくれたの?」
「いいえ、お礼を言うならこの二人に言いなさい。貴方の魔力が完全に回復したのはこの二人のお陰よ」
「気にしなくていい、レナのためなら何だってする」
「……ここまで私達にさせたんだから、負けたら承知しないわよ」
誇らしげに親指を立てるコトミンと、その隣でシズネは少し気恥しそうに頬を赤く染めながら答えると、レナは笑みを浮かべる。そして空間魔法を発動させ、退魔刀を取り出すと背中に抱える。体調は万全、魔力も完全に復活した。後は最強の剣士に挑むだけだった。
「よし、じゃあ行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
「レナ、勝てよ!!」
「負けるんじゃねえぞっ!!」
「頑張れ!!」
皆からの声援を受けたレナは黙って右腕を上げ、医療室の扉から立ち去る。その様子をマリアとアイラは誇らしげな表情を浮かべ、アイラは涙ぐむ。そんな姉にマリアは語り掛ける。
「姉さん、貴女の息子は立派に成長したわね」
「ええ、たくましい後ろ姿だわ……あら?」
アイラはレナの後ろ姿を見送り、ここで不意に彼女は気配を感じて隣を振り返るが、そこには誰もいない。だが、アイラは何かを悟ったように微笑み、胸に手を当てて祈る。
(アリア……どうかあの子を見守ってあげて)
この世には存在しないレナにとっては一番大切だった女性の事を想い浮かべ、彼女達は観客席へと戻る事にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。