不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・闘技祭 本選編

聖痕から解き放つ

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「皆、下がりなさい。貴方達もよ」
「ちょっと、待ちなさい。何をするつもりなの?」
「この子の身体から聖痕を切り離すのよ」
「えっ!?そ、そんな勝手な……」
「そうする事が一番なのよ」


レナの頭にマリアは手を伸ばすと、手を繋いでいたコトミンとシズネを下がらせて彼女は額に手を差し伸べる。意識を集中させるように目を閉じると、マリアはレナの体内の魔力の流れを感じとる。


「やはり、風の聖痕が体内の魔力の流れを乱していたのね。そのせいでレナは本来の力を発揮できていない」
「魔力の流れを乱す?どういう意味ですか?」
「元々、この聖痕は私の母、つまりはこの子の祖母から受け継いだ力。つまり、他人から受け取った能力よ。適性があれば自然と聖痕は身体に馴染み、完全に扱えるようになる。だけど、この子には適性はなかった……そのせいで今までは聖痕の力を使い切れなかった」


聖痕を手に入れてからはレナは風属性の魔法を強化、あるいは無効化する能力を手に入れた。しかし、本来の風の聖痕の適合者と比べると能力は格段に落ちており、それどころか聖痕のせいで体内の魔力が乱され、今までは本来の力を出し切れていなかった。

もう聖痕はレナにとっては大きな力ではなく、逆にレナの力を抑制する能力にしか過ぎない。マリアはレナの身体に触れた状態で意識を集中させ、聖痕からレナを解き放つ事にした。


(お母様……今、貴女の力を受け継ぐわ)


マリアが亡き母親の事を想い浮かべながらレナの右手を掴むと、次の瞬間に彼の身体の右肩に聖痕の紋様が浮き上がり、やがて聖痕が消え去るとマリアの手の甲に風の聖痕の紋様が浮き上がる。すると、マリアに聖痕が映った瞬間にレナは目を覚ます。


「うっ……ここは?」
「レナ、目が覚めたのか!!」
「身体は大丈夫か?」
「栄養剤でも打ちますか?丁度、私が調合したばかりのとっておきの奴がありますけど……」
「嫌な予感がするからいらないよ……」


レナは自分の周囲に大勢の人が集まっている事に気付き、少し驚きながらもベッドから起き上がると、自分の両手を見て不思議そうな表情を抱く。眠る前は気だるかった身体が楽になっており、心なしか身体が軽いように感じた。ハルナとの試合での疲れも吹き飛び、それどころか今までにないほどに自分の体内の魔力が溢れているように感じる。


「何か凄く身体が軽いんだけど……何かあったの?」
「貴方の身体から聖痕を摘出したわ。これでもう十分に戦えるはずよ」
「えっ……あ、本当だ。聖痕の力が使えないや」
「おいおい、それ大丈夫なのか?あのゴウライとかいう奴も聖痕の所有者なんだろう?」


マリアがの手の甲に浮かんだ聖痕を見てレナは驚き、寝ている間に聖痕の力を失っている事に気付いたレナは自分の右肩を掴んで聖痕の紋様が消えている事を知る。その様子を見てハルナは少し心配した声を上げるが、そんなハルナに対してマリアは首を振る。


「聖痕がないからといって聖痕を持つ人間に劣る道理はないわ。所詮は聖痕は魔力を増幅させるだけの力しか持ち合わせていない、分かりやすく言えば「才能」みたいな物よ」
「才能?聖痕が……?」
「聖痕がなくても魔法を極める事は出来るわ。才能があってもそれを開花させる努力を怠れば意味はない、だから貴女には風の聖痕は使い切れなかったのよ」
「うっ……耳が痛い」


レナは聖痕を入手した後も風属性の魔法には頼らず、基本的には他の属性の魔法を使い分けていた。そのせいでレナは聖痕の力を引き出せていなかったという理由もあるが、そもそもレナの肉体は風属性の適性が高いわけではないのも原因と言えた。

聖痕を手にしたとしてもそれを生かす努力を怠れば意味はなく、そういう意味ではレナは聖痕を使いこなせてはいなかった。真面目に風属性の魔法だけを極めようとしていれば適合率は低くてもレナも祖母のように聖痕を使いこなせる日が来たかもしれない。しかし、その選択をレナは出来なかった。


「なんか、身体が羽根の様に軽いな……叔母様が何かしてくれたの?」
「いいえ、お礼を言うならこの二人に言いなさい。貴方の魔力が完全に回復したのはこの二人のお陰よ」
「気にしなくていい、レナのためなら何だってする」
「……ここまで私達にさせたんだから、負けたら承知しないわよ」


誇らしげに親指を立てるコトミンと、その隣でシズネは少し気恥しそうに頬を赤く染めながら答えると、レナは笑みを浮かべる。そして空間魔法を発動させ、退魔刀を取り出すと背中に抱える。体調は万全、魔力も完全に復活した。後は最強の剣士に挑むだけだった。


「よし、じゃあ行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
「レナ、勝てよ!!」
「負けるんじゃねえぞっ!!」
「頑張れ!!」


皆からの声援を受けたレナは黙って右腕を上げ、医療室の扉から立ち去る。その様子をマリアとアイラは誇らしげな表情を浮かべ、アイラは涙ぐむ。そんな姉にマリアは語り掛ける。


「姉さん、貴女の息子は立派に成長したわね」
「ええ、たくましい後ろ姿だわ……あら?」


アイラはレナの後ろ姿を見送り、ここで不意に彼女は気配を感じて隣を振り返るが、そこには誰もいない。だが、アイラは何かを悟ったように微笑み、胸に手を当てて祈る。


(アリア……どうかあの子を見守ってあげて)


この世には存在しないレナにとっては一番大切だった女性の事を想い浮かべ、彼女達は観客席へと戻る事にした。
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