不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,137 / 2,091
真・闘技祭 本選編

あどけない寝顔

しおりを挟む
「――レナ、まだ寝てる」
「呑気な奴だな……これから決勝戦なのに」
「試合が終わってからずっと眠ってるそうだ」
「そう……なら、私の試合は見られていないのね」


医療室にてレナの仲間達は集まり、ベッドの上に眠りこけるレナの様子を伺う。準決勝を終えてからずっと眠っており、子供の様にあどけない寝顔だった。忘れがちではあるが、まだレナは16才の少年であり、この世界の人間の基準では成人だが、森人族の基準ではまだまだ子供である。


「酷い奴だな、シズネがあんなに頑張って戦っていたのに眠りこけてみないなんて……」
「……むしろ、見たくなかったのじゃないかしら」
「どういう意味だ?」
「忘れたの?さっきの試合で私が勝っていれば、決勝戦で戦うのは私だったのよ」


シズネの言葉にダイン達は驚いた表情を浮かべ、眠っているレナの手をシズネは握りしめると、何処か憑き物が落ちたような表情をしていた。試合に負けた事は悔しいが、同時に全力を出し切って満足している自分がいる事に気付いていた。


「父の仇を討てなかったのは悔しいけど、私は全力を出し切れたわ……もしも、決勝戦に勝ち残っていたとしてもはっきり言って私は本気で戦う事は出来なかったでしょうね」
「ど、どうしてだよ?仲間を傷つけるのは嫌だからか?」
「いいえ……想い人を相手に本気で戦うなんて私には無理よ」
「シズネ……」


遂に他の人間の前でも隠さずにレナに好意がある事をシズネが伝えると、そんな彼女にコトミンは微笑み、レナの逆の腕を掴む。


「シズネ、レナに力を貸す」
「力を貸す?どういう意味かしら?」
「私達の力でレナを癒す」
「癒す?私にそんな力は……」
「大丈夫、出来る」


コトミンはシズネと共いレナの掌を掴み、今回は水も無しで回復魔法を発動させる。その様子を見てシズネも戸惑いながらも掌を握りしめると、彼女の中の水の聖痕が発動して二人の掌に青色の光が輝く。

掌を通してレナの体内に二人分の魔力が送り込まれ、徐々に疲労状態だったレナの肉体が回復しているのか、より安らいだ表情を浮かべる。その様子をダインは黙って見ていたが、ぽつりと呟く。


「え?でも、精霊薬を飲めば……」
「ダイン、無粋だぞ」
「そういう所があるからモテないんですよ」
「うわっ!?い、何時の間にいたんだリーリス!?」
「今はイリアですよ」
「私もいますよ~」


医療室にはイリアの姿が存在し、その後ろにはホネミンも経っていた。唐突に現れた二人にダインは驚くが、続々と扉の方から他の者達も現れた。


「レナたん、いる!?励ましに来たよ!!」
「レナちゃん、決勝戦頑張ってね!!」
「レナ、よくここまで勝ち残ったね!!あとはあのゴウライをぶっ飛ばして黒虎の名前を世界中に広めな!!」
「3人とも静かに入りなさい。他に休んでいる人がいたらどうするの?それとバル、レナはうちのギルドにも所属しているのよ」
「ティナたちまで……」


特等席で応援していたティナ達も駆けつけ、横たわっているレナの元へ急ぐ。更には天井からもハンゾウとカゲマルが現れ、部屋の中に降り立つ。


「レナ殿、拙者の里の秘伝の薬を持って来たでござる!!これを飲めば一気に回復するでござる!!」
「いや、どうやらその必要はないようだな」
「ハンゾウにカゲマルまで!?」
「おい、レナ!!起きてるか!?あたしに勝ったんだから、あんな鎧女に負けるなよ!!」
「ハルナも!?」


派手に扉を吹き飛ばしながら若干怒った風にハルナも入り込み、部屋の中に存在する者たちを見て驚くが、そんなハルナの後ろから氷雨に所属する剣聖たちも姿を現す。


「坊主、起きてるか?」
『……何だ、もう先客がいたのか』
「レナ様、頑張ってください!!必ず勝ってくださいね!!」
「…………」
「いや、ロウガ!!お前も何か言えよ!!」
「騒がしいですね」
「……うるさい奴等だ」


剣聖であるシュン、ハヤテ、ジャンヌ、ロウガも訪問し、更にその後ろからは六聖将であるホムラとツバサも続く。本来は対立関係にある二人だが、自分を打ち破った者に関しては思う所があるらしく、赴いてきたらしい。

ツバサはベッドに横たわるレノに視線を向け、ホムラはシズネの方を一瞥すると、何も言わずにレノを見下ろす。そんな二人に対して周囲の者は押し黙ると、ホムラが口を開く。


「ゴウライの事を頼む……私ではあいつを救えなかった」
「えっ?」
「……じゃあな、もう会う事もないだろう」


ホムラは眠っているレナに言葉を伝えると、彼女は立ち去る。その様子をツバサはため息を吐きながら見送り、彼女はレナの額に掌を押し当てると瞼を閉じる。その行為の意図が読めずに周囲の者は戸惑うが、すぐにマリアは何かを勘付いたようにツバサの元へ向かう。


「……聖痕を感じているのね」
「ええ、試合で戦った時から違和感はありました。やはりというべきか、この子の身体には風の聖痕は適合していないようです」
「えっ!?どういう意味だよ!?」


風の聖痕がレナの身体に適合していないという言葉にダインは驚き、他の者達も気になってツバサに顔を向けると、彼女はマリアに振り返る。マリアが頷くのを確認すると説明を行う。
しおりを挟む
感想 5,095

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。