不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

閑話 《囚われのキラウ》

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「――忌々しい夢ね」


薄暗い部屋の中でキラウは目を覚まし、彼女は両手と両足に鎖で拘束された状態で横たわっていた。大罪人である彼女は現在はヨツバ王国に囚われており、恐らくは死ぬまでは解放される事はない。彼女の両目は失われ、もう二度と戻る事はない。

本来であるならばキラウは処刑されてもおかしくはないが、彼女の母親であるハヅキは数多くの功績を残しており、また現在のハヅキ家の当主であるマリアが彼女の処刑に反対した。どうしてマリアがキラウを庇ったのかと言うと、亡き母親がキラウが死ぬ事を望んでいないと思ったからである。

ヨツバ王国はキラウを一生地下牢の中に閉じ込める事を決め、現在の彼女は魔封じの効果を持つ鎖に拘束されて暗い地下の中で閉じ込められていた。だが、仮に明るい場所に閉じ込められたとしても今の彼女には関係ない。もう両目を失ったキラウは光を見る事はできない。


「あの時の子供、やはり似ている……」


昔の夢を見たキラウは自分をこんな状態にまで追い詰めたレナと、昔に自分と戦った少年が瓜二つである事を思い出す。今の今まで忘れていたのが不思議な程であり、彼女はため息を吐き出す。


(……いい加減にここも飽きてきたわね)


地下牢の中でキラウは退屈を感じ、そろそろこの場所から抜ける方法を考えた。魔封じの鎖で彼女は魔法は使えないが、鎖から抜け出す事ができればどうにでもなる。


「……まずは両目を何とかしないといけないわね」


魔眼を失ったキラウは自分の新しい両目の代わりを手に入れるつもりだった。彼女は普通の人間ではなく、誰かから目を奪ってそれを自分に嵌め込めば自分の物にできる。だから七魔将のメデューサの魔眼も手に入れる事ができた。


(満月が近い……外に出られれば後はどうにでもなる)


キラウは本格的に脱出への計画を考える中、地下牢に足音が鳴り響く。食事の時にしか兵士はこの場所にはやってこないため、鳴り響く足音にキラウは不思議に思う。


(誰かが近付いている?マリア?それとも……)


この場所に兵士以外に訪れる者はマリアぐらいしかおらず、定期的に彼女はキラウの様子を確認しに訪れる。マリアはキラウの事は嫌ってはいるが、母親のためにキラウの面倒を見ており、定期的に訪れて彼女が生きているのかを確かめていた。

マリアが訪れる時は常に誰かが傍にいるので複数の足音が聞こえるはずだが、今回は足音の数は一人だけだった。キラウは身体を起き上げると、誰が訪れたのかを尋ねた。


「誰かしら?私に何か用?」
「……貴女がキラウね」
「その声は……」


聞えてきた声にキラウは不思議に思い、地下牢に訪れたのはもう一人の妹のアイラだった。バルトロス王国で暮らす彼女がここに居る事にキラウは驚くが、アイラはキラウの姿を見て痛々しそうな表情を浮かべる。


「私の名前はアイラ……貴女の妹という事になるわね」
「アイラ……忌々しい名前ね」


アイラという名前にキラウは表情を歪ませ、その名前は彼女にとっては呪いに等しい。ハヅキ家では長女はアイラという名前を受け継ぐ事が決まっており、かつてはキラウもアイラという名前だった。


「どうして貴女がここへ来たのかしら?優秀な妹に連れて来てもらったのかしら?」
「その通りよ。マリアの転移魔法でここまで連れて来てもらったわ」
「そう、貴女の事はよく知っているわ。夫に見限られた哀れな女だとね」
「…………」


キラウはアイラの事は噂で知っており、彼女はレナを産んだがために国を追い出されてしまう。実際の所は深淵の森で彼女は隔離されていただけだが、事情を知らない人間からすればアイラは国から追放されたとしか思えない。しかし、だからこそキラウはアイラに対して同情していた。


「お互いに苦労するわね……追放される気持ちはよく分かるわ」
「……姉さん」
「私を姉と呼ぶのは止めなさい。もう私はハヅキ家のアイラじゃない……吸血鬼のキラウよ」


自分の事を姉として呼ぶアイラにキラウは否定し、もう彼女は自分を追い出したハヅキ家を家族とは認めない。いくら彼女の母親が自分を追い出した事に後悔していたとしても、彼女は母親の事を許すつもりはない。

しかし、お互いに国から追放された立場としてキラウはアイラに対してはマリア程の敵意を感じず、彼女が憎きレナの母親だとしても恨むつもりはない。レナに敗れたせいで自分がこんな目に遭いながらも、彼女は何処かレナの事を認めていた。


「……良い息子を持ったわね」
「えっ……」
「でも、優れた力を持つ者は必ず利用しようとする者も現れる……せいぜい気を付けなさい」
「……私が守ってみせるわ」


キラウの言葉を聞いてアイラはレナの事を守ると誓うが、そんな彼女にキラウは笑みを浮かべた――
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