不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

黒血

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「うぐぅっ……ぶはぁっ!?」
「うわぁっ!?」
「な、何だ!?急にどうしたんだい!?」


二人組の片方が唐突に吐血すると、黒色の血を吐き出した。それを見たダインは目を見開き、血の正体に気付いて全員に離れさせようとした。


「まさか……黒血!?やばい!!皆離れろっ!!」
「えっ!?」
「こっけつ!?」
「どういう……うおっ!?」


ダインは杖を自分の影に押し当てると、影魔法を発動させてバル、ミイネ、ゴンゾウを強制的に弾き飛ばす。いきなり吹き飛ばされた三人は床に倒れ込み、ダインだけが捕まえた男達の前に立ち尽くす。


「あいたた……ダイン!?あんたいきなり何をするんだい!?」
「いててっ……何のつもりですか!?」
「どうしたダイン!?」
「いいから離れてろって!!こいつはもう……」
「うぎゃああああっ!?」


黒色の血を吐き出した男の身体が唐突に膨らみ始め、それを見たダインは焦りの表情を浮かべる。様子を見ていた三人も男が普通ではないことに気が付き、ダインに下がるように命じた。


「ダイン!!そいつから早く離れな!?」
「いったい何が起きてるんですか!?」
「ダイン!!」
「くっ……間に合えっ!!」


ダインは膨らみ始めた男の前で影人形を生み出し、巨人族並の大きさの影人形で男の身体に抱きつかせた。男は風船のように膨らんだ身体を抑えつけられ、断末魔の悲鳴をあげながら破裂した。



――あああああああっ!!



男の悲鳴がギルド中に響き渡り、直後に破裂音が広がった。男の身体は内側から爆発されたかのように木っ端みじんとなり、大量の黒血が飛び出す。事前にダインが影魔法で男の身体を抱きつかせていたお陰で大部分の黒血は抑えられたが、それでも床や壁に広がる。

バルたちはダインが突き飛ばしたお陰で黒血を浴びることはなかったが、もう一人の捕まえ男に黒血が飛び散る。男は黒血を浴びた途端、触れた箇所が黒色化して悲鳴をあげる。まるで呪詛に侵された時と同様に男の身体はミイラのように萎れていく。


「ぎゃああああっ!?」
「うわっ!?な、何が起きているんだい!?」
「大丈夫か!?」
「触るなゴンゾウ!!そいつはもう手遅れだ!!」
「そんな……」


ゴンゾウは悲鳴をあげて床に倒れ込んだ男に駆けつけようとしたが、ダインが影人形を操作して彼の前に立ち塞がる。ダインは慎重に苦しんでいる男の元に近付き、既に全身の皮膚が黒色化していた。これではどんな回復魔法もっ薬も受け付けず、死ぬのを待つしかない。


「くそっ……こいつらは呪われてたんだ」
「ダイン、どういうことだ!?」
「黒血と言ってましたね。いったい何なんですかそれは?」
「あたしも聞いたことがないよ」


バルでさえも黒血の名前すら知らず、いったい暗殺者たちの身体に何が起きたのかを尋ねると、ダインは悔し気な表情を浮かべながら全てを話した。


「皆が黒血のことを知らないのは当たり前なんだ。呪術師が生み出す術の中には人間の体内に死霊石を封じ込めて、生者の肉体を呪詛で侵す恐ろしい術があるんだ。体内から呪詛に侵された人間は血の色が黒色化して身体が破裂する……しかも飛び出した黒血にも呪詛が混じっているからそれを浴びた人間も無事じゃ済まない」
「そんなやばい術があるのかい!?」
「呪術師の噂は聞いたことがありますが、具体的にどんな術を使うのかは知りませんでした」
「ダイン……こいつはもう助からないのか?」


呪術師の存在を知る者は少なく、彼等が扱う術の多くも謎に包まれている。ダインはシャドウ家の人間だったので呪術師の扱う術は把握していたが、一般には知れ渡っていないのでバルたちが知らないのも仕方がなかった。ゴンゾウは苦痛の表情を浮かべながら動かない男を憐れむが、こうなってしまったらどんな人間でも助けられない。


「回復魔法はあくまでも自然治癒力を高める魔法なんだ。でも、呪詛で内側から侵された人間は身体を再生させる機能が最初に壊されるんだ……だから最初に死んだ奴はどうしようもできなかった。こいつもせめて黒血を浴びすぎていなければ何とか助けられたかもしれないけど、全身にここまで呪詛が広がったらもう無理なんだ」
「そうか……せめて苦しませずに楽に逝かせるべきか?」
「それも駄目だ!!死んだらこいつはさっきの奴みたいに破裂する可能性がある……可哀想だけど放っておくしかないんだ!!」


ダインは悔しそうに杖を握りしめ、彼もこんな形で人が死んでいくのを黙って見てはいたくなかった。しかし、どれだけ悔してもダイン達には男を救う手立てはなく、最初に死んだ男のように身体が破裂する前に離れるしかなかった。

男が事切れる前にダイン達は安全な場所に避難しようとすると、唐突に男は口元に笑みを浮かべた。既に男の身体は死にかけているはずだが、何故か不敵な笑みを浮かべる男にミイネはいち早く気付いてダインに注意する。
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