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蛇足編
閑話 《黄金鎧の封印》
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――マリアの手によって回収された黄金鎧(ビキニアーマー)は密かに冒険都市に送られ、ハヅキ家の秘宝を隠し通すためにマリアは苦難する。
「やはりレナに預けるのは駄目ね……もしも姉さんが黄金鎧のことを知ったらレナに出させようとするわ。優しいあの子が母親の頼みを断れるとは思えないわ」
「それならば拙者の国、和国に預けるのはどうでござるか?マリア殿の頼みならばヨシテル将軍も快く引き受けてくれるでござる」
「あの伊達男に借りを作るのは癪に障るわね」
「伊達男……」
持ち帰った黄金鎧を前にしてマリアは困り果て、彼女は氷雨のギルドの秘密の地下室に黄金鎧を保管していた。本音を言えば最上級魔法で消し去りたいが、流石に先祖が造り上げた家宝を破壊するような真似は避けたい。
黄金鎧をアイラの手に届かぬ場所に封じる方法を考え、一番の方法はレナのような収納魔法(空間魔法)の使い手に黄金鎧を預けるか、あるいは収納石などの魔道具に預けて封印することである。しかし、この黄金鎧は見た目通りに相当な重量を誇り、巨人族でも簡単には持ち上げられない。
「しかし、恐ろしく重い鎧でござるな……ここまで運ぶのは苦労したでござる。伝承では羽根のように軽いと伝わっているそうでござるが、実際はかなり重かったでござる」
「もしかしたら何らかの仕掛けで装着しないと軽くならないのかもしれん。装備しない限りは重い鎧のままだとすれば、これだけの重量の物体を異空間に収める収納咳となると簡単には用意できません」
「分かっているわ。だから悩んでいるのよ」
一般に発売されている収納石は重量が100キロ程度の物しか収納できず、黄金鎧は100キロ以上の重さを誇るので預けることができなかった。市販の物よりも効果が高い収納石を用意するのも時間が掛かり、収納石の類で黄金鎧を保管するのは難しい。
「いっそのこと、誰かに預けたらどうでござる?リンダ殿ならば着こなせるかも……」
「それは駄目よ。もしも姉さんがレナのところに遊びに来たら黄金鎧に気付いてしまうわ。この黄金鎧はハヅキ家の紋章が刻まれているのだからすぐに正体に勘付かれる」
「ならばヨツバ王国の国王に事情を話して預けるのは……」
「そんなことをしたらハヅキ家の恥を話すようなものでしょう!!代々の当主がこんな物を着ていたなんて……」
「は、恥と言わずとも……」
珍しくマリアは取り乱し、そんな彼女をカゲマルとハンゾウは宥める。黄金鎧を封印する一番の方法はアイラの手の届かない場所に封じることなのだが、良案は思いつかない。
「いったいどうすれば……こんなことをしている間にも姉さんに嗅ぎつかれてしまうかもしれないわ」
「まさか、それはないでござるよ。黄金鎧のことは誰にも話していないし、そもそもここは氷雨の関係者以外は入れないでござる」
「その通りです。いくらアイラ殿でもここまでは……」
「いいえ、姉さんを舐めてはいけないわ。すぐそこまで来ているかもしれない……はっ!?」
「マリア殿?」
マリアは顔色を青くして振り返ると、何者かの足音が鳴り響いた。この場所には誰も立ち寄ることを禁じているはずなのに足音が聞えてきたことに驚き、カゲマルとハンゾウは慌てて身構える。
「ば、馬鹿な!?」
「まさか本当にアイラ殿がここまで!?」
「……いえ、違うわ」
警戒する二人に対してマリアは安心した表情を浮かべ、現れたのはシュンだった。彼は秘密の地下倉庫の前にいる3人に気付いて腕を上げた。
「おう、嬢ちゃん。ここにいたのか」
「シュン!?何故貴様がここに……」
「いきなりどうしたのでござるか?」
「いや、実は嬢ちゃんに用があってな」
「……驚かせないで頂戴」
シュンの顔を見て3人は安堵したが、次の彼の言葉に固まってしまう。
「実はアイラの嬢ちゃんがここに来てるんだよ。なんでもマリアの嬢ちゃんに会いに来たとか……とりあえずは嬢ちゃんの部屋で待たせているけどどうする?」
「ね、姉さんがここに!?」
「ど、どうするのでござる!?」
「落ち着け、まだ鎧のことは気づかれていないはずだ!!」
こんな時にアイラが訪れたことに全員が慌てふためき、事情を知らないシュンは不思議に思う。彼は奥の倉庫に視線を向け、黄金鎧の存在に気が付いて驚いた。
「な、何だこの鎧!?まさか嬢ちゃんの趣味……」
「はあっ!!」
「ぎゃああっ!?」
「シュン殿!?」
「シュン!?」
マリアは無詠唱で強烈な光の魔弾を放ち、それを受けたシュンは吹き飛ぶ。それを見たハンゾウとカゲマルは焦るが、一番追い詰められていたのはマリアだった。彼女は全身から汗を流し、姉がすぐ傍まで来ていることに動揺を隠せない。
吹き飛ばされたシュンは目を回しながら床に倒れ、しばらくの間は起きそうになかった。その横をマリアは通り過ぎると、虚ろな瞳で杖を握りめながらぶつぶつと呟く。
「姉さんに気付かれる前に何とかしないと……良いことを思いついたわ、黄金鎧なんて元々存在しなかったのよ。事故で壊れたことにしましょう。私の最上級魔法で溶かし尽くせば……」
「マリア殿落ち着いて!!」
「杖を置いて下さいマリア様!?」
暴走しかけるマリアをハンゾウとカゲマルは必死に引き留め、とりあえずはアイラの元へ向かうことにした。
※アイラ「何故かしら、身体がぴりぴりするわ……まさか、この近くに極上のビキニアーマーが!?」
カタナヅキ「壁|д゚)エエッ……」
「やはりレナに預けるのは駄目ね……もしも姉さんが黄金鎧のことを知ったらレナに出させようとするわ。優しいあの子が母親の頼みを断れるとは思えないわ」
「それならば拙者の国、和国に預けるのはどうでござるか?マリア殿の頼みならばヨシテル将軍も快く引き受けてくれるでござる」
「あの伊達男に借りを作るのは癪に障るわね」
「伊達男……」
持ち帰った黄金鎧を前にしてマリアは困り果て、彼女は氷雨のギルドの秘密の地下室に黄金鎧を保管していた。本音を言えば最上級魔法で消し去りたいが、流石に先祖が造り上げた家宝を破壊するような真似は避けたい。
黄金鎧をアイラの手に届かぬ場所に封じる方法を考え、一番の方法はレナのような収納魔法(空間魔法)の使い手に黄金鎧を預けるか、あるいは収納石などの魔道具に預けて封印することである。しかし、この黄金鎧は見た目通りに相当な重量を誇り、巨人族でも簡単には持ち上げられない。
「しかし、恐ろしく重い鎧でござるな……ここまで運ぶのは苦労したでござる。伝承では羽根のように軽いと伝わっているそうでござるが、実際はかなり重かったでござる」
「もしかしたら何らかの仕掛けで装着しないと軽くならないのかもしれん。装備しない限りは重い鎧のままだとすれば、これだけの重量の物体を異空間に収める収納咳となると簡単には用意できません」
「分かっているわ。だから悩んでいるのよ」
一般に発売されている収納石は重量が100キロ程度の物しか収納できず、黄金鎧は100キロ以上の重さを誇るので預けることができなかった。市販の物よりも効果が高い収納石を用意するのも時間が掛かり、収納石の類で黄金鎧を保管するのは難しい。
「いっそのこと、誰かに預けたらどうでござる?リンダ殿ならば着こなせるかも……」
「それは駄目よ。もしも姉さんがレナのところに遊びに来たら黄金鎧に気付いてしまうわ。この黄金鎧はハヅキ家の紋章が刻まれているのだからすぐに正体に勘付かれる」
「ならばヨツバ王国の国王に事情を話して預けるのは……」
「そんなことをしたらハヅキ家の恥を話すようなものでしょう!!代々の当主がこんな物を着ていたなんて……」
「は、恥と言わずとも……」
珍しくマリアは取り乱し、そんな彼女をカゲマルとハンゾウは宥める。黄金鎧を封印する一番の方法はアイラの手の届かない場所に封じることなのだが、良案は思いつかない。
「いったいどうすれば……こんなことをしている間にも姉さんに嗅ぎつかれてしまうかもしれないわ」
「まさか、それはないでござるよ。黄金鎧のことは誰にも話していないし、そもそもここは氷雨の関係者以外は入れないでござる」
「その通りです。いくらアイラ殿でもここまでは……」
「いいえ、姉さんを舐めてはいけないわ。すぐそこまで来ているかもしれない……はっ!?」
「マリア殿?」
マリアは顔色を青くして振り返ると、何者かの足音が鳴り響いた。この場所には誰も立ち寄ることを禁じているはずなのに足音が聞えてきたことに驚き、カゲマルとハンゾウは慌てて身構える。
「ば、馬鹿な!?」
「まさか本当にアイラ殿がここまで!?」
「……いえ、違うわ」
警戒する二人に対してマリアは安心した表情を浮かべ、現れたのはシュンだった。彼は秘密の地下倉庫の前にいる3人に気付いて腕を上げた。
「おう、嬢ちゃん。ここにいたのか」
「シュン!?何故貴様がここに……」
「いきなりどうしたのでござるか?」
「いや、実は嬢ちゃんに用があってな」
「……驚かせないで頂戴」
シュンの顔を見て3人は安堵したが、次の彼の言葉に固まってしまう。
「実はアイラの嬢ちゃんがここに来てるんだよ。なんでもマリアの嬢ちゃんに会いに来たとか……とりあえずは嬢ちゃんの部屋で待たせているけどどうする?」
「ね、姉さんがここに!?」
「ど、どうするのでござる!?」
「落ち着け、まだ鎧のことは気づかれていないはずだ!!」
こんな時にアイラが訪れたことに全員が慌てふためき、事情を知らないシュンは不思議に思う。彼は奥の倉庫に視線を向け、黄金鎧の存在に気が付いて驚いた。
「な、何だこの鎧!?まさか嬢ちゃんの趣味……」
「はあっ!!」
「ぎゃああっ!?」
「シュン殿!?」
「シュン!?」
マリアは無詠唱で強烈な光の魔弾を放ち、それを受けたシュンは吹き飛ぶ。それを見たハンゾウとカゲマルは焦るが、一番追い詰められていたのはマリアだった。彼女は全身から汗を流し、姉がすぐ傍まで来ていることに動揺を隠せない。
吹き飛ばされたシュンは目を回しながら床に倒れ、しばらくの間は起きそうになかった。その横をマリアは通り過ぎると、虚ろな瞳で杖を握りめながらぶつぶつと呟く。
「姉さんに気付かれる前に何とかしないと……良いことを思いついたわ、黄金鎧なんて元々存在しなかったのよ。事故で壊れたことにしましょう。私の最上級魔法で溶かし尽くせば……」
「マリア殿落ち着いて!!」
「杖を置いて下さいマリア様!?」
暴走しかけるマリアをハンゾウとカゲマルは必死に引き留め、とりあえずはアイラの元へ向かうことにした。
※アイラ「何故かしら、身体がぴりぴりするわ……まさか、この近くに極上のビキニアーマーが!?」
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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