最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

文字の大きさ
118 / 207
ゴブリンキング編

反発作用

しおりを挟む
「……がはぁっ……!?」


レナは全身に激痛が走り、それでも何とか身体を起き上げて両腕を確認すると、そこには酷い火傷を負った両手が存在し、危うく腕が消し飛ぶ所だった。実際に指が全て折れており、異様な方向に曲がっていた。腕以外の部分は「退魔のローブ」を着こんでいたお蔭なのか大きな損傷はないが、それでも身体を動かす度に痛みが走る。


聖属性エンチャット……」


まずは治療を行うために全身に聖属性の魔法を発動させ、身体の治療を行う。時間を巻き戻すようにレナの両手の傷が治癒され、全身の激痛も和らぐ。一息吐いてレナは鞄から陽光教会から渡された聖水を取り出し、一気に飲み干す。吸魔石で生み出した聖水よりも効果が高いため、傷の治療と魔力の回復を同時に行い、体力の方も僅かながらに回復した。


「死ぬ所だった……アイリィの忠告を無視した結果がこれか」


頭を掻き分けながらレナは自分の迂闊な行動に大きな溜息を吐きだし、魔法同士の「反発作用」の恐ろしさを自分の身で確かめる。間違ってもこれからは自分の両手で反発作用を試さないように気を付け、レナは立ち上がる。


「だけど……凄い威力だったな」


危うく両腕が消し飛びかけた威力を思い返し、この反発作用ならばゴブリンキングにも通じる可能性は高い。少なくとも現時点のレナが生み出せる攻撃よりも威力が高く、この現象を利用出来ればゴブリンキングを倒せるかも知れない。


「でも両手でやるのはもう勘弁だな……他の方法を利用出来ないかな」


レナが最初に考え付いたのは投擲魔法であり、複数の魔法を同時に発動して相手に向けて放り込み、反発作用を引き起こす方法を考えた。だが、先ほど両手で試した時は反発作用が発動するには数秒程度掌を重ね合わせており、魔石同士を上手く重ね合わせなければ反発作用は引き起こせないだろう。

反発作用が発動する条件は別属性同士の魔法を衝突させる事であり、しかも完全に発動するまで数秒程度の時間が掛かる。この数秒というのが問題であり、レナの投擲魔法は魔石に付与魔法を施し、相手に投擲して魔石の魔力を暴発させるのだが、当然だがこの方法の場合は一瞬で魔石が崩壊してしまう。吸魔石の場合でも一瞬で魔力を使い切ってしまう為、反発作用を引き起こすのは難しい。


「どうにか出来ないかな……」


両手に火属性と雷属性の付与魔法を発動させ、今更ながらにレナは無詠唱でも魔法が発動できる事に気付き、ステータスを確認すると先ほどの付与魔法で雷属性の熟練度が「5」に上昇しており、どうやら熟練度の限界値の半分まで迎えると無詠唱で発動できる事が判明した。


「あっ……そうだ。こいつを利用出来ないかな?」


久しぶりに元の世界の硬貨を取り出し、最近は利用しなかったが最初の頃は「完全魔法耐性」の能力を身に着けている硬貨に付与魔法を施して熟練度を上昇させていたが、吸魔石を購入してからはあまり使用する機会が無かった。この硬貨を利用して聖属性の付与魔法を施し、相手に閃光を放って目晦ましを行っていた事を思い出し、この硬貨ならば反発作用でも耐える事が出来るかも知れない。


「まずは……雷属性」


硬貨に電流を纏わせ、間違っても掌に発動している付与魔法を消さないように気を付ける。この状態ならば電流の影響を受けないのは先ほどの実験で確認済みであり、続いてレナは電流を帯びている硬貨に左手を近づけ、今度は火属性ではなく、風属性を発動した。相性的には雷属性は風属性に弱いのだが、別に相性が悪くても反発作用の発動には問題ない(規模と威力は縮小されるが)。


「風属性」


右手に掴んでいる硬貨に滅多に扱わない風属性の付与魔法を発動させた瞬間、硬貨が渦巻き状の風を纏い、電流が飲み込まれる。そして3~4秒程時間が経過すると硬貨が光り輝き、レナは危険を察知して空中に放り投げる。


「うわっ!?」


硬貨が上空に放り投げた瞬間、空中で閃光が迸り、光の衝撃波が誕生する。先ほどと比べると衝撃波は小さいが、それでも十分な威力であり、レナは地面に落ちた硬貨に視線を向ける。完全魔法耐性のお蔭なのか硬貨自体は無傷であり、気を付けて拾い上げる。


「やった……これなら勝てるかも知れない」


吸魔石を利用した投擲魔法よりも明らかに威力が高く、この反発作用を利用した方法ならばゴブリンキングを倒せる可能性が生み出された。問題なのは炭鉱からどうやってゴブリンキングを招きだすかであり、下手に坑道で利用したら落盤する可能性がある。


「いや、それよりも皆に相談しないとな……」


まずは他の人間の意見を聞くため、レナは硬貨を握りしめて陽光教会に戻る事に決めた。
しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...