伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ

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エルフの師弟

第32話 黒渦の性質

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「エリナ、そこに落ちている石を投げてくれない?」
「え?これの事っすか?」
「ナイ、いきなり何を……」
「ごめん、どうしても確かめないといけないんだ」


エリナは足元の石を拾い上げると、言われた通りにナイの元に向けて放り込む。自分に迫る石にナイは掌を構えて黒渦を発現させた。


(もしも俺の考えが正しければ……)


黒渦を掌に生み出した状態でナイは空中に浮かんだ石に手を伸ばすと、異空間に取り込むのではなく、黒渦の渦巻く部分に石を当てる。その瞬間、石は渦の回転に巻き込まれて弾かれた。


「うわっ!?」
「な、何じゃ!?」
「今のは……」
「な、何が起きたんすか!?」
「ウォンッ!?」


小石が黒渦に吹き飛ばされたのを見て他の者は驚くが、ナイはある結論を抱く。今まで気づかなかった黒渦の新しい「使い道」を発見した。

先の戦闘でミノタウロスの拳を「受け流せた」のは黒渦のお陰であり、どうやら闇の魔力で構成された渦巻は物理的に干渉できる事が判明した。実体があるというよりは小型の竜巻を作り出しているという表現が正しく、エリナが投げた拳は激しく渦巻く小型の台風に吹き飛ばされたのに等しい。


(異空間に収納する以外にこんな使い道があったなんて……)


掌の中で激しく渦巻く黒渦にナイは感動し、これを上手く利用できれば今後は相手の攻撃にも対応できる気がした。黒渦を利用すれば相手の攻撃を受け流すだけではなく、他にも色々な使い道があると思われた。


「師匠!!勝負は負けなかったら魔法は教えてくれるんだよね!?」
「えっ!?きゅ、急にどうした!?」
「誤魔化さないでよ!!最初に言ったじゃん!!俺に新しい魔法を教えるって!!」
「そ、それはそうだが……」
「兄貴、どうしたんですか?」
「ウォンッ?」


目元を輝かせながらナイはクロウに詰め寄ると、ビャクを抱えたエリナが不思議に思う。その一方でマリアはナイの行動に心当たりがあるのか、彼女は思いもよらぬ提案を行う。


「面白い子ね。気に入ったわ、しばらくはここに住まわせてもらうわよ」
「な、何だと!?」
「え!?マリア様、それ本気ですか!?」
「本気よ。貴方だって兄貴さんと一緒に居たいでしょう?」
「そりゃそうですけど……」
「住むという事は……まさか、師匠の山小屋に一緒に暮らすんですか?」


マリアの発言に誰もが驚き、それを聞いてクロウは断固として断ろうとした。


「ふざけるな!!この山は儂の……」
「別に貴方の山というわけじゃないでしょう。だから許可なんて取らないし、勝手に住まわせてもらうわ」
「こ、この性悪女め!!さっさと出て行け!!」
「力尽くで追い払ってみたらどう?」
「ちょ、マリア様!?それは流石に……」
「師匠も落ち着いて!!」
「クゥ~ンッ……」


お互いに杖を構えたクロウとマリアをナイとエリナは宥め、その様子をビャクは呆れた様子で見守る――





――それから一週間の時が過ぎると、マリアとエリナは本当にクロウの山に住み始めた。最初はクロウも反対していたが、マリアと一晩ほど語り合うとようやく納得した。それでも一緒の山小屋に暮らす事は断固として拒否し、仕方なく山小屋にナイを呼び戻して彼が今まで住んでいた滝の裏の洞窟を貸す。

久々にナイは山小屋で過ごせるようになったが、最近は朝を迎えると外に出向いて修行に励む事が多い。ナイはビャクを連れて山小屋の近くの川で訓練を行っていると、エリナが一角兎を手土産にやってきた。


「兄貴~おすそ分けを持ってきました」
「エリナ……別に毎日持ってこなくてもいいのに」
「いやいや、妹分として当然の事っすよ」
「ウォンッ!!」


毎日のようにエリナはナイに会いに来るため、彼女が訪れるとビャクは嬉しそうに駆けつける。それを見ながらナイは川に手を突っ込み、黒渦の新しい実験を行う。


「兄貴は何をしてるんですか?」
「うん、ちょっとね……実験中だから静かにね」
「うぃっす!!了解しました!!」
「ウォオオンッ!!」
「静かにって言ったばかりだよね!?」


大声で返事を行うエリナとビャクに注意しながらも、ナイは右手に意識を集中させて黒渦を作り出す。そして川の表面に近付けると、激しく渦巻く闇の魔力を接触させた。その結果、黒渦は水を弾いて激しい水飛沫を上げる。


「うわっ!?な、何してんですか!?」
「回転力の調整……といっても分かんないか」
「クゥンッ?」


川に流れる水を利用してナイは黒渦の回転力を調べ、予想通りに黒渦の規模が小さいほどに回転力が増す事を再確認する。


(やっぱり黒渦が小さいほど回転しやすいな。この回転の力を上手く利用できればいいけど……)


ミノタウロスの拳を受け流せたのは黒渦のお陰だが、右手だけしか攻撃を防げないのであれば少し不便に思えた。ナイは片手では不十分だと判断し、せめて左手でも同じことができるようになればと考える。


(師匠に頼んで左手にも魔術痕を刻んで貰おうかな?けど、前に刻んで貰おうとした時は凄く反対されたからな……)


黒渦が生み出せるのはあくまでも魔術痕が刻まれた箇所であり、掌か甲の部分に魔術痕を刻まないと黒渦は手に作り出せない。しかし、クロウはナイに他の魔法を覚えて欲しいと考えているため、馬鹿正直に闇属性の魔術痕を刻んでほしいと頼んでも納得してもらえないだろう。

クロウを説得できるだけの成果を見せねば左手に魔術痕を刻んで貰えず、ナイは考えた末に黒渦の有用性を示せばクロウを説得できるのではないかと考えた。


(黒渦を防御に利用する方法なんて今まで考えた事もなかったな)


これまでは攻撃にだけ利用していた収納魔法だが、今回は防御に特化した方法を見出す。そのためには他の人間の協力が必要であり、ナイはエリナに手伝いを頼む。


「エリナ、悪いけど実験に手伝ってくれる?」
「うぃっす!!よく分かんないけど兄貴の役に立つなら何でもします!!」
「あ、ありがとう……」


何故か自分を兄貴と慕う彼女にナイはぎこちない笑顔を浮かべるが、こればかりは相棒にも頼めない。ナイがエリナに手伝ってほしい事を伝えた――
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