伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ

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修行の旅

第67話 気功術

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(やっぱり「気」と「魔力」は同じ物なんだ。格闘家の間では魔力は気と呼ばれているのかもしれない)


ハルナ自身は魔力を操作しているという自覚はないが、彼女が怪我を治した際に間違いなく自身の魔力を利用して自己回復力を高めていた。そして「発勁」という技を使用する時も掌に魔力を集中させていた。

魔術師であるナイとは使い方は多少異なるが、ハルナは魔力を衝撃波に変化させる能力に芽生えていた。自分の考えが正しいかどうか確かめるためにナイはハルナにもう一度頼む。


「ハルナ、さっきの発勁という技をもう一回使ってくれる?」
「え~?あれ、疲れるんだけど……」
「あと一回だけでいいからさ。もう一回格好良い姿を見せてよ」
「たくっ、仕方ないな~」


ナイに格好良いと言われてまんざらでもない表情を浮かべたハルナは起き上がり、周囲を見渡して壊して問題なさそうな物を探す。そして逃げ出した冒険者が落とした「木剣」を見つけた。


「よし、これにするか。ナイ、こいつを両手でしっかり持ってろよ」
「え?こ、こう?」
「違う違う、持ち方はこうだ」


木剣を渡されたナイは柄の部分を握りしめるが、ハルナは片手は剣先を掴むように指示する。木剣の両端を握りしめた状態でナイは構えると、ハルナは意識を集中させるように目を閉じる。


「ふうっ……」
「…………」


彼女が気を集中させている事に気づいたナイは目を閉じて魔力感知を発動させると、案の定というべきかハルナの体内の魔力が右手に集まっていた。予想通りに「気」と「魔力」は同じ力である事が判明し、右手に蓄積させた魔力を衝撃の力へと変換させてハルナは木剣に叩き込む。


「おらぁっ!!」
「うわっ!?」


木剣に掌底が触れた瞬間、掌が触れた箇所を中心に衝撃が拡散して木剣を掴んでいたナイは堪らずに手放す。両手にまで衝撃が流れたせいでしばらくは痺れて上手く動かせそうにない。もしも生身でハルナの「発勁」を直接受けていたとしたら無事では済まないだろう。


(な、なんて衝撃……でも、風属性や地属性の魔法とは違うみたいだな)


ハルナの繰り出した攻撃は風属性の「風圧」や地属性の「重力」とは異なり、衝撃波その物を生み出す能力だと判明した。魔術痕も無しに魔力を攻撃に利用できる方法があると知ってナイは驚き、その一方でハルナは心底疲れた表情を浮かべた。


「ぜえっ、ぜえっ……これ、疲れるから連続で使うのはきついんだよな」
「だ、大丈夫?」
「う~気持ち悪い……」


ナイが魔力を大量に消費すると体調不良を引き起こすのと同じようにハルナも気分が悪くなり、そんな彼女の様子を見てナイはやはり「魔力」と「気」は同じだと確信した。


(やっぱりハルナも魔力を操作してるんだ。その証拠に魔力が大分減ってる)


気功術を覚えている冒険者は珍しくはなく、魔術師でなくとも自身の魔力を操作する人間は意外と多い可能性が出てきた。だが、魔術師であるナイと比べてハルナの魔力量はそれほど多くはなく、二度の「発勁」の使用だけで体調不良を引き起こす。

魔法を使用する場合はナイも魔力を消費するが、これまでの訓練によって子供の頃よりも魔力を大幅に増やし、さらに最小限の魔力で無駄なく魔法を使用する術を身につけた。その一方で肉体強化などの魔力の使い方は聞こう術の使い手であるハルナの方が上回り、一概にもナイがハルナより優れているとは言い切れない。


(魔術師は魔法、気功術は肉体強化を主軸にした流派なのかも……)


色々と考えながらもナイはハルナに肩を貸して訓練場の端に設置されているベンチに運び込み、先ほどのように膝枕を行う。ハルナはしばらく休むと顔色も戻り、身体を起き上げる。


「ん~……よし、治った」
「え、もう!?あんまり無理しない方がいいんじゃ……」
「これぐらい平気だって」


ほんの数分休んだだけでハルナは体調を取り戻し、そんな彼女の回復力に驚く。仮にナイが魔力不足に陥った場合、数時間は眠り続けなければ完全に魔力を取り戻す事はない。魔力の量はナイが上回るが、回復速度に関してはハルナの方が上かもしれない。


(本当に魔力が戻ってる。いったいどんな修行をしてきたんだ?)


魔力感知を発動させてハルナの魔力が元に戻っている事を確認するとナイは驚きを隠せず、彼女がこれまでどんな過程を経て気功術を習得したのか気になった。


「ハルナは今までどんな修行をしてきたの?」
「そうだな……色々とやったな。最初の頃は身体を鍛える鍛錬ばっかりだったけど、修行を初めて半年ぐらい経ってからは瞑想とかもやらされたな。後は他にした事は組手とかだな」
「え、それだけ?」
「うん」


ハルナの話を聞いてナイは不思議に思い、瞑想以外は主に身体を鍛える訓練しかしてこなかったらしい。ナイの場合は魔力を操作するまでに色々な修行を積んできたが、ハルナの場合は身体を鍛える過程で無意識に魔力を操る術を身に着けたのかもしれない。

ナイが気になったのはハルナは肉体強化に関しては自分よりも上回るが、先ほどの「発勁」と呼ばれる必殺技に関しては粗があるように感じた。確かに人形や木剣を粉々に吹き飛ばす程の凄い威力だが、それにしては無駄に魔力を使いすぎている気がした。


「さっきの発勁はいつ覚えたの?」
「練習自体は何カ月も前からやってるけど、技を成功させるようになったのは最近だな。けど、一発撃つだけで凄く疲れるから実戦では使用した事は殆どないけどな」
「そうなの?」
「前にゴブリン共が街に攻め寄せて来た時、試しに使ってみたら一匹はぶっ飛ばす事はできたけど、疲れている所に他の奴等に襲われて危うく死にかけた。そのせいでギルドマスターに怒られて実戦での使用は禁止にされたんだよ」
「そ、そうなんだ……相変わらず無茶してるな」


発勁は強力な必殺技であるが、一度使用すると体力を根こそぎ奪われるために乱戦では不向きな技だった。一匹倒せたとしても体調不良を引き起こせば他の敵に狙われる可能性が高く、だからハルナは折角覚えた発勁を実戦で殆ど生かせていなかった。

彼女の話を聞いてナイはハルナが発勁を使用した時の事を思い返し、魔力を衝撃波に変換させるという点では「魔法」に近い技のように思えた。だからこそナイは自分ならばハルナの発勁に助言アドバイスができるのではないかと考える。


「ハルナ、さっきの発勁なんだけど……もう一度だけ見せてもらえる?」
「はあっ!?またかよ!?流石に疲れてきたんだけど……」
「大丈夫、今度は疲れないで撃つ方法を思いついたから」
「な、何だそれ?」


ナイの言葉にハルナは首を傾げるが、彼女のためにナイは自分のできる事を協力したいと思い、とりあえずは先ほど魔法の練習で使用した木造人形を用意させる。
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