伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ

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修行の旅

第66話 ハルナの実力

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「よく見てろよ……これが俺の必殺技だ!!」
「うわっ!?」


ハルナは木造人形の胸元に目掛けて掌底を叩き込んだ瞬間、人形が粉々に砕け散った。殴りつけた際に破片が辺り一面に散らばり、咄嗟にナイは右手で黒渦を展開して吹っ飛んできた破片を異空間に吸収する。


(何だ今の威力!?あんな硬い人形を素手で壊すなんて……)


他の人間が避難したのはハルナが人形を破壊する際に破片が飛び散る事を知っていたからであり、収納魔法を発動させなければナイも巻き込まれる所だった。ハルナは自分が粉々に砕いた破片を踏みつけると、満足げな顔でナイに振り返る。


「どうだ!?これが俺の力だ!!」
「ちょ、ハルナ!!頭から血が流れてるよ!!」


人形を破壊した際に飛び散った破片が頭に当たっていたらしく、ハルナは頭から血を流していた。慌ててナイはハンカチを取り出すと怪我した箇所を抑えた。


「ほら、動かないで」
「いててっ!?だ、大丈夫だって……これぐらいの傷ならすぐに治るからさ」
「そんなすぐに治るわけないだろ……けど、凄い威力だったな」
「へへっ、惚れ直したか?」


ハルナの一撃によって岩のように硬い人形は粉々に砕け散り、ナイは破片を拾い上げると違和感を抱く。力尽くで破壊したというよりは内側から「爆発」したかのように砕けており、単純に殴りつけただけでは説明がつかない壊れ方をしていた。

不思議に思いながらもナイはハルナを振り返ると、彼女は頭の血をハンカチで拭うと何時の間にか怪我が治っていた。まるでナイが魔力を操作して自己修復力を強化した時の様な回復速度である。


「よし、治った。このハンカチは洗って返すよ」
「ええっ!?治ったって……嘘でしょ!?」
「へへっ、修行したお陰で身体も治りやすくなったんだよ。これぐらいの怪我ならすぐに治せる」
「それってまさか……再生術?」


ナイはハルナの言葉を聞いて心当たりがあり、意識を集中させて「魔力感知」を発動させる。ハルナの体内の魔力を探ると怪我をしていた箇所に魔力が集まっており、彼女は無意識のうちに「再生術」を使用していた事が発覚する。

再生術とは魔術師が扱う「魔術」であり、魔法とは違って即効性はないが魔力を消費する事で肉体の再生機能を高める術である。ナイも習得しているがハルナの方が圧倒的に回復速度を上回り、頭の怪我もあっという間に治した。


「ハルナ、何時の間に魔力を操作できるようになったの?もしかしてハルナも魔術師に修行を付けてもらったの?」
「魔力?何言ってんだ、俺が扱っているのは魔力じゃなくて気だぞ?」
「……気?」
「えっと、気というのは体内に宿る生命力とかなんとか……やべっ、色々説明されたけど忘れた。まあ、ともかく俺はギルドマスターから気功術を教わったんだよ」
「気功術?」


ハルナによれば彼女はニノの冒険者になった際にギルドマスターから指導を受け、彼から「気功術」と呼ばれる特殊な技術を教わったという。この気功術はハルナ以外の冒険者も多くが習得しており、原理としてはナイが学んだ「魔力操作」の技術と似ていた。

気功術とは体内に宿る「気」と呼ばれる力を利用し、肉体を強化する技術だという。話を聞く限りではナイは「魔力」と「気」は同じ物だと思ったが、気功術の場合は肉体強化の技術に特化しており、魔術師の場合は肉体強化はあくまでも補助的な技術の一つに過ぎない。


(ハルナが強いのは魔力……いや、気で自分の肉体を強化していたのか。しかも俺と違って強化の幅が凄い)


仮にナイが肉体強化を発動させて人形に殴りかかったとしても傷一つ付けることはできず、武器を使用したとしても壊せる自信はない。だが、ハルナの場合は掌底の一撃で粉々に粉砕した。

他にも気になるのは人形の壊れ方であり、いくらハルナの怪力で殴りつけたとしても粉々に砕け散った事に違和感を抱く。


「ハルナ、さっきの技は……」
「発勁だよ。相手の身体に触れて衝撃を内側に送り込む必殺技だ」
「発勁……」


ナイの予想通りにハルナは力尽くで殴りつけたのではなく、相手の体内に衝撃を流し込むような技を扱った事が判明する。衝撃を流し込まれた物体は内側から爆発するかのような損傷を受けるらしく、もしも生身の生物に使用すればほぼ確実に致命傷を与えられる。


(凄い技だな。でも、俺には真似できそうにない……この技を喰らえばミノタウロスでも倒せそうだな)


強靭な肉体を持つミノタウロスであろうと体内から衝撃を流し込まれれば無事では済まず、岩のように硬い人形を吹き飛ばせる程の威力ならば致命傷を与えられる可能性は高い。まさかこれほどの協力な必殺技をハルナが覚えていた事にナイは驚くが、その一方でハルナは疲れた様子を見せる。


「はあっ……けど、これ一発撃つとしばらく身体が重いんだよな」
「だ、大丈夫?」
「しばらく休めば大丈夫だよ。あ、そうだ……久々に膝枕してくれよ」
「え、ちょっ……」


ナイを地面に座らせるとハルナは汚れるのも構わずに地べたに横たわり、頭をナイの膝の上に乗せる。こうすると昔を思い出し、子供の頃もハルナは疲れた時はよくナイに膝枕をさせていた。


「う~ん……なんかゴツゴツしてるな。子供の頃はもうちょっと柔らかかったのに」
「俺だって身体鍛えてるんだよ」
「お前も大人の男になったんだな。まあ、身長はまだ俺よりも小さいけどな」
「うるさいな……生意気言うとおっぱい揉むぞ」


身長の事をネタにされてナイは怒った風に言い返すと、そんな彼にハルナはからかうように自分の胸を掴みながら語る。


「そんなに俺のおっぱいが触りたいのか?仕方ない奴だな、幼馴染のよしみで揉ませてやろうか?」
「え、マジで!?」
「い、意外と食いついたな……ほら、少しだけだぞ」


ハルナは起き上がると周りに誰もいない事を確認し、顔を見られるのは恥ずかしいのか後ろからナイに自分を抱きつかせる。


「ほら、触っていいぞ」
「ちょ、本気で言ってるの?」
「何だよ、今更怖気づいたのか?このへたれ男」
「むっ……」


ナイはハルナの言葉に引くに引けず、覚悟を決めて両手をゆっくりと胸元に伸ばす。途中で誰かが止めに入るのではないかと思ったが、先ほどの騒動で訓練場にはナイ達以外の人間はおらず、あっさりと胸を掴む事に成功した。


「んっ、ふうっ……ちょっと力強いぞ」
「ご、ごめん……」
「たくっ、胸を揉むだけでこんな有様じゃエリナとは深い間柄じゃなさそうだな」
「え?」


ハルナは自分の胸を揉むだけで緊張するナイの反応に安心し、彼がまだ女の身体に慣れていない事からエリナとは恋仲ではないと判断して嬉しそうな表情を浮かべる。
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