貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
865 / 1,110
王国の闇

第849話 復活の火竜

しおりを挟む
――グガァアアアアッ!!


シャドウの手によって古代の火竜の経験石を吸収した火竜は、急速的な速度で肉体が成長を始める。しかし、急激な成長の影響で火竜は全身に激痛が走り、あまりの痛みに耐え切れずに暴れ狂う。

火竜は影の触手の拘束から逃れると、翼を広げて上空へと飛び立つ。既にグマグ火山に生息していた火竜《ちち》の半分程度の大きさは誇り、胸元を光り輝かせると火炎の塊を放つ。


「アガァアアアッ!!」


城下町に目掛けて火竜は次々と火炎の吐息を行い、放たれた火炎の塊は建物を吹き飛ばす。まだ父親と比べると威力は弱いが、それでも建物を崩壊させるには十分すぎるほどの破壊力を誇る。


「ひいいっ!?」
「か、火竜だ!!火竜が現れたぞ!?」
「嘘だろ!?おい、早く逃げろっ!!」


街道に出ていた兵士達は火竜の姿を目撃して悲鳴を上げ、我先にと逃げ出してしまう。騒ぎ立てる彼等に気付いた火竜は狙いを定めると、滑空して兵士の元へ向かう。


「グアアッ!!」
「うぎゃあっ!?」
「た、助けっ……ぎゃああっ!?」
「止めろ、近づくな……うわぁあああっ!?」


火竜は逃げ惑う兵士に喰らいつくと、次々と丸呑みする。火竜は基本的には滅多に他の生物を食さないが、傷を負った時やあるいは肉体を成長させるために他の生物を喰らう。

十数人の警備兵を喰らうと火竜の肉体は更に成長し、より強大な存在へと変貌する。しかし、そんな火竜に対して躊躇なく駆けつける存在が居た。


『ふははははっ!!こいつは大物だな、マリン!!』
『笑っている場合じゃない』


火竜の後方から駆けつけてきたのはマリンを肩に抱えたゴウカであり、二人は火竜に目掛けて一直線に近付いていた。ゴウカからすればまさか竜種とこんな場所で巡り合うとは思わず、心底嬉しそうな表情を浮かべる。

その一方でマリンの方は仮面越しに火竜の様子を伺い、彼女は何かを察したように杖を構える。すると火竜は近づいてくる二人に気付き、口元を開くと火炎の吐息を放つ。


「アガァッ!!」
『ぬおっ!?』
「っ……!!」


迫りくる火炎の塊に対してマリンは事前に杖を構えていたため、即座に火属性の砲撃魔法「ファイアボール」で迎撃を行う。火炎の塊と火球が衝突すると、空中で凄まじい爆発が起きた。

ゴウカは爆発に巻き込まれないようにマリンを地上に下ろすと、彼女を庇うように前に立つ。火竜の方は自分の攻撃を誘爆させた二人に対し、苛立ちの表情を浮かべながら口元から火炎を迸らせる。


「グガァッ……!!」
『ははっ!!こいつはいい、噂通りに凄まじい奴だ!!』
『喜んでいる場合じゃない。本当にこんな奴、何とかできるの?』
『うむ!!それは分からん!!だが、やるしかないだろう!!』


火竜を前にしたゴウカは憧れの存在を前にした子供のように目元を輝かせ、ドラゴンスレイヤーを構えた。それに対して火竜はゴウカのドラゴンスレイヤーを見つめると、何故だか不快な気分を覚える。

ゴウカのドラゴンスレイヤーは元々は火竜の素材を利用して作り出された代物であり、それが原因なのか火竜はゴウカを見た時から不快感を覚えた。しかし、ゴウカが膨大な聖属性の魔力の持ち主である事を悟り、自分の餌として喰らう事で火竜は更なる力を得ようとした。


「グガァアアアアッ!!」
『マリン、下がっていろ!!』


マリンはゴウカの言葉を聞いて即座に離れると、ゴウカは火竜と向き合い、ドラゴンスレイヤーを構えた。逃げもせずに堂々と正面に立つゴウカに対して火竜は容赦せず、再び口元から火炎の塊を放つ。


「アガァッ!!」
『ぬぅんっ!!』


迫りくるに対してゴウカは大剣を振り払い、その剣圧のみで炎塊を切り裂く。切り裂かれた炎塊は左右に分かれてゴウカの横を素通りして吹き飛ぶ。

仮にも黄金級冒険者のマリンが放った砲撃魔法と互角の威力を誇る炎塊を、ゴウカは恐るべきことにから繰り出した剣圧で吹き飛ばす。その光景を見た火竜は少し驚いた様子だが、すぐに攻撃を切り替えて、今度は尻尾を振り払う。


「グガァアアッ!!」
『ふんっ!!』


近くの建物を崩壊させるほどの威力を誇る尻尾の攻撃に対して、ゴウカはドラゴンスレイヤーで受け止めるが、いくら怪力の彼でも抑えきれずに力負けして吹き飛ばされる。


『ぐはぁっ!?』
「っ……!?」
「ガアアッ!?」


ゴウカは吹き飛ばされたのを見てマリンは驚愕するが、同時に火竜もドラゴンスレイヤーが当たった箇所に血飛沫が舞い上がり、悲鳴を上げて尻尾を戻す。火竜の素材で構成されたドラゴンスレイヤーならば、本物の火竜の鱗を切り裂き、損傷を与えられる事が判明した。


『ぐぐぐっ……は、ははっ!!』


建物に吹き飛ばされたゴウカは街道に戻ると、自分が力負けしたという事実に笑い声をあげてしまう。大型の魔物が相手でもゴウカは力負けをした経験などなく、それにも関わらずに火竜の攻撃によって自分が呆気なく吹き飛んだことに彼は笑わずにはいられなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...