【完結】愛しい人、妹が好きなら私は身を引きます。

王冠

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「で、リュダールはどこ行ったんだい?」
「え?王都に行って貰いました。物を取りに」
「物?…あぁ、さっきの…」
「はい、彼にはとてもだったようで…私よりも」
「…ティアラ、実はかなり腹が立っていたんだね?」
「はい、それはもう…。あの杜撰な逢瀬の理由が私の失敗作を受け取る為だったなんて…くだらなさ過ぎて…」


 脱力感しかない。
 常に、みんなが納得できるように心配りをしてきた。例えそれが無意識にしていた事でも、私の心は本当に満足出来ていただろうか?


「笑えるくらい、不愉快でしたわ」


 そう言い切った私にはもう、憂いはない。そう言ってもいいのだ、不愉快だと。行動にだって表して良いのだ、嫌だ、と。
 そんな簡単な事が出来なかった。また、誰かが危ない目に合うかもしれないと思えば…怖い。大切な人なら尚更そう思う。


 けれど、それで自分が我慢するのは違う。それに気がついた。人数分の頭があれば、可能性は無限大だ。臆病を患っていたのかも知れない。その結果、何でも許してくれる優しい人というイメージがみんなに刷り込まれたのかもしれないが。


「私にだって、感情はあるから…」
「今の感情を大切にしてね」
「いくらでも出しなさい、お祖母様は嬉しいよ」
「ふふ…はい!!」


 お祖母様とお母様は、私をぎゅっと抱きしめてくれた。私を無意識に縛っていた鍵がかちりと外れる音がした。


 私は、みんな大好きなのだ。
 お父様も、お母様も、お祖母様もアリーシャも、モニカも、お義父様、お義母様…それに、リュダールも。みんなが笑顔でいて欲しい。みんなに幸せになって欲しい。


 そして、そこに私もいる事が出来たら。
 それは、とても幸せな事だと思う。


「まずは、私がスッキリしないとね!」
「そうだ、ティアラがスッキリするのが一番最初だ」
「お母様はする方法をたくさん知っているからいつでも聞いてちょうだいね」
「はい!」


 …といいつつ、お母様のスッキリはちょっと怖いからまた今度にしようと私は笑った。
 ふと人影が見えて、モニカが部屋に入って来たので彼の様子を聞く。


「モニカ、ありがとう。どうだった?」
「お嬢様が馬をお貸ししました。お嬢様の可愛がっている馬を借りれてリュダール様は嬉しそうに出発しましたよ」
「まぁ…モニカったら。私が一番可愛がっているあの子は、言う事を聞かない上に私以外を乗せると不貞腐れて亀の歩みになる子じゃないの」
「明日の夕方までに来れますかねぇ?」


 地味!!モニカにしては地味な嫌がらせだわ!!とうとう自分で嫌がらせをし始めたわ!!


「お祖母様、お母様、明日の夕方は外でお肉を焼いて食事しませんか?」
「いいわよ!」
「いいねぇ!肉は沢山あるから騎士団も呼ぶかい?」
「えぇ、ぜひ!!あ!ではリーン様も!」
「私、会ってみたいわぁ!」


 きゃいきゃいと盛り上がる私達を眺めながらモニカがすっごい笑ってる。絶対に何かを企んでる!!あの顔は危険だわ!!


「…モニカ?」
「お嬢様、私は料理長と明日の打ち合わせをして来ますね」
「あ、うん。よろしくね」
「お任せ下さい」


 モニカはすぐさまいなくなった。やっぱり何かするつもりだわ…!!何をするつもりかしら。でも仕方ないわね、モニカが一番近くで私を見てたから。
 それに、明日は絶対にお肉を焼くのよ。


「テオに言いに行こうかしら」
「夕方にはこっちに来る予定だよ、報告書を持ってくるらしい」
「あ、ならその時でいいわね」


 よしよし、良い感じで物事が進んでいってるわ。より良い未来のために下準備は大事よね!!アーノルドにお肉の在庫を見てもらおう。そして、夕方に行けたら釣りに行こう。知らずのうちに鼻歌が漏れた。


「ティアラったらウキウキしてるわ」
「そうだね、あの子は頭ひとつ分大人だったからねぇ。しかし…リュダールが落ち込みそうだね」
「仕方ありませんわ。それで気持ちが離れるならそれまでの事です。まぁ…ないとは思いますけれど」
「アリーシャはどうするつもりなんだい?」
「それが、今回の件に関してはいつもは平和主義のアイゼンの怒りの炎が消えなくて」
「…だろうねぇ」


 鼻歌まじりに明日の計画を立てていた私は、いつの間にかお祖母様とお母様が難しい顔をして話し込んでる事に気付いた。
 二人はぼそぼそと何かを言いながら、部屋を出て行ってしまった。大方アリーシャと殿下の事だろう。

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