World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
708 / 1,646

二の槍

しおりを挟む
 予想外の出来事に困惑するも、任された以上ここで仕留め損ねる訳にはいかないと、朱影は立て続けにもう一発の、新たな槍を手にして投げ放つ。

 二発目の攻撃は命中するものの、手応えが無い。矛先は大型モンスターに突き刺さってはいるが、これまでよりも明らかに浅い。

 不発に終わったかと、舌打ちする朱影。彼の予想通り、槍の突き刺さった部位が内側からボコボコと蠢き出し、中から先程の硬い外殻を持った小型モンスターが、肉壁を破り外へと飛び出した。

 身体を突き破られた大型モンスターの外皮はみるみる治癒していき、あっという間に血のような液体を溢していた穴は塞がった。

 朱影の起こした高音により飛び出したモンスターは、再び水面へと落ちていき、水飛沫を立てて水中へと潜っていった。

 「逃げやがってッ・・・。また直ぐに引き摺り出してやるからよぉ・・・!」

 通路に着地した朱影は周囲を見渡し、ある物を探していた。通路を少し進み、脇道に逸れたところに探していた物を見つけると、槍を取り出し素早い手の振りでその探していた物を切断した。

 通路に響く金属音。大型モンスターを引き摺り出すほどの大きな音ではないが、彼の探していたものはシンが事前に用意してくれていた物と同じ、通路を塞いでいた鉄柵だった。

 シンの拵えた鉄柵は、切断面があまかったり長さがまばらだったが、そこは流石の朱影。巧みな槍捌きで綺麗に長さを揃えると、壁に突き刺しやすいように、切断面もやや斜めにし鋭利に仕上げていた。


 通路に散らばった鉄柵を拾い上げ、脇に抱えたまま水路の方へ向かう。そして暫く水面を眺め、大型モンスターが泳いだことで生じる波を伺う。

 大体の位置を見つけるのは容易なことだった。だがこのまま槍を放り込んでも、水中という相手の独壇場では、こちらの攻撃は真面に入らない。避けられてしまうこともあるが、そもそも水中に入った時点で槍の勢いは幾らか殺されてしまっている。

 やはり一度、水の中から引きずり出さなければならない。そうでなければ有効打は与えられない。朱影は再び高音を響き渡らせるための、前準備を始める。

 あまり遠くへ行かせない為に、そのまま水路を進んで大型モンスターが離れてしまいそうになると、槍を侵攻方向の数メートル先に投げ、向きを反転させながら、切り取った鉄柵を壁に突き刺していく。

 「アイツのは雑だったが、今度はもっといい音奏でてやるからよぉ。覚悟しとけよな・・・」

 そして一通り鉄柵を壁に突き刺すと、彼は満を持して槍を手にし、もう一度大型モンスターの位置を確認する。遠くへ逃げていないことを確かめると、彼は勢いよく鉄柵を槍で殴った。

 下水道に響き渡る高音。最初の時と同じ展開、光景が広がる。脳にまで響き渡りそうな高音に、堪らず水中から飛び出す大型のモンスター。

 今度はさっきよりも力を込める時間があった。これで仕留めると言わんばかりに、全身全霊の力を込めた一撃を放つ。

 しかし、展開は最初の時の映像をフラッシュバックしたかのように、全く同じ運びとなる。

 朱影の放った強烈な一撃を、大型モンスターの外皮を突き破り現れた新種の小型モンスターが、身体を張って受け止める。だが、今度は槍が撃ち落とされることはなかったが、向きを逸らされてしまい大型モンスターに命中することはなくなってしまった。

 かと思われたが、朱影の投げた槍の後ろから、もう一本の槍が影に隠れるようにして、同じ軌道を辿っていたのだ。

 「俺に二度も同じ作戦は通用しねぇ・・・よッ!」

 二本目の槍を妨げるものは何もない。大型モンスターの身体からも、立て続けに肉壁となる小型モンスターは現れず、漸く朱影の攻撃が命中する。

 「ギィャァァァーーーッ!!」

 人の声にも似た悲鳴をあげながら苦しむように悶える大型モンスター。すかさず朱影が指を弾く。

 「トドメだ、クソ野郎・・・!」

 すると、大型モンスターの身体から無数の槍が外皮を貫き飛び出してきた。これは、高層道路での襲撃の際に、追手の機械獣に放った大技だった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

異世界召喚された巫女は異世界と引き換えに日本に帰還する

白雪の雫
ファンタジー
何となく思い付いた話なので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合展開です。 聖女として召喚された巫女にして退魔師なヒロインが、今回の召喚に関わった人間を除いた命を使って元の世界へと戻る話です。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...