World of Fantasia

神代 コウ

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狂獣、影に囚われる

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 変貌してしまったアズールの状態について、何か掴んでいるのではないかと考えたケツァルは、アズールを挟んで向こう側にいるダラーヒムの元へ向かう。

 素早く移動する生命体に反応したのか、自身の身体を制御しきれないアズールの攻撃が、ダラーヒムの元へ向かうケツァルを襲う。しかし、本内のアズールの動きなら兎も角、何かに動かされているような本人の意思でない攻撃では彼を捉えることはできない。

 巨大樹の窓から飛び出した時に肉体強化を施していたケツァルの脚力は、地面を力強く蹴り上げ華麗にアズールの攻撃を躱し、ダラーヒムの側に着地する。

 「状況はガレウスから粗方聞いた。それで?何か分かったことはあったか?」

 「いや・・・正直なところ全くと言ったところだな・・・」

 「そうか・・・」

 今度は恐らく、血液を洗い流すことで解除できるような変貌ではないだろう。アズールの身体にはそれらしい汚れや傷を負った様子もない。誰の指示か分からないが、誰もアズールに攻撃を仕掛けることなく動きを止めることに尽力していたようだ。

 そしてダラーヒムは、おかしくなったアズールや捕らえた再起不能の獣を調べて感じた違和感の話を、ケツァルに打ち明ける。不確かな情報は、彼に更なる混乱を与えるかもしれない。だが、一人で考察するには些か情報が少なすぎるとダラーヒムは判断したのだ。

 「一つ・・・俺が感じた違和感があるんだが。聞いてくれるか?」

 「ッ!?勿論だ!何でもいい。一人で考えていても仕方がない那ろ?」

 「余計にアンタを混乱させちまうと思ってな・・・。それで俺が感じた違和感ってのは、上手く言えねぇがアズールの身体の中に、別の意思でも入り込んだかのような違和感を感じたんだ・・・」

 「別の意思・・・?」

 彼の言葉を間に受けるのであれば、それは幻術や妖術のように対象者へ状態異常をかける魔法や術と見るのが普通だろう。しかし、何かによって幻覚を見せられている者は、自分以外の外部からのショックや薬、或いは回復の魔法で解除できる。

 それに錬金術を使えるダラーヒムであれば、そのような魔法や術による作用を見抜けないということはない筈。だが彼の口ぶりからは、その違和感に確証を持てていないといった印象を受ける。

 魔力による作用であれば、同じ魔力を使っている錬金術によって、何らかの反応がある筈だった。ダラーヒムもそれを期待していたのだが、アズールの身体にも捕らえた獣の身体にも、それらしい反応は見られない。

 「言っておくがそれが何なのかは、俺にも分からねぇ。何ならその違和感ってのも、俺の勘違いだったって事もあり得るくらいだ。だが・・・」

 ダラーヒムが言葉を続けようとしたところで、彼の言いたいことを悟ったケツァルがその先の彼が語ろうとした話を続ける。

 「今、我々が調べるべきはその些細な変化の中にこそある。例えそれが勘違いだったとしても、捨て置く訳にはいかないだろうな」

 「ふん。アンタとは馬が合いそうだ。何処かのデカブツとは大違いだな」

 ダラーヒムはケツァルらの救援が来るまで頼りにしていたガレウスの方へ向けて、チラリと視線を向ける。話の察しは悪いガレウスだったが、そういった会話の察しは良かったようで、彼らの方を睨みつけていた。

 「動かしてるのは口だけじゃねぇよなぁ!?皆、攻撃も出来ずに必死に耐えてんだ!さっさとこの状況を何とかしやがれ!!」

 「何とかしろって・・・何も考えない奴が言うなよなぁ・・・」

 実際、ガレウスの戦力はアズールを無傷の状態で抑え込むのに必要不可欠の力だった。故にあまり強く言い返せぬことにもどかしさを覚えるダラーヒムだったが、そこへケツァルと共に巨大樹から飛び出してきたシンとツクヨが到着する。

 「アズールさん!?ちょっとちょっと!これどう言う事なの!」

 吹き飛ばされていく獣人達を見て、剣に手を伸ばすツクヨ。彼らの気配と声に顔を向けたガレウスがすごい剣幕でツクヨを制止させる。

 「よせ!アズールに攻撃するな!」

 「分かってるよ!斬りつけたりしないって!」

 「打撃も駄目だ!ケツァルらの調査が終わるまで、一切の攻撃を加えるんじゃねぇ!」

 彼の無茶な注文に、その場でアズールの攻撃を受けて飛ばされる獣人達の様子に納得する二人だったが、このままではいつか死者が出る。それ程に強烈な攻撃を、アズールはダラーヒムの錬金術による木の根を絡ませたまま行っているのだ。

 本人が力を抑えてるとはいえ、如何にアズールの力が強大かが伝わってくる。手が出せないのであれば、華奢な肉体の人間に彼を抑え込む術はない。折角一緒に飛び出してきたのに、何もできない事に手をこまねいていると、ケツァルに打たれた注射のおかげでスキルを使えるようになったシンが、周囲の影を伸ばしアズールの身体を拘束する。

 ダラーヒムの木の根と合わさり、暴れ回っていたアズールの身体はまるで全身を鎖で縛り付けられたかのように、ピクリとも動かなくなる。

 「なッ・・・!?我々の力を持ってしてもあれ程に苦戦していたと言うのにッ・・・」

 「漸く力になれそうだな・・・!動きを止めるのならお手のものだッ!!」

 シンの影のスキルは、獣の力を取り込んだ事も関係しているのか、見るからにそれまで以上の拘束力を有しており、その圧倒するような抑制力にシン自身は気がついていない様子だった。
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