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第一章 復讐その一 ジェイコブ=カートレット
尾行
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ジェイコブの屋敷を出た後、僕はあえて夜で賑わう繁華街の人混みを縫うようにしてライラ様達の待つ屋敷を目指す。
まあ、万が一尾行をつけていたとしても、さすがにこの人混みの中で手を出すような真似はしないだろう。
それより。
「あの豚……完全に黒じゃないか」
ジェイコブの屋敷にいたあの連中が、面白いくらいペラペラと喋ってくれた。
自分達こそライラ様とそのご両親……先代伯爵様を襲撃、殺害した実行犯であると。
だけど、僕はまだいくつか引っかかるものを感じていた。
「……あの連中に、伯爵家の騎士を倒せるだなんて思えないんだけどなあ」
そう。僕の見立てでは、あんな連中が束になってかかったところで、伯爵家に仕える鍛え抜かれた騎士達が倒せるとは到底思えない。それは、実際に連中に暴行を受けて分かった。
それに、伯爵様の護衛を務める程だったら、さらに選りすぐりの騎士だろう。
「向こうに余程強い奴がいるか、それとも、あの連中以外にもいるのか……」
僕は独りごちると、ブンブンとかぶりを振った。
とにかく、今は一刻も早く屋敷に戻って、二人とこれからどうするか話し合うことが先決だ。
僕は歩く速度を上げると、チラリ、と路地の一角を見やってから右に曲がった。
ここを抜ければ、後は伯爵邸まですぐ……「待て」……!?
突然、後ろから男の声で声を掛けられた。
どうする? ……って、そんなの決まってる。
「っ!」
僕は振り返りもせずに一目散に駆け出した。
これは絶対にあの執事が差し向けた追手に違いない。
「ハア……ハア……っ!」
僕は時間が無駄になることもいとわずに、あえてジグザグに走る。
すると。
——ヒュッ!
僕の横を一本の投げナイフが通り過ぎた。
「やっぱり!」
僕は真っ直ぐに向かわず、目の前の十字路で急旋回して曲がると、すぐさま傍にあった木箱の陰に潜り込んだ。
しかし、この状況……どうやって切り抜ける?
僕は息を潜め、頭の中をフル回転させるが、残念ながら良い知恵が思い浮かばない。
とにかく、どんな奴が追いかけてきたのか確認しないと。
木箱の陰からそろり、と覗いてみると……いない?
その時。
「ぐあっ!?」
突然、背中に衝撃が走り、僕は目の前の木箱にぶつかった。
「くう……!?」
僕は頭を左右に振って後ろを見ると、見たことのない男が僕にナイフを向けていた。
「お、お前は……!?」
「動くな。動くと殺す」
男の殺気に、僕の頬を汗が伝う。
「貴様、何者だ?」
「…………………………」
男の問い掛けに答えず、僕はジッと男を見据えると。
「ガアッ!?」
男は僕の太ももにナイフを投げつけ、見事に刺さった。
「もう一度聞く。貴様、何者だ」
懐から別のナイフを取り出し、また男が問い掛ける。
「……アデル。冒険者のアデルだ」
「それは知っている。俺はお前が誰の差し金か、何の目的なのかを聞いている」
……質問の意図なら僕も分かっているよ。
「それを僕が答えると思う?」
「なら死ね」
男はもう用はないとばかりに、ナイフを僕の眉間に向かって投げ……!?
「っ!?」
「……何をしているのですか?」
男の首元に、ハンナさんが背後からククリナイフを突きつけた。
「ハンナさん……助かりました」
「……いえ、私こそ遅くなってしまい、申し訳ありませんでした」
ハンナさんは申し訳なさそうな、そして、心配そうな表情で僕の太ももを見ていた。
実はリザードマン討伐から離脱する際、ハンナさんにはあらかじめ今回の件について事情を話していた。
そして、夕方になったらジェイコブの屋敷で張り込んでもらい、その後、僕が屋敷にたどり着くまで離れながら見守ってもらうよう頼んでおいたのだ。
「いえ、こんなのかすり傷ですから。それよりも」
僕は太ももに刺さったナイフを抜いて立ち上がると、男を見た。
「今度はコッチから質問。オマエはジェイコブの一味、だよな?」
「…………………………」
僕がそう尋ねるが、男は無言を貫く。
「黙っているのは感心しませんね」
「っ!? ぐう……っ!」
ハンナさんが空いている手でもう一本のククリナイフを男の太ももに刺した。
多分、男が僕にしたことへの意趣返しのつもりだろう。
「……まあ、それについては別に答えてもらわなくてもいいよ。それで、オマエをこのままジェイコブの元に戻す訳にはいかないんだけど、どうする?」
僕はこのままだと命はないと、男に暗に告げる。
すると。
「……分かった。言うことを聞こう」
男は手に持つナイフを地面に落とし、両手を上げて服従の姿勢を示した。
「よし、じゃあ僕達の後について来てもらうよ」
そう言うと、僕は男の上着を剥ぎ取り。
「【加工】【製作】」
服を頑丈なロープに変え、逃げられないように男の両腕を縛った。
「さあ、行こうか」
僕とハンナさんは、男を両側から挟むようにして並び、屋敷へと連れ帰った。
まあ、万が一尾行をつけていたとしても、さすがにこの人混みの中で手を出すような真似はしないだろう。
それより。
「あの豚……完全に黒じゃないか」
ジェイコブの屋敷にいたあの連中が、面白いくらいペラペラと喋ってくれた。
自分達こそライラ様とそのご両親……先代伯爵様を襲撃、殺害した実行犯であると。
だけど、僕はまだいくつか引っかかるものを感じていた。
「……あの連中に、伯爵家の騎士を倒せるだなんて思えないんだけどなあ」
そう。僕の見立てでは、あんな連中が束になってかかったところで、伯爵家に仕える鍛え抜かれた騎士達が倒せるとは到底思えない。それは、実際に連中に暴行を受けて分かった。
それに、伯爵様の護衛を務める程だったら、さらに選りすぐりの騎士だろう。
「向こうに余程強い奴がいるか、それとも、あの連中以外にもいるのか……」
僕は独りごちると、ブンブンとかぶりを振った。
とにかく、今は一刻も早く屋敷に戻って、二人とこれからどうするか話し合うことが先決だ。
僕は歩く速度を上げると、チラリ、と路地の一角を見やってから右に曲がった。
ここを抜ければ、後は伯爵邸まですぐ……「待て」……!?
突然、後ろから男の声で声を掛けられた。
どうする? ……って、そんなの決まってる。
「っ!」
僕は振り返りもせずに一目散に駆け出した。
これは絶対にあの執事が差し向けた追手に違いない。
「ハア……ハア……っ!」
僕は時間が無駄になることもいとわずに、あえてジグザグに走る。
すると。
——ヒュッ!
僕の横を一本の投げナイフが通り過ぎた。
「やっぱり!」
僕は真っ直ぐに向かわず、目の前の十字路で急旋回して曲がると、すぐさま傍にあった木箱の陰に潜り込んだ。
しかし、この状況……どうやって切り抜ける?
僕は息を潜め、頭の中をフル回転させるが、残念ながら良い知恵が思い浮かばない。
とにかく、どんな奴が追いかけてきたのか確認しないと。
木箱の陰からそろり、と覗いてみると……いない?
その時。
「ぐあっ!?」
突然、背中に衝撃が走り、僕は目の前の木箱にぶつかった。
「くう……!?」
僕は頭を左右に振って後ろを見ると、見たことのない男が僕にナイフを向けていた。
「お、お前は……!?」
「動くな。動くと殺す」
男の殺気に、僕の頬を汗が伝う。
「貴様、何者だ?」
「…………………………」
男の問い掛けに答えず、僕はジッと男を見据えると。
「ガアッ!?」
男は僕の太ももにナイフを投げつけ、見事に刺さった。
「もう一度聞く。貴様、何者だ」
懐から別のナイフを取り出し、また男が問い掛ける。
「……アデル。冒険者のアデルだ」
「それは知っている。俺はお前が誰の差し金か、何の目的なのかを聞いている」
……質問の意図なら僕も分かっているよ。
「それを僕が答えると思う?」
「なら死ね」
男はもう用はないとばかりに、ナイフを僕の眉間に向かって投げ……!?
「っ!?」
「……何をしているのですか?」
男の首元に、ハンナさんが背後からククリナイフを突きつけた。
「ハンナさん……助かりました」
「……いえ、私こそ遅くなってしまい、申し訳ありませんでした」
ハンナさんは申し訳なさそうな、そして、心配そうな表情で僕の太ももを見ていた。
実はリザードマン討伐から離脱する際、ハンナさんにはあらかじめ今回の件について事情を話していた。
そして、夕方になったらジェイコブの屋敷で張り込んでもらい、その後、僕が屋敷にたどり着くまで離れながら見守ってもらうよう頼んでおいたのだ。
「いえ、こんなのかすり傷ですから。それよりも」
僕は太ももに刺さったナイフを抜いて立ち上がると、男を見た。
「今度はコッチから質問。オマエはジェイコブの一味、だよな?」
「…………………………」
僕がそう尋ねるが、男は無言を貫く。
「黙っているのは感心しませんね」
「っ!? ぐう……っ!」
ハンナさんが空いている手でもう一本のククリナイフを男の太ももに刺した。
多分、男が僕にしたことへの意趣返しのつもりだろう。
「……まあ、それについては別に答えてもらわなくてもいいよ。それで、オマエをこのままジェイコブの元に戻す訳にはいかないんだけど、どうする?」
僕はこのままだと命はないと、男に暗に告げる。
すると。
「……分かった。言うことを聞こう」
男は手に持つナイフを地面に落とし、両手を上げて服従の姿勢を示した。
「よし、じゃあ僕達の後について来てもらうよ」
そう言うと、僕は男の上着を剥ぎ取り。
「【加工】【製作】」
服を頑丈なロープに変え、逃げられないように男の両腕を縛った。
「さあ、行こうか」
僕とハンナさんは、男を両側から挟むようにして並び、屋敷へと連れ帰った。
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