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第四章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 前編
羊皮紙と鍵
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「あ……紋様……」
ライラ様がポツリと呟き、左胸に白銀の手をそっと押さえた。
そうだ! どこかで見たことがあると思ったら、ライラ様の左胸にあった紋様と同じものだ!
「なら、この羊皮紙には一体何が……それに、この鍵はどこの……」
「と、とりあえず羊皮紙を見てみましょう!」
ライラ様は穴の中から羊皮紙と鍵を取り出すと、まずは丸められている羊皮紙を広げた。
「これは……?」
「何かの地図みたい、ですね……」
ライラ様の問い掛けに、ハンナさんがポツリ、と呟く。
確かにハンナさんの言うように、羊皮紙に描かれていたのはどこかの地図のようなものにも見える。
だけど、これは地図というよりは……。
「……むしろ、見取り図と言ったほうが近いかもしれませんね……」
「……ソフィア様は何か御存じなのですか?」
「いえ……我がファルマ聖法国は、主神ファルマの聖地として長い歴史を誇っておりますが、当然その建物なども古く、様々な場所に遺跡があったりするのです」
「遺跡、ですか……?」
そう尋ねると、ソフィア様がコクリ、と頷く。
「今ではそれらの遺跡は全て調査し尽くされておりますが、その調査の際にはファルマ聖法国に伝わる見取り図を用いるのです」
「それが、この羊皮紙に描かれているものと似ている、ということですか?」
「はい」
うーん……そもそも、ソフィア様はファルマ聖教に関する建造物の調査に来られている訳で、そうなればファルマ聖法国で遺跡調査に使用していたという見取り図とこの羊皮紙が一致していても不思議じゃない。
いや、むしろそうだと考えるほうが正しいだろう。
「そうなると、後はこれがどこの見取り図なのか、ということですね……」
「ですが、この羊皮紙にはそういったことは何も記されておりませんよね?」
僕の呟きに反応したライラ様が指摘する。
そう……この羊皮紙には、これの場所がどこなのかは記されていない。
「……ですが、この羊皮紙に描かれている見取り図の場所は、少なくともアイザックの街のどこかの筈です。であれば、後は街中をしらみ潰しに探すほかはないですね」
「ほ、本当にそれで見つかるのでしょうか……」
僕の言葉に、ソフィア様が不安そうな表情を浮かべる。
「ええ、それは大丈夫です。今日はもう遅いので探すのは明日ですが、早ければその明日中に見つかると思いますよ?」
「「「ええ!?」」」
僕がそう言うと、三人が驚きの声を上げた。
「僕がこの部屋につながる隠し扉をどうやって見つけたか、皆さんお忘れですか?」
「「「あ!」」」
そう。僕は【設計】によってあの隠し扉を見つけ時と同じ要領で、この見取り図にある建造物を探せばいい。
とはいえ、さすがにアイザックの街全体を一気に、という訳にはいかないので、範囲を絞りながら根気よくやる必要はあるけど、それでも闇雲に探すよりは余程ましだろう。
「そういうことですので、続きは明日の朝にして、早く上に戻りましょう」
「は、はい。ところで、他にも同じようにこの部屋に何か隠されている可能性は……?」
僕がみんなをそう促すと、ソフィア様が尋ねた。
「僕の【設計】で確認した限りでは、ここだけしかありませんでしたので、その可能性はほぼありません」
「そ、そうですか」
そう説明するとソフィア様は納得して頷いた……かと思うと、どういう訳か恍惚とした表情を浮かべた。なんで!?
「ああ……アデル様……!」
そして、祈るように両手を組み、そのまま跪いてしまった!?
「ソフィア様!?」
僕は慌ててソフィア様の身体を起こすと、彼女は勢いよく抱きついてきた!?
「や、やはりアデル様は素晴らしい御方です……! 奇跡のようなお力もさることながら、その機転、行動力、どれをとってもアデル様の右に並ぶ者はおりません……!」
「「ちょ、ちょっと!?」」
すぐさまライラ様とハンナさんが割って入り、ソフィア様を引き剥がしてくれた。
「わ、私達のアデル様に何をするのですか!」
「え……あ……す、すいません……アデル様の素晴らしさに、つい我を忘れてしまいました……」
ライラ様が問い詰めると、ソフィア様が苦笑した。
というか……そんなこと言われると、恥ずかしくて仕方ないんですけど……。
「……今後一切、アデル様のお傍に寄るのは禁止です」
「そ、そんな……!」
ハンナさんに冷たく言い放たれ、ソフィア様は表情を曇らせてガックリと肩を落とした。
「こ、今度こそ書斎に帰りましょう! よろしいですね!」
「「はい!」」
「……はい」
このままでは埒が明かないのでそう告げると、ライラ様とハンナさんは勢いよく首を縦に振って返事をするけど、ソフィア様だけはうなだれたまま渋々と言った様子で返事した。
僕はソフィア様を気にしないようにしつつ、急いで上の書斎へと戻った。
「ふう……先程お話ししました通り、調査の続きは明日の朝からということでよろしいでしょうか?」
「「「はい」」」
「では、今日のところはこれで解散としましょう」
そう告げると、ソフィア様はハンナさんに案内されて来賓室に向かい、ライラ様と僕はそれぞれ自室へと戻った。
「さあ……明日は何が出るかな」
ベッドに横になり、天井を見つめながら明日のことを考えていると、いつの間にか僕はそのまま眠りについた。
◇
「…………………………さま。アデル様」
……誰かが僕を呼ぶ声が聞こえる。
ライラ様? ……いや、ライラ様の声じゃない。
なら、ハンナさん? ……それも違う。
じゃあ、一体……。
僕を呼ぶ声に誘われるまま、ゆっくりと目を開ける。
すると。
「あ……アデル様……」
「え……?」
そこには……暗がりの中、微笑みながら僕の顔を覗き込む、ソフィア様の顔があった。
ライラ様がポツリと呟き、左胸に白銀の手をそっと押さえた。
そうだ! どこかで見たことがあると思ったら、ライラ様の左胸にあった紋様と同じものだ!
「なら、この羊皮紙には一体何が……それに、この鍵はどこの……」
「と、とりあえず羊皮紙を見てみましょう!」
ライラ様は穴の中から羊皮紙と鍵を取り出すと、まずは丸められている羊皮紙を広げた。
「これは……?」
「何かの地図みたい、ですね……」
ライラ様の問い掛けに、ハンナさんがポツリ、と呟く。
確かにハンナさんの言うように、羊皮紙に描かれていたのはどこかの地図のようなものにも見える。
だけど、これは地図というよりは……。
「……むしろ、見取り図と言ったほうが近いかもしれませんね……」
「……ソフィア様は何か御存じなのですか?」
「いえ……我がファルマ聖法国は、主神ファルマの聖地として長い歴史を誇っておりますが、当然その建物なども古く、様々な場所に遺跡があったりするのです」
「遺跡、ですか……?」
そう尋ねると、ソフィア様がコクリ、と頷く。
「今ではそれらの遺跡は全て調査し尽くされておりますが、その調査の際にはファルマ聖法国に伝わる見取り図を用いるのです」
「それが、この羊皮紙に描かれているものと似ている、ということですか?」
「はい」
うーん……そもそも、ソフィア様はファルマ聖教に関する建造物の調査に来られている訳で、そうなればファルマ聖法国で遺跡調査に使用していたという見取り図とこの羊皮紙が一致していても不思議じゃない。
いや、むしろそうだと考えるほうが正しいだろう。
「そうなると、後はこれがどこの見取り図なのか、ということですね……」
「ですが、この羊皮紙にはそういったことは何も記されておりませんよね?」
僕の呟きに反応したライラ様が指摘する。
そう……この羊皮紙には、これの場所がどこなのかは記されていない。
「……ですが、この羊皮紙に描かれている見取り図の場所は、少なくともアイザックの街のどこかの筈です。であれば、後は街中をしらみ潰しに探すほかはないですね」
「ほ、本当にそれで見つかるのでしょうか……」
僕の言葉に、ソフィア様が不安そうな表情を浮かべる。
「ええ、それは大丈夫です。今日はもう遅いので探すのは明日ですが、早ければその明日中に見つかると思いますよ?」
「「「ええ!?」」」
僕がそう言うと、三人が驚きの声を上げた。
「僕がこの部屋につながる隠し扉をどうやって見つけたか、皆さんお忘れですか?」
「「「あ!」」」
そう。僕は【設計】によってあの隠し扉を見つけ時と同じ要領で、この見取り図にある建造物を探せばいい。
とはいえ、さすがにアイザックの街全体を一気に、という訳にはいかないので、範囲を絞りながら根気よくやる必要はあるけど、それでも闇雲に探すよりは余程ましだろう。
「そういうことですので、続きは明日の朝にして、早く上に戻りましょう」
「は、はい。ところで、他にも同じようにこの部屋に何か隠されている可能性は……?」
僕がみんなをそう促すと、ソフィア様が尋ねた。
「僕の【設計】で確認した限りでは、ここだけしかありませんでしたので、その可能性はほぼありません」
「そ、そうですか」
そう説明するとソフィア様は納得して頷いた……かと思うと、どういう訳か恍惚とした表情を浮かべた。なんで!?
「ああ……アデル様……!」
そして、祈るように両手を組み、そのまま跪いてしまった!?
「ソフィア様!?」
僕は慌ててソフィア様の身体を起こすと、彼女は勢いよく抱きついてきた!?
「や、やはりアデル様は素晴らしい御方です……! 奇跡のようなお力もさることながら、その機転、行動力、どれをとってもアデル様の右に並ぶ者はおりません……!」
「「ちょ、ちょっと!?」」
すぐさまライラ様とハンナさんが割って入り、ソフィア様を引き剥がしてくれた。
「わ、私達のアデル様に何をするのですか!」
「え……あ……す、すいません……アデル様の素晴らしさに、つい我を忘れてしまいました……」
ライラ様が問い詰めると、ソフィア様が苦笑した。
というか……そんなこと言われると、恥ずかしくて仕方ないんですけど……。
「……今後一切、アデル様のお傍に寄るのは禁止です」
「そ、そんな……!」
ハンナさんに冷たく言い放たれ、ソフィア様は表情を曇らせてガックリと肩を落とした。
「こ、今度こそ書斎に帰りましょう! よろしいですね!」
「「はい!」」
「……はい」
このままでは埒が明かないのでそう告げると、ライラ様とハンナさんは勢いよく首を縦に振って返事をするけど、ソフィア様だけはうなだれたまま渋々と言った様子で返事した。
僕はソフィア様を気にしないようにしつつ、急いで上の書斎へと戻った。
「ふう……先程お話ししました通り、調査の続きは明日の朝からということでよろしいでしょうか?」
「「「はい」」」
「では、今日のところはこれで解散としましょう」
そう告げると、ソフィア様はハンナさんに案内されて来賓室に向かい、ライラ様と僕はそれぞれ自室へと戻った。
「さあ……明日は何が出るかな」
ベッドに横になり、天井を見つめながら明日のことを考えていると、いつの間にか僕はそのまま眠りについた。
◇
「…………………………さま。アデル様」
……誰かが僕を呼ぶ声が聞こえる。
ライラ様? ……いや、ライラ様の声じゃない。
なら、ハンナさん? ……それも違う。
じゃあ、一体……。
僕を呼ぶ声に誘われるまま、ゆっくりと目を開ける。
すると。
「あ……アデル様……」
「え……?」
そこには……暗がりの中、微笑みながら僕の顔を覗き込む、ソフィア様の顔があった。
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