隊長さんとボク

ばたかっぷ

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五話

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いつものようにシーグさんの仕事が終わるまで母さまの樹の下で丸まって眠って待つ。

こないだはお城の中を覗いていたら、同じ年生まれのハイカにばったり会って逃げていたら迷子になっちゃったから今日は大人しくしておこう。

隊長さんも訓練が終わったら会いに来てくれるって言ってたし、迷子になって会う時間が減ったりしたら大変だもんね。

母さまの樹の下で隊長さんに抱っこして貰ってる夢を見てたら、なにかがボクの頭をつつく気配に目を開ける。

「きゅ~?(隊長さん?)」

ヘンだな、隊長さんならいつも優しく撫でてくれるのに…。目を開けて見上げた先にあったのはハイカの姿だった。

「よう、出来損ない」

「きゅ…(ハイカ…)」

「ふん、お前まだ喋れないのか」

ボクたちは目覚めの日が近づくと、毛並みの色が変わり鳴き声しかだせなかった言葉が人と同じように喋れるようになる。ハイカはボクと同じ月生まれで再来月には目覚めの日を迎えるから、白だった毛色もオレンジ色へ変化が見られていた。

「お前は相変わらずの薄汚い色の毛だなあ、言葉も喋れないしやっぱり出来損ないは目覚めの日なんてこないんじゃないか?」

「きゅ~!きゅ~うっ!(そんなことないもん!ちゃんと立派な神獣になれるもんっ!)」

「って言うか、お前まだカイゼル侯に引っ付いて回っているらしいじゃないか。少しは侯の立場も考えろよ名門のカイゼル侯爵の傍に、お前みたいな出来損ないが付いてたりしたら侯の名声に傷が付くってもんだろうが」

「きゅー!(隊長さんはボクのことを大事にしてくれてるもんっ)」

「お前の里親と侯は幼友達なんだろ、それで邪険に出来ないでいらっしゃるだけじゃないか」

「きゅう~っ!(違うっ!そんなことなんかない!)」

「まさかとは思うけど、お前カイゼル侯のパートナーになりたいなんて思ってたりするんじゃないだろうな?」

「きゅきゅっ!(そうだったらなんだって言うのさっ!)」

「うわ~ありえねえ~、カイゼル侯みたいな人が今までパートナーを持たなかったのは、最高の神獣と組ませたいって王様も大臣達も教会だって考えていたからなんだぜ?カイゼル侯がフリーだからってお前みたいな出来損ないがパートナーになれる可能性なんかある訳ないじゃん」

「きゅうっ!(決めるのは隊長さんだっ!)」

例え王様や大臣達が色々言ったって、隊長さんが選ばなければ誰もパートナーにはなれないんだから。

そうだよ。例えアルティアが望んでたとしても隊長さんが望んでなきゃ、ボクにだってまだ可能性はある。

「ちっ、エナのくせに生意気だぞ!目覚めの日が近いのにまだそんな色斑な毛並みでさっ、なんの加護も与えられてないくせにっ!その点オレなんか炎の加護がもう与えられてる。どうだ羨ましいかっ!?」

「きゅ~(…でもオレンジじゃんか)」

いちいち憎らしいことばかり言うハイカに腹が立ったから、そっぽをむいてポツリと言った。

全部がそうとは限らないけど、色が濃いほど加護の力は強いと言われている。

炎の加護なら、真紅の赤が一番強い。でも時たま二つの属性を併せ持つ神獣がいて、その色が交じり合う為に淡い色合いになる神獣もいる。

例えば光の加護と炎の加護を受けていたら、真紅ではなく輝きのある橙になったり。でもハイカのはただ普通にオレンジって感じだ。

「~っホントに生意気だな!出来損ないエナ」

「きゅっ!(いたっ!)」

コッソリ呟いた言葉はハイカの耳に届いてしまったようで、怒ったハイカに噛み付かれてしまった。

「きゅきゅ~っ!(離してよ~っ!)」

「どっちにしたって、カイゼル侯のパートナーにはアルティアがなるのさっ!どんなにお前が頑張ったってアルティアには適うもんか!」

噛み付いてたボクの耳を離したハイカは、そう捨て台詞を残して去っていった。

「きゅ~(決めるのは隊長さんだもん…)」

そう決めるのは隊長さんだアルティアをパートナーにするのか、それともシーグさんの言っていた目覚めの日を待っている誰かをパートナーにするのか。

でもハイカに言われなくたって、本当はボクだって分かってる。
ボクが隊長さんのパートナーに相応しくない事なんて。

…でも大好きな大好きな隊長さんと、ずっと一緒にいたかったんだから夢を見るくらいいいじゃないか。
ボクをパートナーにしたがる人なんて、現れるかどうかさえ分からないんだから。

だからいつか隊長さんのパートナーになるんだって、そう思ってたら頑張れたんだから。

ボクにとって隊長さんのパートナーになるって言うのは大切な夢で、みそっかすのボクにとって隊長さんはボクの希望だったんだから…。


「きゅう…(ハイカの馬鹿…)」


それっくらいの夢…、見させてくれたっていいじゃない……。


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