隊長さんとボク

ばたかっぷ

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十三話

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王直属の騎士団隊長の権威がガタ落ちしちゃうからね…って、ため息を吐いてシーグさんが言う。

うわ~っ嬉しいっ!隊長さんがボクのこと一番好きだって言ってくれた~。
ボクも隊長さんが一番好きだよ~うっ。

シッポをぱたぱた振って喜んでたけど、はたと気付く。
そうだっ!明後日はもう目覚めの日なんだ。

「きゅーっ!(隊長さんっ隊長さんはもうアルティアと契約の儀式をしちゃったの!?)」

隊長さんがアルティアと契約するのは辛いけど、契約の儀式は正装したいつもより、さらに男前な隊長さんを見れるチャンスだったのに、見逃しちゃうなんて一生の不覚だよ~うっ。

「エナ。さっきの僕達の話、聞いてなかったの?」

…ん?シーグさんのお話し?

そう言えばボクが隊長さんのパートナーになっても、誰も文句を言わないとかなんとか…。

それが本当なら夢みたいに嬉しい話だけど、そんなはずないよ。
だってボクの毛並みは斑色のままだし、声だって喋れないままだし…。

「あのね、エナの今の姿は借り物なの。本当はね…」

そう言ってシーグさんが、ボクの額に手を当てて何か呪文を唱える。そうしたら、だんだんボクの体が熱くなってきて夢の中みたいに、光がぱあってなって…。

思わず瞑ってしまった目をそっと開けると、ボクの体が光ってる。

「…ええっ!?なにこれっ!!」

なんだかボクの体ほんわり光ってるよーっ!何コレ何コレどうしてなのっ。

「シーグさんっボクどうしちゃったの…って、あれ?…まさかボク…喋ってる…っ?」

ちゃんと喋れてるっ!そのうえ窓に映ってるあれがボクだって言うなら…

淡い光を放つ光沢のある美しい毛並みの神獣には、背中に同じように輝く翼まで生えていた。

まさか…あれが…ボク…?嘘…だってこの姿は絵本で見た…



「エナはね、伝説の聖母神獣なんだよ」



ボクが…聖母神獣…信じられない…だってボクは毛並みの色だって斑色で…

「エナの斑色の毛並みがその証。すべての神樹の加護を受けていたから交じりあってあの色になっていたんだ。エナの繭が神樹の樹ではなく聖母樹の下にあったのは、エナが実ったのは神樹ではなく聖母樹だったから」

えっ、ボク神樹の樹から生まれたんじゃないの?聖母樹に繭が実るなんて聞いたことなかったけど、じゃあ母さまの樹の下にいると落ち着けたのはだから…?

「聖母樹に実った繭は5本の神樹と聖母樹の加護を受けて一日で育つと伝承にある。あまりに早かったから神官様達は誰も気付かず、どれかの樹から落ちた繭だと思ったんだろうね」

シーグさんの口から信じらんないことばかりが語られて、戸惑ってるボクの背に温かくておおきな手が乗せられた。

「エナが伝説の聖母神獣かも知れないと言うのは、シーグから聞いていた。だがエナが聖母神獣でなくとも、出会った日から私はエナをパートナーにするつもりでいたぞ?」

「…たい…ちょうさん…」

「エナが伝説の聖母神獣かどうかは、目覚めの日が来るまでは分からなかったんだよ。だからこの事を知っていたのは、大神官長様と数人の神官長様と僕だけ」

「じゃあシーグさんが里親になってくれたのは…」

「うん、大神官長様から直々に頼まれた。でもね、僕もクラウドと同じ。エナが伝説の聖母神獣だから大事なんじゃないよ?エナがエナだから大切なの」

だから無事で良かった…そう言ってまたボクを抱きしめるシーグさん。

「心配かけちゃってごめんなさい…」

「うん…あんまり無茶はしないでね」

ボクはシーグさんに育てて貰えて本当に良かった…心からそう思う。

「龍の谷に行ったのは加護の力が欲しかったからだとハイカから聞いた。今回はそれが良い結果を生んだが、これからは決して一人で無茶な真似はせんと誓えるなエナ」

「…はい、隊長さんにも危ない目に遭わせてしまってごめんなさい…」

「まあこれからはパートナーとして常に一緒だからな。エナが無茶をしそうになったら私が止めるし、危ない目に遭いそうな時は私が助けられるから安心だがな」

…隊長さん。本当にボクをパートナーに選んでくれるんだ…。

夢みたい…本当に本当にボクが隊長さんのパートナーになれるんだ…。嬉しいっ!嬉しいよ~っ!!

みそっかすのボクが本当は伝説の聖母神獣だったってことより、やっぱり隊長さんのパートナーになれることの方が100倍嬉しいよ~っ。

そうだっ!ボクは目覚めを迎えたんだよねっ?
ちゃんと喋れるようになったし、窓に映る美しい神獣がボクの本当の姿だとしたら…。

ボクって人の姿になったらアルティアにだって負けないくらいの、スゴい美少年だったりするんじゃない…っ!?

そうしたら隊長さんの隣にいたってきっと見劣りなんかしないし、隊長さんに恥ずかしい思いをさせないですむっ。

やったーっ!ようっし、それじゃあ早速人型に変化へんげしてみるぞ~っ

ボクは頭の中で変化するイメージを思い浮かべた。
自然とそうすることを知っていたみたいに体の中心に力が集まってくる感じがして、さっきこの姿になった時と同じ様にボクの体が光り始めた。

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