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十ニ話
しおりを挟むーー心から願うこと…それは、みんなの幸せ。
大好きなシーグさん。
いつも果物をくれる露店の女将さん。
お隣のおじさんとおばさん教会の神官さまたち。
意地悪だと思ってたハイカだって、大事な人達の為に頑張ってる。
そして何より大切な、大好きな大好きな隊長さん…。
なのにボク達が馬鹿な真似をしたせいで、隊長さんを危険な目にあわせてしまった。
だから……。
「きゅっ…うきゅーっ!!(ボクは貴方のように自分の為に人を傷つける精霊を解放したりなんか絶対にしないっ!!)」
ボクは力の限り心の底からそう願って、前足を秘石にかけた。
『…この…小童…っ!』
その瞬間、まばゆいばかりの光が洞窟中を覆う。
そしてその光は洞窟から滝を通りぬけ、龍の谷すべてを覆い尽くしていった。
『…ぎ…やあああああ………っ』
光の洪水の中で、精霊の断末魔の叫びを聞いた気がした。
そのまま意識をなくしたボクには、それが本当だったのかどうか確かめる術はなかったのだけれど……
*****
…ナ…エナ…起きて…
目を覚ますんだ…エナ…
遠くからボクを呼ぶ声がする…この声は…シーグさんと…ああ、大好きな隊長さんの声だ…。
ふふ…あのね隊長さん…。…ボク凄い夢を見たんだよ。
…ボクがねっ悪い精霊を倒したの…ボクが力いっぱい念じたらね…なんでかボクの体から凄い光のかたまりみたいなのが出て来て、秘石と一緒に精霊が粉々に消えちゃったんだよ…。
隊長さんのお膝の上でよく読んでもらった、絵本に出て来た伝説の神獣のお話しみたいにボクに翼が生えてね。
龍の谷をそのままくるくる飛び回ってたら、ボクから出て来る光がたくさんの欠片になって、谷に降り注いで行って龍の谷が明るくなったんだよ。
ボクが夢の中の神獣みたいだったら、隊長さんのパートナーになれるのになあ。
でもいいんだ…。
パートナーにはなれなくても、隊長さんがボクを大事に思ってくれてるのは十分分かったもん。
だから今は無理でも、いつの日かボクが強くなったら…そのときは、ボクをパートナーにしてね隊長さん……。
「…エナっ!」
夢の中から目覚めると、シーグさんと隊長さんが心配そうに、ボクを見下ろしていた。
「良かったっ!エナ…っ」
シーグさんが泣きながら、ボクを抱きしめてくれる。
「きゅ…(あれ…ボク…)」
「ずっと目を覚まさないから、このままだったらどうしようかと…」
ボクを抱きしめるシーグさんの肩が震えている…きっとすごく心配かけちゃったんだ。
「きゅ…(…ごめんなさい)」
シーグさんの肩に手を置いた隊長さんが、ボクを見つめて言った。
「気に病むな、シーグが心配性なだけだ。力を使い過ぎたせいだから5日経てば目が覚めるとちゃんと医者から言われただろう?」
「だって心配するのは当たり前じゃないかっ!こんな小さな体であんな無茶をして、もし力を使い果たしていたらと思うと…」
「それについては同感だが、おかげで私もハイカも助かったしなあ。ありがとうエナ、改めて礼を言うよ」
「きゅっ!(えっ!あれってやっぱり夢じゃなかったの?…って言うかどこからが夢なの?)」
「エナ、夢って?」
「きゅーっ!(龍の谷に行ったら悪い精霊が秘石に閉じ込められてて、それでハイカと隊長さんが死にそうになって…)」
「それをエナが助けてくれたんだよ」
「きゅ?(ボクが助けた…?)」
「そうだよエナのおかげで精霊もいなくなった上に、龍の谷も本来の姿を取り戻せた」
ま…さか…あの光の夢は…本当にあったこと…?
えっ?じゃあボク…っ!?
ばっっ、と振り向いて背中を見てみたけど、やっぱりいつも通りの斑色だった。
はあ~っがっかり…やっぱり夢だったのか…。
「ああでもこれで明後日の目覚めの儀式はエナの本当の姿で迎えられるね。良かったね、エナ」
…ん?シーグさんの言ってる意味がよくわからない…ああっ!それよりいま目覚めの儀式が明後日ってシーグさん言わなかった?
ボクが寝てる間にそんなに日にちが経っちゃっていたの?
「クラウドも良かったね。これで煩さ方の大臣や神官様達も、エナをパートナーに選んでも何も言わないだろうしね」
「文句どころか手の平を返したように、エナを選べと言って来るだろうよ。まあ私はエナがエナであれば、伝説の神獣であろうとなかろうと何も関係ないがな」
「あ~だねえ…まったくクラウのもふもふ好きは子供の頃からちっとも変わらないねえ」
「いいや変わったぞ?以前はもふもふした物すべてが好きだったが、エナに出会ってからはエナのもふもふが一番好きだ」
「………お願いだから、他の人の前ではソレ言わないでね…」
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