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第五章
過去との遭遇5
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(火事の場面があります。苦手な方は回避してください)
「誰か外で焚火でもしてるのかな……? ケホッ……」
「馬鹿者。頭を低くしろ。袖で口元を覆って煙を吸い込むな」
何事かと煙の流れ込んでくる様子を見ていると、焔将に力任せに腕を引かれた。
未令は言われた通りその場にしゃがみ込むと袖で口元を覆った。
焔将はすでに低い姿勢を取り、袖口で口元を隠していた。
「何だろ、この煙。ゴホッゴホッ……。かなり煙いよね……ケホッ」
「あいつめ、そう来たか」
「なに? どういうこと?」
「あいつ、ここに俺を閉じ込め、火の術者を使って外で火を起こさせ、俺を燻り殺すつもりだ」
「そんなまさか……」
こんな小さな子供を、誰が殺そうとするのだろう。
いくら焔将が帝の弟だからと言って、焔将はまだ子供だ。
未令の腕の中でもおさまるような少年なのだ。
まさかという思いとは裏腹に、そうしている間にも、煙はどんどん倉庫内に入り込み、視界は一気に悪くなっていく。
煙で目も痛み出し、息も苦しい。
状況は悪くなっていく一方で、同時に横で焔将が盛大にせき込み、未令は焔将の小さな体を抱きしめた。
「大丈夫? 早くここから出なきゃ」
そろりそろりと煙のない方へと移動しようとすると、焔将にぐいっと体を引き離された。
「おまえ、紫檀の扉から入ってきたと言っていたな。ならおまえはそこから早く出ていけ」
「何言って……。まずは焔将の出られるところを探さなきゃ」
「出口を見つける前に煙にやられる。元々おまえは関係ないんだ。早く逃げればいい」
そう言って未令を紫檀の扉の方へと押しやる。
「だめだよ! そんなことできるわけない!」
「おかしなことを言う奴だな。おまえと俺はたった今ここで顔を合わせただけの他人だ。おまえが俺を見捨てたとて、俺はおまえを恨みはしない」
「そういうことじゃないの。他人とか、……そんなこと言わないで…」
小さな焔将がまだ未令のことを知らないのは当たり前なのに、同じ顔でそう言われるとなぜか無性に悲しい。
子供相手に動揺し、声を詰まらせた未令を、焔将は怪訝な顔で見返した。
「やっぱりおかしな奴だな。紫檀の扉から入ってきたと言ったと思えば、今度は俺に他人と言われて泣くのか?」
「……泣いてない…」
「泣いてるだろ」
焔将はがしがしと頭を掻きむしった
「―――ああ、もう。めんどくせぇ奴だな。泣くな。わかったから早く向こうへ行くぞ。一緒に」
「……うん」
「どっちが子供だかわかりゃしない」
焔将は小さな手で未令の手を握ると、比較的煙の少ない方へと移動していく。
けれど煙は容赦なく方々から入り込んできており、このままでは出口を見つける前に倉庫内が煙で充満するだろうことは明らかだ。
「やはりおまえ、紫檀の扉から逃げろ」
「それは嫌……」
「ったく、強情な奴だな。このままだとおまえも俺も共倒れだ。そこから外へ出て助けを呼んできてほしい。というか、おまえは術者ではないのか?」
「うん」
「だがさきほど紫檀の扉は血族か術者にしか通れないと言っていたろう」
「わたし、火の血族なの。本来は血族でも術者ではないと通れないそうだけど、例外はあるみたい。わたしがその例外」
「それ、どれくらいの頻度で起こる例外だ?」
「どうなんだろう……」
未令の知る限り、祖父時有と日本へ逃げる際、ここを通った祖母の鈴は安倍家の娘なので血族でも術者でもなかったはずだ。
「ただ、血族でも力の弱い血族は通れなかったとは聞いたよ」
「なるほどね」
焔将は今の焔将を彷彿とさせる顔でにやりと笑った。
「誰か外で焚火でもしてるのかな……? ケホッ……」
「馬鹿者。頭を低くしろ。袖で口元を覆って煙を吸い込むな」
何事かと煙の流れ込んでくる様子を見ていると、焔将に力任せに腕を引かれた。
未令は言われた通りその場にしゃがみ込むと袖で口元を覆った。
焔将はすでに低い姿勢を取り、袖口で口元を隠していた。
「何だろ、この煙。ゴホッゴホッ……。かなり煙いよね……ケホッ」
「あいつめ、そう来たか」
「なに? どういうこと?」
「あいつ、ここに俺を閉じ込め、火の術者を使って外で火を起こさせ、俺を燻り殺すつもりだ」
「そんなまさか……」
こんな小さな子供を、誰が殺そうとするのだろう。
いくら焔将が帝の弟だからと言って、焔将はまだ子供だ。
未令の腕の中でもおさまるような少年なのだ。
まさかという思いとは裏腹に、そうしている間にも、煙はどんどん倉庫内に入り込み、視界は一気に悪くなっていく。
煙で目も痛み出し、息も苦しい。
状況は悪くなっていく一方で、同時に横で焔将が盛大にせき込み、未令は焔将の小さな体を抱きしめた。
「大丈夫? 早くここから出なきゃ」
そろりそろりと煙のない方へと移動しようとすると、焔将にぐいっと体を引き離された。
「おまえ、紫檀の扉から入ってきたと言っていたな。ならおまえはそこから早く出ていけ」
「何言って……。まずは焔将の出られるところを探さなきゃ」
「出口を見つける前に煙にやられる。元々おまえは関係ないんだ。早く逃げればいい」
そう言って未令を紫檀の扉の方へと押しやる。
「だめだよ! そんなことできるわけない!」
「おかしなことを言う奴だな。おまえと俺はたった今ここで顔を合わせただけの他人だ。おまえが俺を見捨てたとて、俺はおまえを恨みはしない」
「そういうことじゃないの。他人とか、……そんなこと言わないで…」
小さな焔将がまだ未令のことを知らないのは当たり前なのに、同じ顔でそう言われるとなぜか無性に悲しい。
子供相手に動揺し、声を詰まらせた未令を、焔将は怪訝な顔で見返した。
「やっぱりおかしな奴だな。紫檀の扉から入ってきたと言ったと思えば、今度は俺に他人と言われて泣くのか?」
「……泣いてない…」
「泣いてるだろ」
焔将はがしがしと頭を掻きむしった
「―――ああ、もう。めんどくせぇ奴だな。泣くな。わかったから早く向こうへ行くぞ。一緒に」
「……うん」
「どっちが子供だかわかりゃしない」
焔将は小さな手で未令の手を握ると、比較的煙の少ない方へと移動していく。
けれど煙は容赦なく方々から入り込んできており、このままでは出口を見つける前に倉庫内が煙で充満するだろうことは明らかだ。
「やはりおまえ、紫檀の扉から逃げろ」
「それは嫌……」
「ったく、強情な奴だな。このままだとおまえも俺も共倒れだ。そこから外へ出て助けを呼んできてほしい。というか、おまえは術者ではないのか?」
「うん」
「だがさきほど紫檀の扉は血族か術者にしか通れないと言っていたろう」
「わたし、火の血族なの。本来は血族でも術者ではないと通れないそうだけど、例外はあるみたい。わたしがその例外」
「それ、どれくらいの頻度で起こる例外だ?」
「どうなんだろう……」
未令の知る限り、祖父時有と日本へ逃げる際、ここを通った祖母の鈴は安倍家の娘なので血族でも術者でもなかったはずだ。
「ただ、血族でも力の弱い血族は通れなかったとは聞いたよ」
「なるほどね」
焔将は今の焔将を彷彿とさせる顔でにやりと笑った。
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