【完結】ツンデレ妖精王が、獅子だけど大型ワンコな獣人王にとろとろに愛される話

古井重箱

文字の大きさ
5 / 9

しおりを挟む
 ガルトゥスは湯船にいたレクシェールをみとめると、下腹部を覆っていた布をきつく巻き直した。

「なんであんたがいるんだよ。おたくの侍女さんの話では、『ガルトゥス様の貸切ですよ』ってことだったのに」
「行き違いがあったのだろう。謝る」
「なんだよ、素直だな。もっとぎゃんぎゃん騒がれるかと思ったぜ」
「裸の付き合いというのも悪くないかもしれん。戴冠する前は、故郷でよく仲間と水浴びをしていたものだ」
「そのお仲間ってのはどんな奴だ。まさか恋人でしたってオチじゃないだろうな!?」

 かけ湯をしたあと、ガルトゥスが湯船に入ってきた。そして、「仲間とはどういう関係だったんだ?」としつこく訊いてきた。あまりの真剣さにレクシェールは圧倒された。

「なぜかように声を荒げる?」
「あんたの恋愛事情が気になるからだよ」
「私は性的なことに疎い。誰かに恋情を抱いたことはない」
「……それは、今もか?」
「ああ」

 ガルトゥスは顎まで湯船に浸かったあと、意を決したように顔を上げた。そしてレクシェールの裸の肩に分厚い手のひらをのせた。

「貴君の手はカイロのように温かいな。冬場、便利そうだ」
「ああそうかよ。便利な男でいいよ。だから……俺のことを見てくれ」
「今、目の前にいるのは貴君だけだが?」
「ほんっと、あんたって疎いね。こういう意味だよ!」

 ざぶりとお湯が揺れて、ガルトゥスのたくましい体が伸び上がった。ガルトゥスはレクシェールを抱き締めると、耳たぶにそっと口づけた。お湯によってぬくめられていたレクシェールの裸身がさらに熱くなる。初めて感じる心地に、レクシェールは戸惑った。

「……気色悪くはねぇか? だって相手は俺だぞ」
「いや。くすぐったいが、悪くはない」
「それって脈ありってことか!?」
「脈とは……? 私たちの体は生命活動を維持している。脈動があって当たり前だろう」
「あーもう、この鈍ちん妖精が。じっくり伝えようと思ってたが、これじゃあ何百年もかかりそうだわ。一発で分からせてやるよ!」
「んっ……! んんッ」

 ガルトゥスはレクシェールの後ろ頭を押さえると、唇を合わせた。そして息継ぎのいとまも与えぬほどに激しく、レクシェールの果実のようにみずみずしい唇を吸った。

——なんだ、これは……っ?

 ちゅくちゅくという音が響くたび、頭の中から理性という理性が剥がれ落ちていく。ガルトゥスの舌が、狭い口内を逃げ惑うレクシェールの舌を捕らえ、とろりと舐め回した。
 背骨が役割を放棄したかのように全身がぐらぐらする。
 レクシェールはガルトゥスの頑健な肩に必死でしがみついた。二つの体が密着する。ガルトゥスの下腹部は硬く張り出していた。どういう仕組みでかような反応になったのか、さすがのレクシェールにも分かる。
 
——ガルトゥスはこの私を……欲しているのか?

 呼吸を求めて唇を離した瞬間、ふたりは視線を絡め合った。ガルトゥスの瞳は焦げつかんばかりに熱を帯びていた。見つめ合っているだけで肌を焼かれてしまいそうだ。
 誰かにこれほどまでの情熱をぶつけられたことはない。
 レクシェールは白い喉を震わせた。
 恐怖からではない。
 それは喜悦からくるものであった。
 何者にも囚われない自由な男、ガルトゥスがただひとり自分だけを見つめている。雄を滾らせて、乱れた吐息を撒き散らしている。レクシェールが伏目がちになっただけで、ガルトゥスは悲しそうに表情を曇らせた。
 ガルトゥスの心が今、自分の掌中にあるのかと思うと、レクシェールは全身が発光してしまいそうなほどに嬉しくなった。
 思わず背中から翼が生えそうになり、慌てて思いとどまった。
 濡れた手で、みずからの頬をぴしゃぴしゃと叩く。

——嬉しい? 私はなぜそんな風に思ったのだ……? ガルトゥスに獣欲を向けられているというのに。

 レクシェールの唇から、ガルトゥスの肉厚な舌が離れていく。
 ふたりがキスを交わした証である唾液でできた透明な橋を、レクシェールは陶然となって眺めた。他人の体液など厭わしいはずなのに、ガルトゥスのそれは甘露のように感じられる。
 ぼうっとなったままガルトゥスの体にしがみついていると、「今日はこれで終わりだ」と声をかけられた。
 ガルトゥスがレクシェールから身を離す。
 いつもはにこやかなガルトゥスであるが少々、いや、かなり怒っているようだった。他者の心理に疎いレクシェールは、彼の感情がなぜ波立っているのか分からない。先ほど、ガルトゥスは飴玉をねぶるようにレクシェールの舌を可愛がったというのに。どうして今は鋭いまなざしを向けてくるのだろう。

「私は……貴君を怒らせてしまったのだろうか? すまない」
「謝んな!」
「だが、……貴君はすごく苦しそうだ」
「さっきのキス。あれは宿題だ。どういう意味が込められていたのか自分で考えて、それから返事を聞かせろ」
「ガルトゥス……?」
「もう上がるわ。限界だ、いろいろと」

 レクシェールに背中を向けると、ガルトゥスは大浴場から去っていった。
 ひとり取り残されたレクシェールは、ちゃぷんちゃぷんとお湯が立てる水音を聞いていた。思考を組み立てようにも、言葉がまるで浮かんでこない。

——私は……どうすればいい?

 ガルトゥスに求められた唇がじんと熱かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...