異世界転移物語

月夜

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笑美さん

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「じゃあ、笑美さんは仕事中にこちらに来たわけですか?」

「そうなんです。まあ、ご覧の通り、見ればわかると思いますけど」

    笑美さんはそう言って笑った。さっきまでの不安そうにしていた様子からは想像出来なかったが、笑うととても素敵な笑顔になる。名は体を表すとはこういうことだろうか、などと僕は考えていた。

    笑美さんがそう言ったのには理由がある。服が山のように積まれたワゴンが一緒に現れたのだ。

「すごい量ですね……」

    僕はため息をついた。

「ちょうど商品整理している時だったんですよ。それでこれも一緒にこっちに来るなんて……」

    笑美さんは驚きを隠せないようだった。確かに鬱蒼とした森の中にポツンと大量の服の山。知らない人が見たら、さぞかしシュールな光景だろう。

「これ全部作業着なんですけどね」

「今まで来た人もいろんなものを持って来ていたんですよ。まあ、その話はあとでゆっくりお聞かせしますけど」

    桂坂さんはそう言ったあと、笑美さんに家まで一緒に行くことを伝えた。

    僕が作業着がうず高く積まれたワゴンを押しながら、えっこらえっこらと帰路につくことになったのはやむを得ない。道中、桂坂さんと笑美さんは談笑しながらだったが、僕にはそんな余裕はなかった。

   家の前まで来ると、何人か人が集まってワイワイガヤガヤやっていた。

「あ、そうか。凧揚げしてたんだ」

   僕はその場を見渡して、宙の姿を発見した。地面に凧を置いてなにやら悪戦苦闘している風だ。僕はそばにいた料子さんに聞いてみた。

「健太君、お帰り。ああ、その人が新しい人ね」

   料子さんは笑美さんに軽く会釈したあと続けた。

「ああ、宙君の話だったわね。さっき一度凧を揚げてみたのよ。最初はいい具合に揚がり始めたんだけど、途中でバランスが崩れて落ちてしまったの。それで今調整中よ」

「なるほど」

   宙の周囲には大工さんや電気さんの姿も見える。三人で何か相談しながら、凧を触っているように見えた。

「ええと、はじめまして。私は料子です」

「あ、田中笑美っていいます」

   料子さんは待ち時間を利用して、笑美さんと先に話すことにしたようだ。

「私は生果。こっちはナースさんよ」

「ナースさん?」

   笑美さんはキョトンとした顔をした。生果さんが端折って、本名でなく呼び名で呼んだので戸惑うのも無理はない。ただし、みんな本名などどうせ覚えてないし、生果さんの紹介方法は合理的であると思う。

「職業がナースなもので」

   ナースさんや生果さんも会話に加わり、笑美さんとここのことや彼女自身のことについて、互いに色々と聞きあっていた。
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