異世界転移物語

月夜

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混迷の再始動

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「あっ」

 桂坂さんのほうはそこまで思い至らなかったようだ。僕の指摘を受けて口が開いたままになっている。

「とりあえず、今の場所がどこか何らかの方法で見当をつけて、同じ世界であるならば戻る方法を算段するしかないな」

「とりあえずスマホで方角を特定しましょ」

 僕らはすぐにその作業を行った。その結果、川があるほうが西であることが分かった。樹に隠れて太陽そのものは見えないが、明るさから考えると、時間は午後の早い時間のようだ。スマホの時間とも一致している。

 だが、それ以上、現在位置を推定できそうな手掛かりはなかった。僕はこの後に及んで不安になってきた。

 僕らの手荷物は少ない。新しい来訪者に対応できるよう、医薬品や少量の食べ物は持ってきているが、そのほかは心許ない。今日の寝泊りすらどこにするか決めなければならないのだ。

「これからどうする?」

 桂坂さんが僕に尋ねる。頼られて悪い気はしないが、今回ばかりは僕も有効な手を思いつけそうにない。正直、ちょっとお手上げ気味である。

「うーん……川に沿って下るのがいいのかなあ……。それとも逆に登るのがいいのか」

「とりあえず寝る場所を確保しないといけないわね」

 二人ともうなるばかりで、なかなか次の行動を決めることが出来ない。

「なんだか、最初の時みたいね……」

 桂坂さんがぽつりとつぶやく。

「ああ、そうだね」

 懐かしい一ヶ月前の記憶が蘇ってきた。あのときは最初は本当に一人きりだった。そして桂坂さんが来てくれて……。今、桂坂さんと一緒にいられるだけで何と心強いことか。それとともに桂坂さんを守ってあげるのが僕の役目だという思いも強くなった。

「桂坂さん、スマホの電池は大丈夫?」

「うん。まだほとんど減ってないわ」

「じゃ、川辺から離れて森の中の方に進んでみよう。川にはいつでも戻れるように、時々写真撮って、位置を記録しておいて」

「分かったわ」

 川は水の確保に役立つし、最悪、川魚を獲る必要が出てくるかもしれない。ただ、草や樹の豊富な森の中のほうが寝場所は見つかりやすいかもしれないと僕は考えた。早速、僕らは川から離れて森の奥へと歩みだした。

「今頃、みんな元気にしてるかなあ」

「さあ、どうだろう。それより僕たちが迎えるはずだった来訪者の人、ちゃんと集落に行けたかな……」

「あ、そうか。私たちが消えたことは、みんなもしばらく気がつかないだろうから、誰も新たに迎えに行ってないって可能性が高いのか。そうなると今頃、困ってるかもね」
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